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区議会質問
29陳情第12号、国民健康保険の都道府県単位化に関する陳情(討論) (儀武さとる)

2017年7月12日

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題となっています29陳情第12号「国民健康保険の都道府県単位化に関する陳情」について、不採択とすることに反対し、直ちに採択することを求め、討論をおこないます。

 この陳情は、国民健康保険の都道府県単位化(広域化)をすすめるにあたって、東京都が、試算した「納付金」「標準保険料」などの内容を明らかにすること。高すぎる保険料の引き下げのための国庫負担の増額と国保運営方針などで繰り入れ抑制のための圧力をかけないこと。差し押さえ強化を直ちに止め、社会保障制度としての国保制度を堅持し、都民負担の軽減を図るため、東京都に対し意見書提出を求めるものです。
 2018年度から国保の都道府県単位化がはじまりますが、2017年度は、都道府県・市町村がその実施準備する年になります。以下、記書きに沿って採択すべき理由を述べます。

 第一に、東京都の試算した「納付金」「標準保険料」をはじめ、都道府県化に向けた準備内容のすべてを直ちに都民に明らかにすることについてです。
 東京都は、試算した「納付金」「標準保険料」を都道府県化に向けた準備内容をいまだに明らかにしていません。その理由は、「正確な試算ができない」、「無用な混乱を招かないため」だとしています。しかし、北海道は2016年11月1日、埼玉県は16年12月27日、大阪府は今年の3月1日、三重県は3月21日に明らかにしています。
 埼玉県の試算した保険料は1.7倍、ほかの自治体でも大幅な値上げになる試算結果がでています。試算した保険料が大幅に増えるので、全国に衝撃が広がっているのです。
 区は、公表することは秋になると答弁しましたが、これでは議会や国保運営協議会でも十分な議論ができないし、区民の意見を反映させることができません。まさに、区民無視ではありませんか。区は、東京都に、ただちに公表することを強く要求すべきです。

 第二に、都として、現在の高すぎる保険料の引き下げのため、国に国庫負担の引き上げを求めること。また都として来年度保険料の引き上げをしないための財政措置を行うことについてです。
 わが党は高すぎる保険料については、繰り返し指摘していますが、ここ3年間の一人当たりの保険料の値上げは、前年度対比で2015年度が3,442円、16年度は4,644円、17年度は7,252円となり、3年間で15,338円もの大幅値上げとなっています。もともと国保加入者は、年金生活者や非正規労働者などの経済基盤の弱い方々で、加入世帯の約8割が所得は200万円未満です。所得は低いのに保険料が高い、国保の構造的問題だといわれる所以です。国保財政が厳しい根本的な原因は、国庫負担が引き下げられたことにあります。1980年代には50%を超えていた国保の総会計に占める国庫支出金の割合が、今では25%程度にまで下がっています。国庫負担の増額、来年度の保険料引き上げをしないための財政措置を行うことは当然であります。

 第三に、各自治体の「保険料軽減」などのための独自の繰入については、これを尊重し、国保運営方針などで繰入れ抑制のための圧力をかけないことについてです。
 わが党の森議員の一般質問に対して、区は「決算補てん目的としているのは約32億円であり、この全額が保険者判断によるものです。27年度の平均被保険者数で割り返すと、一人当たりの金額は36,682円となりますので、補填分をやめた場合の負担増の一例としては、この金額が相当する」と答弁しました。
 一般財源からの法定外繰り入れを止めると、保険料は36,682円も値上げせざるを得ません。今でも高すぎる保険料で、平成27年度の滞納世帯数は、22,158、収納率は約7割です。繰入れをやめると保険料を払えない世帯がもっと増えるのは必至です。
 2015年4月16日衆院本会議で高橋千鶴子議員の質問に対して厚労省は、新制度の導入後も国保会計への公費繰り入れについては「自治体でご判断いただく」と答弁しました。ですから、東京都が「保険料軽減」などのための区独自の法定外繰入については、これを尊重し、国保運営方針などで繰入れ抑制のための圧力をかけないことは当然であります。区も継続する立場を貫くべきです。

 第四に、都道府県特別調整交付金の一部を使った区市町村への「収納率向上」や「差し押さえ強化」を直ちにやめること。保険料滞納者に対しては、生活が成り立つような指導援助を勧め、強引な取り立て、差し押さえはしないよう指導することについてです。
 毎年の保険料の値上げで国保料を払いたくても払えない人が増えています。
 国保料の滞納者が増えたのは、「悪質滞納者」が増えたからではありません。それは貧困な加入者が多いのに保険料が高いという「国保の構造的矛盾」と貧困層・境界層への実効ある救済措置がないという制度の不備によって引き起こされたものです。そうした中で一律にペナルティを科しても、生活困窮者の苦境に追い打ちをかけるだけです。滞納者を一律に「悪質」と扱う発想をあらため、国保料の収納活動を貧困把握の"入り口"と位置づけ生活困窮者は積極的に減免制度や福祉施策につなげる方向へ、行政を転換するようにすべきです。

 ところが、委員会審査では、他会派は「願意に添えない」「負担の公平」などと言って、自民、公明、都民ファーストが不採択、民主ネット、社民は継続を主張し、継続が否決されると、不採択としました。
 「医療保険改革法」審議の際、厚労省が提示した資料よると、「平均保険料負担率」の比較があります。各医療保険の、加入者一人当たりの平均保険料を、加入者一人当たりの平均所得で割った「平均保険料負担率」は、市町村国保9.9%、後期高齢者医療制度8.4%、協会けんぽ7.6%、組合健保5.3%であります。市町村国保が最も重いのであります。負担の公平というのなら、ここを正すべきです。国民健康保険は、制度創設の時は、事業主負担がないので、国庫負担は医療費の6割を占めていたのです。それを歴代の政権が国庫負担を減らしてきたので、国保財政が悪化したのであります。ここにこそメスを入れるべきです。
 国民健康保険法第一条(法律の目的)に国保は社会保障に寄与すると明確に規定しています。同第四条では国の運営責任や都道府県の指導責任を規定しています。
 要するに、国保は「助け合いの制度」(=国民同士が負担し会う制度などではなく、「給付と負担の公平」(=給付に見合う負担を求める給付と負担の均衡論)との概念で捉えることは誤りであり、国が財政的責任を負い、お金のあるなしで差別されない制度であることは明確です。新制度での一般財源からの繰り入れは、政府答弁でも明らかですが、自治体の判断で可能です。ですから、継続すべきです。
 今こそ国と自治体が責任を持ち、住民の命と健康を守るために国庫負担の大幅増額をおこない、安定した国保財政にするべきであります。同時に区が一般財源を投じてでも保険料を引き下げるのは当然であります。

 よって、29陳情第12号「国民健康保険の都道府県単位化に関する陳情」は直ちに採択すべきことを強く求めるものであります。
 以上で討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。