HOME >区議会質問>本会議討論
区議会報告議員紹介政索と見解お知らせリンクご意見ホーム
区議会質問
第34号議案 豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例、31陳情第1号「国民健康保険料の負担を軽減するための陳情」、議員提出議案、第1号豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例についての討論(森とおる)

2019年3月22日

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま一括して上程されました2議案中、まず、第34号議案「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について可決に反対の立場から討論を行います。なお後ほど上程されます31陳情第1号「国民健康保険料の負担を軽減するための陳情」について不採択に反対し、直ちに採択することを求め、合わせて討論を行います。

 本議案は、特別区国民健康保険事業の調整に関する共通基準の改正に伴い、基礎賦課額、後期高齢者支援金等賦課額及び介護納付金賦課額の保険料率等を改定し、国民健康保険法施行令の一部改正に伴い、保険料の減額の判定基準及び賦課限度額に関する規定を改めるほか、規定の整備を図るとして提案されたものです。
 保険料率等の改定により、基礎分と後期高齢者支援金分の所得割率は9.54%から9.49%へ、均等割額は51,000円から52,200円へ1,200円の値上げ、賦課限度額は77万円から80万円へ3万円の値上げとなりました。この結果、1人当たり保険料は121,988円から125,174円へと3,186円の値上げとなります。
 また、介護納付金分の所得割率は1.76%から1.74%へ、均等割額15,600円と賦課限度額16万円は前年と同額です。
 毎年の値上げに加え、10月は安倍政権が消費税10%増税を狙っています。はるかに限界を超えている多くの加入世帯は、いっそうの大負担増を強いられることになるのです。以下、反対の理由を述べます。

 反対理由の第1は、値上げが区民のくらしに重大な打撃を与えるからであります。
 厚生労働省保健局の資料によると、全国の国保加入世帯主の職業の変化は1965年度から2016年度の約50年間で、農林水産業が42.1%と半数近くだったのが、2.3%に減少しています。一方、無職は6.6%しかなかったのが、逆に半数近くの43.9%と逆転しています。
 また、一人当たり保険料は、1984年度から2016年度の約30年間で39,020円から94,140円へと倍以上に上がりました。一方、平均所得は増えたのかというと、無職の方が急増した影響もあり、179万円から139万円に40万円も減っています。
 豊島区において、2017年度の国保に加入しているのは63,441世帯、加入率は35.74%、そのうち所得金額のない世帯が41%、所得金額200万円以下は80%を占めています。これについて豊島区は以前から「本区においても国民健康保険制度が抱える構造的問題の1つである負担能力の低い所得層が多く加入している実態となっている」としており、経済基盤の弱い世帯がこれほど多いということを示しています。
 子育て世代も深刻です。モデルケースによると、40歳代夫婦、子ども2人の給与年収400万円の世帯の国保料は、2003年度は193,850円でしたが、2019年度は501,659円、なんと30万円以上も値上がりしているのであります。値上がりしているのは国保料だけではありません。他の社会保険料、税金、家賃や食費など物価の高騰、一方で収入は上がりません。こうした中、どうして暮らしていけるというのでしょうか。はるかに限界を超えているのであります。

 反対理由の第2は、あまりにも高すぎる国保料により、滞納世帯が増加し、医療を受けられない区民がますます増えるからであります。
 このように経済基盤の弱い加入者が多い国保において、国保料の値上げは耐えられない痛みであり、もうこれ以上、払えないといった世帯が増えることになるのです。現にわが党区議団が昨年実施した区民アンケートでも、これ以上の負担は耐えられないが77%にものぼったことでも明らかです。2017年度の滞納状況は22,329世帯、27%と、新宿、中野に続き23区で3番目に高くなっています。差押923件は3位、2018年度の短期証発行は5,275世帯、23.6%で3位、資格証は2,142世帯、9.6%で5位と、いずれも加入者に厳しい対応をしていることの現れです。高すぎる国保料や医療費窓口負担が受診困難につながる事例が全国各地で相次いでいます。今月、全日本民主医療機関連合会が、経済的理由で治療が手遅れになり死亡に至ったケースが2018年に全国で77事例あったと発表しました。事例の特徴として、保険料の滞納差押えが含まれており、社会的につくられた早すぎる死だと強調されました。今後、豊島区においてこうした事態が起こらないような対策は待ったなしです。保険証を取り上げられ、病気になっても医者にかかれず我慢せざるを得ない。収入は減らされながら相次ぐ負担増に苦しむ区民の実態を直視すべきです。まさに高野区長の政治姿勢が問われます。

 反対理由の第3は、国、自治体が責任を果たさず、国民皆保険制度の根幹を揺るがしているからであります。
 国保制度がスタートした当初、政府は、「国民健康保険は、被保険者に低所得者が多いこと、保険料に事業主負担がないことなどのため、どうしても相当額国庫が負担する必要がある」と認めていました。ところが自民党政権は、1984年の法改定で定率国庫負担を削減したのを皮切りに削減し続けてきました。国が責任を果たしていないことが国保料の高騰に繋がっていることは間違いありません。その結果、国保加入者の一人当たり保険料は、中小企業の労働者が加入する協会けんぽの1.3倍、大企業の労働者が加入する組合健保の1.7倍になっています。
 その上さらに、安倍政権は今年度から国保の都道府県化を強行し、2023年度までに赤字解消の名で法定外繰入を解消するよう自治体に号令をかけています。都道府県化に伴う、東京都の激変緩和措置による財政支援策は引き下げられることとなり、今年度の14億円は、来年度11億円に減らされます。豊島区が一般会計から繰り入れている法定外繰入金は、今年度見込み20億円から15億円へ5億円も引き下げようとしています。この引き下げをしなければ、1人当たり保険料は値上げすることなく、3,000円引き下げることができたのであります。

 「国民健康保険料の負担を軽減するための陳情」は、937名の署名を添えて提出されました。本陳情は、国保料を引き下げて欲しい、全ての加入世帯に正規の保険証を発行してほしいなど、まさに国保加入者が置かれている厳しい実態を切実な声として訴えているものです。質疑で委員から、制度を維持していくためには難しいであるとか、無理だなというような意見がありました。しかし今こそ、豊島区議会として、国保制度の構造問題にどう向き合い、どのように解決策を見出すのかが問われているのです。

 委員会質疑で、私は区に、国保が社会保障制度だという認識について質しました。答弁は、「社会保障制度であると同時に相互扶助の制度である」というものでした。しかし、現行の国保法に相互扶助という文言はありません。1948年に国保法は改正され、同年、社会保障制度審議会が設立されました。1950年の社会保障制度に関する勧告で「生活保障すなわち社会保障の責任は国にある」と明言し、さらに1956年の医療保障に関する勧告で「医療を受ける機会の均等が重要であること。疾病が貧困の最大原因であること」とされ、まさに国保が社会保障制度なのです。よって相互扶助などという考えを持っていること自体、間違いなのであります。
 また区は、特別区長会、全国市長会で、国に対し強く要望していると繰り返しました。そして、少しずつ地方から現場の声が届き始めていると答弁がありました。しかし、国がまともな対策を打ち出そうとしないのであれば、高野区長、自ら直接、国に直談判すべきです。国を動かすまでは、区が独自に最大限の対策を講じるべきです。にもかかわらず、法定外繰入金を削減し、負担を国保加入者に押し付けるなどもっての外です。この問題を解決するには、公費負担を増額する以外ありません。このままでは国民皆保険制度そのものの根幹を揺るがす事態となります。誰もが、とりわけ低所得者が払える水準に引き下げることこそが、豊島区の役割です。
 国のいいなりで福祉くらしを後退させる豊島区ではなく、安倍政権の暴走から区民を守る防波堤の豊島区になってほしい、これが国保加入者、区民の最大の願いです。

 よって、第34号議案「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について可決に反対し、31陳情第1号「国民健康保険料の負担を軽減するための陳情」について不採択とすることに反対し、直ちに採択することを求め討論を終わります。

 続きまして、議員提出議案第1号「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について否決することに反対し、可決すべき立場で討論を行います。

 本議案は、1つに、18歳未満の子どもが3人以上いる世帯の第3子以降の子どもに係る均等割額を免除し無料とする。2つに、ひとり親世帯のうち18歳未満の子どもに係る均等割額を免除し無料とするものとして、わが党区議団が議案提案したものであります。

 国保は、年金生活者、失業者、非正規労働者、零細経営の自営業者など所得の低い人が多く加入しています。国も地方自治体も、医師会など医療関係者も、国保は国民皆保険制度を下支えする最後のセーフティネットと位置付けています。ところが、その一人当たり保険料は、協会けんぽの1.3倍、大企業の労働者が加入する組合健保の1.7倍です。加入者の所得は低いのに保険料が一番高いという矛盾が、低所得世帯を苦しめ、生活に困窮する世帯が医療を受ける権利を奪われるといった事態となっているのです。
 その大きな元凶となっているのが均等割です。均等割はゼロ歳児から世帯員の数に応じて課され、低所得者向けの7割、5割、2割の法定減額がありますが、対象は限定されています。子どもの数が多いほど国保料が引き上がる均等割に対して、子育て支援に逆行するという批判が噴出し、全国知事会、全国市長会などが国に軽減措置を求めています。
 わが党の議案資料で示したとおり、給与所得500万円の30代夫婦の世帯では、協会けんぽの場合は子どもは何人いても今年度は247,500円です。一方、来年度の国保は子どもが2人の場合505,837円、子どもが3人の場合558,037円と2倍以上です。同じ収入、世帯構成の家族が、加入する保険が違うだけで2倍以上の負担を強いられている。これほど大きな格差があることは間違いです。こうした格差を是正することは、社会の公平、公正という面からも当然のことであります。

 質疑で、他会派から「法令に違反しているのではないか」というような発言が何人からも出ました。委員会でも答えたように国保法に、被保険者に特別な事情がある場合、市町村の判断で国保料を減免できるとあり、この特別な事情には政省令の定めはなく、自治体首長に裁量が委ねられています。現に議案資料で示したとおり、子どもの均等割を独自に減免している自治体は都内にもあります。その後の調査で、全国25の自治体に広がっていることが分かりました。
 また、他会派から「特別区長会から国に要望している」「国の関与が必要」とか、「いまの段階で賛成できない」「このタイミングでは難しい」などといった発言がありました。しかし、国保の構造問題が深刻になっている中、国保に加入している多子世帯、ひとり親世帯の経済的負担の解消は待ったなしの課題です。

 わが党は、昨年11月、国保財政への公費負担を1兆円増やし、均等割・平等割を廃止し、国保料を協会けんぽ並みに引き下げる政策を発表しました。これは全国知事会が政府に要望した1兆円と同額であります。財源は、安倍政権のもとで純利益を増やしながら4兆円も減税されてきた大企業や、1千億円以上、株を保有し、資産を5倍以上に増やした富裕層に応分の負担を求めることで十分つくりだすことができます。
 にもかかわらず、国、豊島区が実現しようとしないのであれば、豊島区議会が議案提案権を行使して打開すべきであります。

 よって、議員提出議案第1号「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について否決することに反対し、直ちに可決することを求め、討論を終わります。