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区議会質問
議員提出議案第10号、子どもの命を守ることを最優先にした児童虐待防止対策を求める意見書、議員提出議案第11号、子どもの命を守ることを最優先にした児童虐待防止対策を求める意見書、議員提出議案第12号、児童虐待防止対策の抜本的な強化及び拡充に関する意見書、議員提出議案第13号、児童虐待防止対策の抜本的な強化及び拡充に関する意見書についての討論(儀武さとる)

2018/7/9

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております議員提出議案第12号、児童虐待防止対策の抜本的な強化及び拡充に関する意見書(国宛て)、議員提出議案第13号、児童虐待防止対策の抜本的な強化及び拡充に関する意見書(都知事宛て)については、直ちに可決すべき立場から討論を行います。
 わが党は、児童虐待の防止、早期発見、子どもと親への専門的な支援を強めることは大変重要な課題だと受け止めています。早期発見で子どもの命を守るために、保育所や学校、病院、児童相談所、保健所、子育て支援センター、児童養護施設など、子どもにかかわる専門機関の連携をはかるとともに、職員の専門的な研修を強めることも喫緊の課題だと捉えています。
 以下、議員提出議案、12号、13号について賛成する理由を3点述べます。

 第一に、児童福祉司などの職員体制の強化と専門性を高める人材育成についてです。
 わが国では、児童虐待相談対応件数の急激な増加や児童虐待に対する社会的な関心の高まり等を背景として、平成1 2年に児童虐待の防止等に関する法律が施行され、その後も数次にわたって改正が行われてきました。
 しかしながら、家庭や地域における養育力の低下、核家族化等に伴う子育ての孤立化による不安及び負担感の増大等によって、児童虐待相談対応件数は増加の一途をたどり、複雑かつ困難なケースが増加しています。
 厚生労働省の集計では、平成2 7年度中だけで全国で8 4人の児童が虐待によって死亡したことが明らかになっています。本年3月にも、東京都目黒区で5歳の女児が児童虐待によって死亡する事案が発生しました。「もうおねがい ゆるして ゆるしてください」平仮名で書いた両親への謝罪の文章に、だれもが胸が張り裂けそうな思いになったのではないでしょうか。なぜ、女児の命を救えなかったのか、しっかりと検証する必要があります。
 児童福祉司の国の配置基準に基づくと、東京都は11か所ある児童相談所に配置される児童福祉司の必要人数は合計363人になり、現人員から90人の増員が必要です。
 また、児童虐待に関する相談対応件数を見ると、2012年度の4,409件から16年度は12,677件と大幅に増え、実に約3倍となっています。児童福祉司の一人当たりの受け持ち件数は24.1人から56人に増え、2.3倍に達しています。児童福祉司の対応能力を大幅に超えているのはないでしょうか。受け持ち人数が多すぎて、対応しきれずに虐待死が起きることは絶対あってはなりません。国基準での人員配置の実現とともに緊急の人員増、人材育成を早急に対応すべきです。

 第二に、児童相談所の情報共有の問題と警察との連携についてです。
 わが党も残虐な傷害事件に発展するものや、児童福祉司自体が保護者の暴力などの被害にあうことも想定されることから、「必要」と考えます。都議会や本区の議会にも、児童相談所に寄せられた相談情報をすべて警察と共有する全体共有を求める陳情が提出されましたが、今定例会で都議会では全会派一致で継続審査となりました。警察に児童相談所の虐待相談のすべての情報を提供すると、取り締まりや監視など治安の対象となることから、相談や通告をためらう恐れもあるからです。相談の対応の結果、虐待に非該当となるケースが一定あることも考慮する必要があります。児童相談所には、虐待する保護者をケアする役割もあり、信頼関係の構築も求められます。すべての情報を警察に提供することが前提になると保護者との信頼関係の構築が難しくなる懸念もあります。ですから、厚労省や東京都などは全体共有について慎重な姿勢をとっているのです。また、警察が全件受け取っても結局リスクの高さを判断しなくてはならず、効果があるかどうかを究明する必要があります。

 第三に、特別区児童相談所の設置に当たって、都として人材確保・育成での積極的財政支援と運営についてです。
 法改正によって特別区でも児童相談所の設置が可能となりました。いま特別区では22区で児童相談所を設置するとしてその準備が進められています。そして、児童相談所にとって、専門職の確保は無くてはならないものであり、その点から、区の児童相談所の設置に向けて人材の確保・育成や財政面で、都の支援を求めることは当然であります。
 この度の虐待事件をうけて、小池都知事は、全庁横断的なプロジェクトチームを立ち上げて総合的な対策を進め、児童相談所の体制強化について専門職の増員と専門性の確保に取り組むことを表明しました。まず、やるべきことは、現場の児童相談福祉司を大幅に増やし、児童相談所体制の抜本的強化であり、東京都が引き続き広域的な役割を果たすことであります。
 よって、議員提出議案第12号、児童虐待防止対策の抜本的な強化及び拡充に関する意見書(国宛て)及び議員提出議案第13号、児童虐待防止対策の抜本的な強化及び拡充に関する意見書(都知事宛て)については、直ちに可決すべきです。

 以上の立場に立って、民主ネット、自民、公明、都民ファーストの会の共同提案の議員提出議案10号、11号の意見書案について問題点を述べます。
 それぞれの意見書の前文で「当該事案では、児童相談所と警察による情報共有や速やかな親権停止措置によって、その生命を救うことができた可能性がある」とし、また「いわゆる『事案の抱え込み』によって救える命が救えないという悲劇が二度と生じないよう」と、あたかも都の児童相談所が、警察との情報共有を行わず抱え込んでいたことが、今回の事件を防げなかったかのような判断をしているように思われます。しかし、「事案の抱え込み」という表現が一般的とは思えません。児童相談所の役割、警察の役割があるもとでの連携は必要ですが、今回の事件では、それが最も中心的な課題なのでしょうか。今回の事件では、東京都が掲げている課題は、転居の場合の児童相談所間の引継ぎと、関りを拒否する保護者への対応のあり方ですが、その検証こそが必要だと考えます。
 また、議員提出議案10号の記書きの2についてですが、「児童相談所と警察、区市町村および関係機関が虐待案件につき情報共有を徹底し、連携し対応する」としています。警察との「情報共有を徹底」するということには慎重にしなければならないと考えます。
 最後に、都児童相談所の区移管についてですが、移管という範疇では22か所の区の児童相談所はできますが、7つの児童相談所はなくなることを意味します。しかし、区の児童相談所ができたとしても、都の児童相談所としての広域的な役割もあります。また、今回の虐待死問題を受け、都の児童相談所態勢や機能強化を求めている時に、あえて移管問題を言うことがどうなのかどうか、様々なことを検討しなければなりません。いま児童相談所をめぐってどのような協議が、都区間でおこなわれているか、この間の経過などを踏まえて、慎重に対応する必要があります。

 よって、議員提出議案第10号、子どもの命を守ることを最優先にした児童虐待防止対策を求める意見書(国宛て)、議員提出議案第11号、子どもの命を守ることを最優先にした児童虐待防止対策を求める意見書(都知事宛て)については、以上の問題点があり賛同することができません。
 以上で討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。