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区議会質問
19年予算討論(小林ひろみ)

2019年3月22日

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております2019年度予算、すなわち第28号議案、平成31年度一般会計予算並びに第29号議案、国民健康保険事業会計予算、第30号議案、後期高齢者医療事業会計予算、第31号議案、介護保険事業会計予算の3特別会計予算の可決に反対の立場から討論します。

 安倍政権は、「景気拡大」は「戦後最長」になったと宣伝してきました。しかし毎月勤労統計調査の不正・偽装などで、政府の経済統計自体の信頼性が揺らいでいます。
 「景気拡大」自体、国民の実感からかけ離れたものです。ここにきて景気の基調判断は「足踏み」から約4年ぶりに「下方への局面変化」に下方修正。安倍政権が「拡大」していると自慢してきた雇用も、1月の完全失業率は2カ月ぶりの悪化、家計調査の消費支出も1月は実質2・0%の伸びにとどまりました。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の破綻は明らかです。
 国民はもちろん企業関係者や経済学者からも、いまのタイミングで消費税を上げたら、間違いなく消費は冷え込んでしまう、との発言が相次いでいます。増税対策の中で何より問題なのは、複数税率導入とポイント還元です。もともと低所得者ほど負担が重い消費税の増税、百害あって一利なしの増税は直ちに中止すべきです。
 沖縄県民の「辺野古基地建設反対」の意思表示は、衆参の国政選挙や二度の県知事選挙などに加え、2月24日に実施された県民投票では、「反対」は43万4273票で有権者総数の4分の1(約29万)を大きくこえました。しかし、安倍政権は県民の声にこたえず、地方自治も民主主義も踏みにじっています。
 都政では、小中学校体育館エアコンリース補助など都民の要望、日本共産党都議団の提案を反映した重要な前進がある一方で、石原都政以来つづく大型開発推進の予算配分は変わっていません。
 特に、オリンピック・パラリンピック関係の経費が2倍以上となり、築地は守ると約束していましたが、公約違反を重ねています。国民健康保険料の重い負担が大問題になっているにもかかわらず、新たな負担軽減策はありません。都立病院について、都立直営の見直し・地方独立行政法人化をふくむ経営形態のあり方検討予算1億6千万円が、今年度予算につづいて計上されています。都営住宅の新規建設は、石原都政以来、19年間連続ゼロのまま、シルバーパスの負担軽減も具体化されておらず、都民の切実な願いである小中学校の少人数学級の前進も盛り込まれていません。
 豊島区はどうでしょうか。区は、財源は政調整基金を取り崩さずに編成した、一般会計予算1498億円、前年度比252億円のプラスとなる今までで最大規模の予算規模、東アジア文化都市による賑わいの創出、ハレザ池袋の一部竣工など国際アート・カルチャー都市としての躍進をさらに加速するとともに誰もが安心して暮らし続けられるまち、の実現に取り組んだ、としていますが、そのため、投資的経費が403億円と前年度より191億円伸び、つまり18年度に続き、文化、都市再生の名のもとに、にぎわいの創出として来街者をふやすための多額の予算が計上された予算となっているのであります。

 日本共産党区議団は、2019年度予算について、
 第1に、深刻な区民生活を直視し、暮らし、福祉、教育など区民需要を最優先にした予算になっているか
 第2に、自治体本来の役割を投げ捨て、区民を追い出し、大企業と来街者のためのまちづくり予算になっていないか
 第3に、今後の財政運営に過大な影響をもたらすことはないのか
 第4に、この間の区政のゆがみ、ひずみがでていないか
 この4つの観点で審査を行いました。

 それでは、第1の観点、深刻な区民生活を直視し、暮らし、福祉、教育など区民需要を最優先にした予算になっていないことについてです。

 最初に保育園についてです。
 今年も4月1日の待機児童は、ゼロになる見込みとのことです。認可保育園を増やしてきた成果です。
 しかし、待機児童ゼロと言っても、隠れ待機児童が昨年は131名、今年はこれより増え200名程度となります。また、居宅訪問型に空きがあれば待機児童が発生しない仕組みがあります。希望者がいる限りは、認可保育所を増設し、真の待機児ゼロにしなければなりません。
 質の確保のために、これまで園庭確保と保育士の待遇改善を求めてきましたが、進んでおりません。朝日中学校跡地を使っての園庭のある保育園については困難としています。区長は、園庭のある保育園などと言っていたら保育園は増えず待機児童ゼロはできなかった、と言いますが、子どもを健やかに育てるためには量とともに質の確保をしていく責任が豊島区にはあるのです。
 4月には認可保育園は計80園となり、そのうち区立は19園、公設民営が2園、私立が59園となります。一時保育の拡充でも、また、待機児童解消でも、重要な役割を果たしている区立保育園について、理事者は「区立保育園の役割を検討しつつ、民営化は進める」と答弁しました。区立保育園の
 民営化では、質の確保はできません。

 次に生活保護ならびに低所得者対策です。
 区民の置かれている生活状況は、ますます二極化し、格差が広がっています。
 昨年10月からの3年間での段階的な生活保護基準の引き下げは、本区では高齢者世帯が多いこともありその影響は保護世帯の8割近くに及びます。今年10月からの保護費削減に加えて、消費税10%への増税が予定され、これは保護世帯にとっては、死活問題といっても過言ではありません。
 ところが区の独自の法外援護は入浴券の60枚の支給のみで、浴室のない世帯のみの支給です。それもシャワーだけでもあると支給していないのです。
 また、昨年7月より、国は熱中症対策として、新規の生活保護利用世帯などにエアコン設置に5万円出すことにしましたが、冬季は2万円までの暖房設備購入のみです。通年のエアコンが設置できるようにすれば快適に生活できるのにその対策もありません。
 荒川区では「熱中症対策緊急対策」として、エアコンのない一人暮らし高齢者、高齢者のみ世帯、障害者世帯、要介護4以上世帯、就学前の子どものいる世帯について、エアコン、冷風機などの設置について上限5万円の補助を実施することを行いましたが、本区は、やろうともしません。
 いざというときに必要な直貸しの制度もないのです。
 区民の命を守るために生活保護利用者や低所得者に対する制度については、拡充どころか後退するというのは福祉に冷たい区政ということです。

 障がい者施策についてです。
 ひとつめは目白福祉作業所の通所バスの運行、目白生活実修所の通所バス増便についてです。
 障がい者の高齢化とそれに伴う重症化、親の高齢化が深刻になっています。これまでわが党は通所バスの運行、増便についての要望を、直ちに実現するよう求めてきました。しかし区は「福祉作業所について通所バスの運行を検討」としながらも時期については「2020年に指定管理者の更新がある。そのときに検討」と繰り返すばかりです。親の会が通所バスの要望を出されたのは2017年10月、1年半がたっているのにさらに1年待てと言うことです。本委員会で区長も「ゴーサインは出している。来るだけ早くやっていきたい」と答弁したのですから、事業者更新時の検討とは別に早急に対応を講じるべきです。

 ふたつめは「旧区民ひろば池袋跡地グループホーム」についてです。 
 度重なる入札不調などで当初開設予定だった2019年4月から2020年7月へと1年3ヵ月も延期になりました。これまでも指摘しましたが区が事業者任せにせず主体的に関わっていれば、このようなことにはならなかったのであります。これ以上スケジュールが遅れることはあってはなりません。また今後のグループホーム増設の検討に入っているとの答弁がありました。同じ轍を踏むことのないよう区が主体的に進めていかなければなりません。
 他にも2018年度削減した、障がい者通所施設への「日中活動系サービス事業所利用者食費負担軽減補助金」についても、わずか500万円でできるのですから復活すべきです。

 防災について述べます
 救援センターについてです。豊島区の救援センターは対人口比8.8%、23区ワースト1です。わが党はこれまで救援センターの増設を求めてきました。区は雑司ヶ谷体育館を2022年4月から改修、9月の再開後、救援センター機能を持たせるとしたものの、その他での増設は難しいとしています。さらなる救援センターの増設が必要です。これまでわが党が求めてきた救援センターの環境整備について、今年中に全小中学校体育館へのエアコン設置、体育館トイレの洋式化などが予算化されたのは、大きな前進です。また決算特別委員会で指摘した救援センターの個別マニュアルの整備については、来年度(2019年度)から取り組むとのこと、早急に整備するよう求めます。
 感震ブレーカーは、来年度「鉄球型」に加えて「バネ式」が追加されるなど拡充し、対象エリアを拡大しますが、「火災危険度4以上の地域」に限定されたままです。地域を限定するのではなく、ひろく区民が助成を受けられるようにすべきです。

 次に住宅についてです。
 「住まい」は区民生活を支える基礎、根幹となるものです。区民が求めているのは良質で低廉な家賃の公営住宅です。わが党は住宅の最大のセーフティネットは公営住宅の増設と考え、これまで繰り返し、公営住宅の増設を求めてきました。しかし区は「既存の民間賃貸住宅の利活用」と繰り返すばかりです。
 すでに民間賃貸住宅の利活用のひとつとして住宅の取り壊しによる立ち退きや緊急を要する高齢者等に提供する「安心住まい提供事業」があります。決算委員会で指摘した未修繕のため直ちに入居できない問題は、今年度と来年度で改修の予算が確保されました。立ち退きだけでなく、収入が激減した高齢者も適用となり、一部要件が緩和され、また、1戸当たり月6〜8万円で借り上げることができるのに、安心住まい住宅の数をふやすことに区は消極的です。区内全域にバランスよく戸数を増やせば、区民が安心して住み続けられる施策になるのにやる気がありません。
 「高齢者住替え家賃助成事業」は対象期間が5年から7年に延長されましたが、高齢者は年数がたっても収入が減ることはあっても増えることはまずありません。助成を打ち切られたら住み続けることはできなくなるのは明白です。年数で打ち切るのではなく、「安心住まい」のように収入に応じた助成をずっと受けられるようにすべきです。住まいに困窮されている高齢者、障がい者、ひとり親家庭、低所得者など、一番、光をあてなければならない方々に対し、福祉の心がないと言わざるをえません。

 次は子育て支援、子どもの貧困対策について2点のべます。
 1点目は、子どもの医療費助成です。これまでわが党は、子どもや保護者がお金の心配なく、安心して医療が受けられるよう、子どもの医療費を18歳まで無償化するよう求めてきました。改めて拡充を求めましたが、区は「優先順位が低い」と繰り返すばかりです。医療費は子どもの命に直結するもの、子どもの命に優先順位がつけられるのでしょうか。そのような考え方は間違っています。

 2点目は教育における私費負担についてです。義務教育は無償が原則です。就学援助については、今年度に続き、就学援助・入学支度金が小中学校とも増額、支給時期も小中学校揃って入学前となったことは大きな前進です。しかしこれまで指摘、要望してきたクラブ活動費、卒業アルバム代など他費目は増額されていません。実態に見合った額に増額が必要です。
 他にも検討するとしていた修学旅行費、移動教室費の事前支給もいまだに実現していません。事務作業の煩雑さ、支給時期と認定時期が前後することなどを理由にしていますが、入学支度金の入学前支給と同様、要はやる気があるかどうかです。
 就学援助を利用していない世帯への支援も進んでいません。中学校の修学旅行は全額保護者負担で7万円近い負担は大変重く、行革で削減した交通費補助の復活など負担軽減策を講じるべきです。また給食費についても本来無償であるべきです。わが党は今定例会で特に負担が重い第3子以降の給食費補助について条例提案をしました。わずか600万円でできるのに区はやろうとしません。

 高齢者福祉についてです。
 特養ホームの待機者は18年12月末現在で578名となっています。朝日中学跡地の建設計画はありますが、まだ建設手法がきまってないとして、今後の投資的経費には算定されていません。その先の計画もありません。
 これまで計上されていた、地域密着型サービス等整備費助成経費9200万円は19年度当初予算に計上されませんでした。後退したのであります。理事者はグループホームなど必要な施設であり、整備計画が具体化した段階で補正により予算化する、この間なかなかできてこなかったのは、特養と違って土地はあるが、地域の反対があってとのことと答弁しました。であるならなおさら、豊島区が責任をもって当初予算に組んで整備しなければならないはずです。さらに、高齢者施設の職員待遇改善としての東京都の介護職員宿舎借り上げ支援事業は、保育士の宿舎借上げ補助と違って、福祉避難所の指定を受け、災害対応要員を配置するなど、制限が多く使いにくい、その上地域密着型は対象でさえありません。理事者は豊島区が独自の制度を考えたが、事業者から使えないといわれたとのことですが、都と同様の制度では、使いづらいのは当然です。

 豊島区は目玉プロジェクトとして、高齢社会にむけた「としま総合戦略」をすすめるとしています。
 この間豊島区は国の言いなりで福祉を削り、公民連携といって民間まかせ、民営化を進めてきました。この予算でも、地域密着型の予算を計上せず、障がい者グループホーム等も民間まかせ、介護保険の利用幅がひろがるという選択的介護もお金がなければ利用できない、住宅施策でも民間まかせで高齢者への対策は不十分です。この路線を続けていては、区がうたう「生涯自分らしく暮らせるまち」にはなりません。福祉の基盤整備を含め、区が責任をもって施策を実施し進めていくことが基本で、それに民間やボランティアが2重3重に上乗せして支えていくようにすべきです。

 次に中小企業対策についてです。
 区内の商店街は、シャッターどおり商店街となっています。大型店舗の売り上げが区内の七割を占め、その他の街の商店街の売り上げはわずか三割ですから事態は深刻です。
 生鮮食料品を扱う肉屋さん、魚屋さん、八百屋さんなどの数は15年前と比べ半減しています。区が、イベントなどの支援をしても地元商店街には回ってこない実態です。今、こうした現状を打開しなければ、やがて街は衰退し、商店街はなくなり、町会に加入する世帯も減り、お祭りやイベントや子どもの育成など地域コミュニティは失われていきます。区長の進める人を呼ぶ街づくりは、池袋には人がきて賑わいを作ってはいますが、地元商店は廃業が相次いでいます。さらに特定整備路線は、区内の有数商店街を分断させることになります。
 消費税10%増税は、商店街にとっても大打撃となります。クレジット決済推進、プレミア商品券の発行などで、消費不況を回避させたいというなら増税しないことが一番です。ところが区長は消費税増税は必要といって推進する立場です。また、インバウンドを目的としたクレジット決済は、街の小売店舗では活用するには程遠い施策です。高崎市などで行っている商店リフォーム事業などの商店街を本格的に守ろういう対策も不十分な予算です。
 また、住宅修繕リフォーム助成事業も、我が党が指摘してきたように、所得制限撤廃と中身を充実しなければ、実効性が上がらないことはわかり切っています。中小企業支援策の一つでありながら、改善しようとしません。

 学校施設整備についてです。
 これまでわが党が要望してきた、学校トイレ、体育館トイレ等の改修、全小中学校体育館エアコン設置が実現しました。しかし区内の学校施設で50年を超える学校が19校もあります。区は千川中学校の改築以降は、建替えでなく既存の躯体を活用した長寿命化、スーパーリニューアルを検討していますが、計画はこれから、複数校を同時に改修しても工事だけで20年はかかると言います。スーパーリニューアルといっても建替え同様の施設になるのか、何よりも現状の老朽化した学校と改築校の格差は大きく、学校間格差があるのは大問題です。
 学校によっては机、椅子などの子ども達が毎日使う備品の痛み、老朽化が激しいとの声も届いています。学校施設の計画的な改修計画とともに、備品についても早急に全校調査し、計画的に更新計画を立てるべきです。

 教育現場における職員と「働き方改革」について
 昨年8月より、区立幼稚園の正規職員が退職し欠員が生じていることを取り上げました。欠員があるため、管理職である園長が担任となっているが、それでは全体を見ることができない、という相談を保護者からうけたのです。理事者は「8月から募集をしていたが、集まらなかった」との答弁でした。区立幼稚園では、発達障害など手のかかる園児が全体の半分近くにもなっているところもあります。子どもの安全の観点からみても、6カ月も欠員のままで放置するのはあり得ません。現場に負担を押し付けるのではなく、豊島区及び教育委員会が責任をもって職員を採用すべきです。

 小中学校の教職員は業務が増え続け、「過労死ラインで働いても授業準備や子どもと接する時間がとれない」という深刻な状態で苦しんでいます。一昨年、ついに政府も「教員の長時間勤務の早急な是正」を掲げました。
 豊島区は18年度の教育大綱に「豊島区学校における働き方改革推進プランの策定」を明記しました。
 プラン策定のために行った「教職員勤務実態調査の報告書」をみると、在校時間は、小学校は一週間で59時間17分 中学校は59時間で、また、平日1日あたり在校時間で小学校は11時間5分、中学校は10時間46分。やはり異常な数字であり、早急に改善すべきです。策定状況を質問すると理事者は「一朝一夕にはいかない」と答弁しています。改善のためには、持ち授業のコマ数をへらす、とか、少人数学級とかて、職員定数を増やすことが必要ではと質問すると、教育長は、東京都や国にいっているとしていましたが、確かに金も制度も変えずに残業減らせという政府のやり方は無責任ですが、豊島区としても独自にやれることがあるのです。

 以上、深刻な区民生活を直視し、暮らし、福祉、教育など区民需要を最優先にした予算になっていないのであります。

 続いて、第2の観点、自治体本来の役割を投げ捨て、区民を追い出し、大企業と来街者のためのまちづくり予算になっていないかについて述べます。

 旧庁舎跡地活用計画すなわち「ハレザ池袋」と8つの劇場計画は、貴重な区有地を定期借地で貸付け新庁舎建設費を捻出し、賑わいを作るためといいつつ、大企業の儲けのため多額の税金を投入するものです。76年間の定期借地料一括前払いではいった収入は191億円、庁舎建設にかかったお金は136億円です。活用計画への税金投入は、計画が明らかになった2013年には、新ホールや新区民センターの建設、中池袋公園の改修、南北区道の整備などで114億円でしたが、事業費が膨らみ、2020年度見込みまで含めると今や総額176億円もの巨額な費用となっています。
 そのシンボル、新ホールについては、豊島区として利用するのは年間10日程度、区民の利用は2020年10月以降になり、さらに区民料金は軽減しても1日40万円。これは、区民のための施設ではありません。
 購入経費84億円の財源について、これまでは起債と基金それぞれ半分程度を活用するとしてきました。ところが、高野区長が起債から全額を基金の取り崩しという手法に変更するという政治判断を下したとのことです。虎の子とも言える191億円の地代収入は早々と全て使い切ってしまう上に、さらに加えて37億円もの基金を取り崩すことになります。新ホールは借金なしでできるかもしれないが、特養ホーム、保育園、学校施設その他の区民に必要な施設や施策はどうなるのか。新ホールを買うお金があれば、区民の要望のある、国民健康保険料の負担軽減、子どもの医療費無料化、学校給食費の無償化などは実現可能なのです。

 中池袋公園は、「ハレザ池袋」と一体で整備するとして、事業費は3.9億円となりました。本来、必要のない改修であり、ハレザとあわせる御影石舗装が1億6000万円と工事費の44%を占めています。管理は、東京建物・サンケイビル2社でつくる一般社団法人Hareza池袋エリアマネジメントが指定管理者となり、指定管理料は、2019年度は約2,400万円、2020年度は協議中です。これが管理経費です。
 さらに、池袋保健所は「賑わいを作るために」、造幣局跡地に移転させ、貴重な区民の土地は売却します。仮移転先のプレパブに15億円、さらにC地区の市街地再開発事業でできるビルに移転を予定、この費用は20億ともいわれますが、もっと高くなることは容易に想像できます。

 つぎに【池袋西口公園】についてです。
 池袋西口公園を「他に類のない劇場公園」にするという区長のトップダウンで始まった事業は、いつの間にか施設建設総事業費が約30億円にまで膨れ上がっています。
 また施設使用料についても、維持管理経費から算定したものは約30万円(286,200円)と改修前の使用料の1.5倍となるため激変緩和で改修前と同額の休日20万円、平日15万円にしたと言います。実際には他に音響設備使用料12,000円、照明設備使用料21,000円も設定され、区民が気軽に使えるものではありません。さらに年間の赤字は4千万円と想定され、すべて一般財源で補てんするとしています。
 区は「2020年度には使用料の見直しをする」「大型ビジョン、音響、照明システムなど注目度が高く、そこへ誘導したい」といいますが、まさにその大型ビジョンや音響、照明システムが多額の維持管理経費を生み、多額の赤字を生んでいるのです。スタート前から大赤字を生むことが分かっている事業を進めるべきではありません。これまでも指摘してきた通り大企業、来街者のための公園に莫大な税金投入すべきではありません。

 電気バスについてです
 昨年第四回定例会で、電気バス7台を税込2億1814万2718円で購入する契約が議会で審査され日本共産党は反対しましたが、多数で可決しました。19年度予算では、施設整備はバス3台の追加購入費8400万円をふくむ1億8900万円が計上され、施設整備など初期投資は計4億4000万円となりました。運行補助も19年度は6600万円、再来年度からは1億7300万円が想定されています。バスの台数を増やしたら、赤字が減ったというならわかりますが、台数を増やしたのに赤字もふえる、その結果一般財源で補填する金額も増えるのです。LRT整備構想を見据え地理に不慣れな観光客や交通弱者を対象とする環境に配慮した新たな移動システムといいますが、区民の足となるコミュニティバスではありません。時速19キロしか出ない、冷暖房もない来街者のための観光目的のバスに、区民の税金をつぎ込む予算です。

 次に特定整備路線による沿道についてです。
 これまで住んでいた住民を追い出し、商店街もなくす道路計画が進んでいます。東京都の進める乱暴なやり方や、再建できない立ち退き査定に、住民から不満があがっています。
 現在の進捗状況から見ても10年で都市計画道路を作ろうというのは無理なのに区長はこれを快挙といって評価してきました。都は道路計画にかからない土地(残地)については、基本的に買いません。区が関与してURにより残地を買い取り、代替地を確保し再建を図ろうとしていますが、すでに実施している池袋本町地域では実績はゼロ。長崎地域では方向性は決まっていますが具体化されていません。URも慎重で前向きな動きは見られません。住んでいた地域で生活再建ができず住民を追い出すことになるなら、もうきっぱりと特定整備路線、都市計画道路事業はやめるべきです。

 以上、自治体本来の役割を投げ捨て、区民を追い出し、大企業と来街者のためのまちづくり予算になっているのです。

 次に審査の第三の観点である、今後の財政運営に過大な影響をもたらすことはないのかについてです。
 わが党区議団は、これまで高野区長のトップダウンによる無計画な投資事業、目玉として推進している国際アートカルチャー都市や東アジア文化都市を口実した大企業のための開発優先の街づくりや投資について、将来の財政運営を左右する事態が必至という観点で批判し、これまでも見直しを求めてきました。
 としまのお財布では、2019年度の当初予算から5か年の財源投入を決めている事業だけでも1167億円という途轍(とてつ)もない額の投資を見込んでいます。加えてこれに算入されてない事業が、東池袋一丁目地区再開発、西池袋一丁目再開発、池袋駅西口地区再開発などがあげられます。
 さらに学校の長寿命化計画が進めば新たな改築改修計画を作りその需要を見込まなければなりません。また区民需要に密着した特養の増設、区立住宅の改修、改築等やらなければならない投資的経費は増すことは必至です。
 歳入にかかわる問題では、地方消費税の清算基準の見直し、法人住民税の一部国税化など不合理な税制改正だけでなく、世界情勢や消費税増税による景気低迷も減額要素として見込まなければなりません。
 そういう不安の中で、池袋を中心とした区民の使えない劇場ホールの買い取りに84億円、池袋西口公園も30億円もかけます。反対があってもどんどん再開発を進めています。区民の求めるコミバスは走らせず来外者のための移動のために時速19キロしか出ない電気バスを走らせます。
 このような東アジア文化都市記念事業21事業だけでも5年間の投資は、323億円。その維持管理経費が年間10億円というのですから驚きです。先ほどからのべているように、区民の使えないような投資に金をかけ、その赤字の穴埋めに税金投入とは異常な財政運営といわざるを得ません。
 今後の区の財政状況を取り巻く状況を考えたとき、区長のすすめる不要不急の池袋中心の来街者のための投資を推進する余地はありません。開発事業は一度進めてしまうと後戻りできないのです。未来のためといって投資事業に歳出をあてれば、将来の財政運営にも大きな影響をもたらすことは必至です。そうなれば、結局は、区民のくらしや福祉を削らざるを得なくなるのです。
 今後の財政運営に過大な影響をあたえかねない予算になっています。

 第四に、これまでの区政のゆがみ、ひずみがでていないかについて、述べます
 区長の退職金についてです。1期4年つとめると1754万6400円です。5期で9000万円をこえる金額を受け取るもので、また、一般の職員が30年勤めてもらえる金額であることと比べ、特権的では、と区長にたずねると、手取りは1400万円程度とか、区長と一般の職員と比べるのは責任分野、選挙をへたうえでということではちがう、報酬では23区で低いほう、として高いという認識はもっていない、と答弁しました。しかし、区民感情から言えば高すぎます。

 職員の残業についてです
 区議会の議事録の作成が遅れていることについて、決算でも指摘しました。職員に時間外勤務を指示して、ようやく3月22日昨年10月に終わった第三回定例会の分が発行できる状況になったと答弁がありました。区議会として議会改革検討会の開催や広報編集委員会で区議会だよりの刷新やホームページの改善をしてきたが、それで会議録が後回しになってはなりません。来年度も議会改革はやることになりますし、さらに一般質問での中継に手話通訳の導入もします、残業せずともできる職員配置が必要です。
 東アジア文化都市2019のオープニングにむけて、月80時間を超える残業をした職員がいることを認めました。過労死ラインを超える残業であり、本人が意欲的でやる気があったとかいう問題ではなく、放置できない事態です。区長は、職員の過重な仕事についてなくすよう、人事課長を含めて指示し、現場をまわっている、と言いますが、それでは解消できません。
 豊島区は、これまで定員管理計画で正規職員を減らしてきました。来年度は、全体として職員の体制において正規職員は10名以上増えると、ようやく増やす方向が出てきていますが、まだ足りないのです。

 次に学校開放管理の委託問題についてです。
 豊島区の学校開放は、40年以上の歴史を持ち、子どもたちや地域住民にとって必要不可欠の事業であり、その役割を自覚した学校開放管理員の存在は大きいものがあります。
 これまでも、教育委員会は、人事管理の合理化などを口実に正規職員から非常勤や臨時職員に移行するなどを進めてきて、区議会でも学校開放管理員の役割について議論がかわされてきた経過があります。
 今回、区の予算編成もすみ、議会告示後に、教育委員会からわが会派の正副幹事長に「4月から順次シルバー人材センターに業務を委託したい。組合との交渉に入りたい」との説明がありました。この提案は、学校開放管理員を事実上解雇することになり、日曜日の開放も中止せざるを得ないとか、さらには偽装請負にもなりかねない問題でもあります。こんな重大問題を議会の論議もせずに進めるやり方は言語道断といわざるを得ません。こうしたトップダウンにより民主的な手続き協議もせず、決めてしまうとは許されません。白紙撤回を求めておきます。

 また、私は予算特別委員会で、この間の総合窓口課の個人情報の不適正な取扱い、偽装請負、違法な廃棄物処理などにかかわり、コンプライアンス、法令順守について、質問しました。理事者は、職員がいまやっている仕事がなんの法律、法令に基づいてやっているのか点検したい、そのために新たな組織をつくる、と答弁しました。法律を守るのは当然ですが、大事なことは、困っている区民によりそい、その暮らしや福祉を守る、憲法や地方自治法に規定される地方自治の本旨に沿った行政運営をすることと考えます。
 公益通報制度については、豊島区でも整備されていると答弁がありました。実効性のあるものにするには、告発者が分からないようにするのは大前提ですが、それに加えて、告発者が不利益を被らないようにすることです。
 人間ですから、ミスはある、勘違いやコミュニケーション不足、思い込み、そういうこともありますが、それは改善が可能です。しかし、間違ったことに対し指摘や告発したら報復を受けるような、そういう状況をつくったら、社会や組織は壊れていくと私は思います。この点では、これからが正念場だと考えます。

 以上、これまでの区政のゆがみ、ひずみがでているものについて述べました。

 私共は、【4つの観点】に基づき審査し、問題点を指摘してまいりました。
 予算特別委員会で、わが党は、一般会計で高野区長が予算を組替えれば直ちに実現できる最低限のものを対象とした予算組替え動議を提出しました。ところが、他会派はこれを否決してしまいました。わが党の区民生活を支える最低限の組替え動議に対して何の質問も意見もなく、否決されたことについては大変残念であります。

 来年度予算には、小中学校体育館のエアコン設置、就学援助の入学支援金の拡充、臨時職員の健康診断、耐震シェルター補助や感震ブレーカーの拡充、ファミリー世帯家賃助成の拡充、保育園の検査指導体制の拡充、スクール・スキップ・スタッフの交通費支給、区民集会室の備品改善などの予算が盛り込まれたなど一歩前進をしたことは評価いたします。

 しかし、先ほど挙げた4つの観点いずれに照らしても、今回の予算は認めることはできません。よって、一般会計予算に反対するものであります。

 次に、3特別会計予算についてです。
 まず第29号議案、国民健康保険事業会計予算についてです。
 来年度は今でも高すぎる保険料がさらに上がり、一人当たり保険料は125,174円、前年度比3,186円の増額です。1人当たり保険料は直近の過去3年間で13,985円も値上げとなっており、加入者の負担は限界を超えています。また年収400万円、40代夫婦で子ども2人のモデルケースでは、約50万円(501,659円)と収入の12.5%にもなり、子育て世代への負担は大変重いものとなっています。特に0歳の子どもにもかかる均等割りの負担が重いことから、わが党は今定例会で多子世帯及びひとり親世帯の均等割りを軽減する条例提案をしました。区は23区統一保険料のため区独自の軽減策は行わないが、多子世帯の負担は重要な課題とし特別区長会でその研究をしているとしました。しかし子どもの均等割りを独自に軽減する自治体は全国で25と広がっています。ただちに区独自の軽減策に踏み切るべきです。
 区は一般財源からの法定外繰り入れの解消を進めており、今年度比5億円も削減しました。今年度保険料に据え置くのに2億4,800万円です。この削減がなければ保険料は引き下げられたのです。「国保は国民皆保険を下支えする基幹的な社会保障制度」です。ただちに保険料を下げるべきです。

 次に、第30号議案、後期高齢者医療事業会計予算についてです。
 国の社会保障制度改革推進本部において、後期高齢者医療における保険料軽減の見直しがされ、今年度は元被扶養者及び低所得者を対象とした軽減を行ってきましたが、来年度からは、本則に戻すことになります。
 都の広域連合では、引き続き独自の軽減を引き続き継続しますが、保険料は世帯総所得33万円の9割軽減は、8割軽減となり倍の保険料になります。
 本則に戻ると7割軽減ですから三倍の保険料になってしまいます。
 長い間社会に貢献してきた高齢者の医療ですから保険料は無料にしてもいいのに3倍も値上げするとはひどいものです。消費税は社会保障のためとは、いかにでたらめということです。区が独自に保険料そのものを軽減することは、できないといいますが、値上げした分を還元すればよいのです。福祉の心が欠落しているということです。
 だから、高額介護合算療養費・高額医療合算介護サービス費支給申請もわかりにくいものになっているのです。高齢者の立場にたったものに改善すべきです。

 最後に、第31号議案、介護保険事業会計予算についてです。
 「介護の社会化」をうたって始まった介護保険は。改善どころか改悪続きで、高い保険料を払っているのに、実際には使えない、保険あって介護なしの状況です。
 日本共産党区議団が、一般質問で、要介護2から要支援2に下がって、区分変更申請しようとしたら、10万円負担がかかるリスクがあるといわれてあきらめた方、結局うけられるサービスの質も量もへり、骨折して入院し、重症化した事例を取り上げました。なぜ、要支援2に下がったのか、と聞いても、認定調査会は非公開なので本人に説明できない、それでは区分変更(区分申請)をしようとすると、10万円の自己負担のリスクがあるということです。何も現場の説明が悪いと言っているのではありません。要介護認定、要支援の総合事業など介護保険制度の仕組みや運用が真に利用者に必要なサービスを提供するのではなく、制限する方向になっているのです。それをそのまま、区民に押し付けているのは福祉の心がないと胃言わざるを得ません。総合事業で、区が2018年度から始めた「としまいきいき訪問サービス」、いわゆる訪問型サービスAは、国基準を緩和したサービスと言って3日間の研修を受けた人でもできる家事援助ですが、実際には資格を持ったヘルパーがきていると現場で聞きました。介護予防訪問介護より、事業所の受け取る報酬は低いのに、資格をもったヘルパーが実施しているということは、またもや事業所やヘルパーが泣いているということです。国では今後は、要介護1と2も総合事業にいれていく議論がされていますが、そんなことになったら自治体の負担も重くなり、そして事業者も負担が重く、結局その被害を受けるのは区民なのですから、絶対的にやめるべきです。
 よって、3特別会計予算に反対するものです。
 以上で討論をおわります。ご清聴ありがとうございました。