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区議会質問
池袋保健所 位置変更条例討論(森とおる)

2018/7/9

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、第52号議案「豊島区保健所の設置等に関する条例の一部を改正する条例」について、可決に反対の立場から討論を行います。

 本議案は、現在の保健所の位置を、造幣局跡地に移すというものです。
 区は、これまで、池袋保健所の設備更新・改修時期を迎えており、今後10年以内に約20億円の大規模改修工事費がかかる見込みだが、改修時に一時的に移転する適切な物件を確保できなかった。今後の保健所の機能の充実や区民サービスの向上も考え合わせてきた。隣接するハレザ池袋関連施設が完成すれば、一層の混雑が見込まれ、来所者と来街者の接触・転倒事故などの危険性が増大するなどの問題を検討してきたとしています。
 そうした中、庁舎に隣接するH36年度完成予定の南池袋二丁目C地区の市街地再開発ビルへ移転させることが、多額の改修経費をかけて大規模改修するよりも、今後の保健所機能の拡充や、区民サービスの向上などを実現していく上で、最適であると判断した。しかしながら6年間、現状のまま使い続けることは難しく、多額の改修経費がかかるため、造幣局跡地の一部を都市再生機構から無償で利用できるので、仮の保健所を建築しH31年秋からH36年までの5年間、約15億3千万円のリース契約を行い、一時移転させることにしたというものです。

 これまで、わが党区議団は反対の態度を示してきました。それは、
1つ、きちんとした説明もなく、築後20年しか経っていない保健所を移転し、売却の募集要項を秋に出すなど区民無視、議会軽視の極みであること。
2つ、本移転を計画するC地区は都市計画決定前で手続き上において問題があること。
3つ、2段階の移転に伴う多額の費用がかかること。
4つ、旧庁舎跡地の開発、ハレザ池袋は、保健所を訪れるベビーカーも自転車も通れない危険な街で、区民のためではなく、来街者のためのまちづくりであることなど、こうした実態を浮き彫りにし、これらの問題が解消されることなく移転計画を進めることは、あまりにも拙速だと反対してきました。
 以下、委員会質疑を踏まえ、改めて本議案の反対理由を述べます。

☆第一の理由は、議会と区民を無視した一方的な進め方に問題があるからであります。
 区は、5月から6月にかけて行った、パブリックコメントの意見が集約される前、パブコメを実施しているさなかに、本議案を提出しました。しかも、仮移転先の建物リース契約については4月1日に終えていました。あと先の順序がデタラメで、そこに区民の意見を聞こうという姿勢はありません。
 特に仮移転先の建物リース契約は異常きわまる進め方でした。5年間のリース15億3千万円の予算は今年度予算に「池袋保健所仮移転経費」として債務負担行為に計上されていました。私は今年3月の予算特別委員会で、この仮移転経費を取り上げましたが、区は、リース契約については一言も答弁しませんでした。今回、区民厚生委員会で、これについては副区長、保健福祉部長から、それぞれ、「もう少し丁寧な説明があってもよかった」「十分な説明ができなかった。お詫びする」とありましたが、納得できるものではありません。しかもあろうことか、その3月に入札を行い、4月1日に契約を締結していたのです。これらは5月の施設用地特別委員会で報告されました。ところが報告された金額については、15億3千万円だけであり、何社が応札したのか、落札率はどうだったのかなど詳細については未だに説明されていません。部長は、「資料が至らなかった点についてはお詫びする」としながらも「入札については問題ない。ホームページに他の契約と共に公開している」と開き直りとも取れる答弁でした。ルールに沿っているからいいというものではありません。質疑をしても答えない。議決の前に入札は進めている。報告を施設用地特別委員会の委員だけにしか行わない。しかも、詳細で丁寧な説明ではなかった。これを議会無視と言わず何というのでしょうか。これについて区長は、「水島元副区長に全面的に委ねてやってきた。水島氏を責めるつもりはない」などと答弁しました。引退し発言できない水島氏を持ち出すなど区長として無責任の極みであります。
 他にも、生活福祉課との関係について質疑しました。過去、新庁舎の建設にあたり、区は、わが党に対し、「生活保護に関しては保健所との連携も大変重要になっている。ケースワーカーの拠点は池袋保健所と近接していることが望ましい」と答弁し、生活福祉課が入る東池袋分庁舎と池袋保健所との関係の重要性を認めていました。ところが今回、私が生活福祉課はそのままなのに、池袋保健所だけを移転することについて見解を求めたところ、区は、「当時と状況が変わり、路上生活者が減っており移転に影響はない」としました。何と都合のいいことでしょうか。議会における発言に対する責任が微塵も感じられません。
 またAIDS知ろう館について質疑しましたが、区のエイズ対策普及活動の大事な拠点として、区民が多く集まる現在の立地であるからこそ有効なのです。アニメイト池袋本店が隣に建ち、訪れる多くの若者にも、さらにPRが必要ですが、部長の答弁は、「移転しても足りなくなったら・・・(云々)」という程度でしかありません。移転となれば、それこそこれまで積み上げてきた蓄積と機能が揺らぐことになるのであります。

☆第二の理由は、本移転先の南池袋二丁目C地区とは契約が行われておらず、移転できる保証が担保されていないからであります。
 私は移転先の土地をどのように確保しているかについて質疑しました。仮移転先の造幣局跡地については、UR都市機構と公文書を交わしているので信頼性は担保されているとのことでしたが、まだ契約書は交わしていないという事実が明らかになりました。
 また、本移転先のC地区については、確保する面積、階数、フロア等は準備組合と協議している最中とのこと。肝心の契約について問いただしたところ、区は、「取り決め自体はない」「準備組合から公共施設を入れてほしいと言われた」と答弁しました。未だに、C地区の全ての権利者の合意は得ていないのです。さらに、区は、「昨年10月に準備組合から都市計画提案があり、その中に保健所ということが書いてあり方向性が一致している」ということを根拠としました。私は、それが法的な根拠になるのかと問いただすと、副区長は、「相互に信頼関係を保ちながら法的に担保されている」と答弁しました。権利者の意向を確認せずに、合意を得てもいないのに、なぜ信頼関係があると言えるのでしょうか。それを法的に担保されていると答えるなど言語道断であります。
 C地区は現行の開発計画に多くの反対の権利者がいます。再開発組合も設立しておりません。計画が抜本的に変わる可能性があるのです。仮に計画通りに進んだとしてもC地区が、「保健所よりも良い条件の民間事業者と契約した」と言われた時に対抗措置は取れないのであります。区長は、「途中で頓挫するようなことがあれば、当然責任問題であると同時に、それだけでは済まされないと思うが、そういうことにならないように最大限努力して参ります」と答えました。
 それで済まされないのは、議会も同じです。計画が頓挫した時に、議会は何をやっていたのかと問われた時に、「契約のない移転に賛成しました」では済まされません。本議案の可否について、議会も計り知れない責任を背負っているものと考えます。なぜならば、負担のしわ寄せは、全て区民に行くからであります。

☆第三の理由は、大企業を儲けさせるための移転計画だからであります。
 私は、予算特別委員会の質疑で、「ハレザ池袋というのはベビーカーも自転車も通れない危険な街で、区民は楽しめない、来街者のためだけのまちづくりか」と質問しました。これに区長は、「ハレザ池袋が大混乱する中で事故が起こると無計画と言われる」などと答弁し、区民のためのまちづくりだとは言えなかったのであります。
 来年の秋、売却とほぼ同時にオープンする新区民センターの主な利用は区民だとして、パパママ☆スポットにベビーカー置き場も設置する予定ですが、ここを訪れる区民のベビーカーや自転車も事故が起こることが前提だというのでしょうか。結局のところ保健所を売却するための都合の良い言い訳でしかないということです。
 来年秋のハレザ池袋プレオープンに池袋保健所を売却したとしても、購入した企業による営業は再来年のグランドオープンには間に合いません。今、売却しなければならない理由はどこにもないということです。従って、売却にスケジュールを合わせた本議案の提出も、仮移転リース契約も必要ないのであります。
 また、造幣局跡地に移転した時の機能の拡充や利便性の向上は一定程度説明がありましたが、C地区に移転した時については全くの白紙状態。しかも20億円台とされる保留床購入価格についても、今後上昇しないと言い切れず、頓挫の可能性も否定できないなど、これら問題の数々が質疑で明らかになったのであります。これほどまでにリスクが高い計画はありません。
 副区長は、「土地を取得された方が利益を見込んで、価格を考えると思いますので、利益を上げることは当然だと考える」と私に答えました。突き詰めるところの答えはここにあるのです。ハレザ池袋は区民のための開発ではなく、来街者を増やし大企業を儲けさせるためのまちづくりです。また、250億円もの巨額な税金投入が見込まれている、C地区の市街地再開発ビル50階建てツインタワーマンションに保健所を移転し、保留床購入費を投入すれば、それこそ、大手不動産、スーパーゼネコンをさらに儲けさせることになるのです。人口減少等により、都心における不動産の過剰供給が表面化するのは避けられません。これが負の遺産となれば、投入した巨額の税金は水の泡です。これが、アベノミクスと共に、区長が進めるまちづくりの実態です。
 今、区民が求めているのは、子ども、高齢者、女性にやさしいまちづくりです。区民誰もが安心して楽しめる街でなければなりません。将来の区財政における多大な影響、区民が背負う大きなリスクがある以上、この移転計画は認められません。
 池袋保健所の必要な改修については多少費用がかかったとしても少しずつ進めながら、区が、議会、区民と協議を重ねた上で、現池袋保健所の建設費21億円に、ほど近い高額な仮移転費用15億3千万円は本当に必要なのか、そもそも移転が必要なのか、一旦白紙に戻し、改めて検討すべきであります。

 よって、第52号議案「豊島区保健所の設置等に関する条例の一部を改正する条例」について可決に反対いたします。
 以上、討論を終わります。