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区議会質問
第13号議案、豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例と29陳情第6号、国民健康保険制度の改善と保険料の減額を求める陳情についての(討論) (儀武さとる)

2017年3月27日

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題となっています第13号議案、豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例について、可決することに反対の立場から討論します。尚、後ほど提案されます29陳情第6号「国民健康保険制度の改善と保険料の減額を求める陳情」について、不採択とすることに反対し、直ちに採択することを求め、合わせて討論をおこないます。

 第13号議案 国民健康保険条例の一部を改正する条例案は、来年度の国民健康保険料について、第1に地方税法と所得税法の改正に伴い保険料の所得割額の算定基準の見直しを行う、第2に基礎賦課額、後期高齢者支援金等賦課額、介護納付金賦課額の保険料率の改定を行い、合わせて保険料の減額関する規定を改めるとして提案されたものです。
 具体的に見ますと、基礎賦課額は所得割率が100分の6,68から100分の7,47へと0,79の引き上げ、均等割り額を35,400円か38,400円と3,000円もの引き上げ、後期高齢者支援金等賦課額の所得割率は0,06の引き下げを行うも、均等割り額は10,800円から11,100円と300円の引き上げとなります。また、軽減制度の拡充として軽減判定所得の基準額について48万円を49万円に、265,000円を27万円に引き上げるとしています。
 その結果、一人当たり保険料は118,441円と今年度より7,252円もの大幅値上げとなります。更に、介護分保険料の均等割額を14,700円から15,600円へと900円の値上げを行い、一人当たり保険料は、30,991円から33,186円へと2,195円の値上げとなります。
 では、今回の大幅な値上げで、いったい、どうなるのでしょうか。

 第一は、国保料の大幅な値上げが区民のくらしに重大な打撃を与えるからであります。この間の一人当たりの保険料の値上げは、前年度対比で2015年度が3,442円、16年度は4,644円、17年度は7,252円となり、3年間で15,338円もの大幅値上げとなっています。もともと国保加入者は、年金生活者や非正規労働者などの経済基盤の弱い方々で、加入世帯の約8割が所得は200万円未満です。
 2017年度、収入別・世帯構成別の保険料を試算したモデルケースによると、給与所得者65歳未満3人世帯と4人世帯の年収900万円を除く、すべての収入区分で値上げとなっています。特に、給与所得者65歳未満3人世帯、年収200万円では、227,227円から241,482円へと14,255円も値上げです。また、給与所得者65歳未満4人世帯、年収200万円でも199,927円から212,322円と12,395円の値上げです。この2つのモデルケースでは、実に収入の1割以上が国保料になるのです。また、給与所得者65歳未満2人世帯で、年収200万円、300万円の区分でも収入の1割以上の保険料を負担する世帯が増えています。これでは区民の負担増は限界です。
 委員会審査で区は、今回の値上げの要因についての私の質問に「被保険者数の減少と前期高齢者の医療費の増大が大きな要素を占めている」とし、また、1人あたり年間3,500万円もかかる超高額な薬価オプジーボが「医療費を押し上げる要因の一つ」と答弁しました。2月から薬価が半額になりましたが、医療費の適正化というなら薬価制度そのものにもメスを入れるべきであります。

 第二は、保険料の大幅上昇で滞納世帯が増加し、医療を受けられない区民がますます増えるのであります。
 高すぎる保険料により、保険料の滞納者が増えています。東京都の資料によると、13年度の平均国保加入世帯は62,437、滞納世帯数は23,011世帯、世帯割合は36.85%となり、実に3世帯のうち1世帯が滞納する深刻な事態です。区は、一定期間の滞納者に対して短期証、資格証を発行しています。16年6月1日現在では、短期証は23区中5位の5,349人、資格証は23区中4位の2,345人となっており、高止まりです。差押え債権は504件もあります。資格証になると、医療機関を受診した際、窓口で医療費の10割全額を払わなければなりません。保険料を払えず滞納している方が医療費10割全額を払うことができるでしょうか。当然、受診抑制になり、低所得者は安心して医療を受けることができない事態がうまれており、区民の医療を受ける権利が侵害され、国民皆保険制度が空洞化しているのであります。

 第三は、国保の広域化に向けて、一般会計から法定外繰り入れをなくすという事です。
 国保の広域化に向けて、23区では、来年度は、かつては一般会計から全額繰り入れていた高額療養費分の100分の75を保険料賦課総額へ算入します。今回の保険料の値上げ分、7,252円のうち高額療養費の部分は2,144円です。区は「今回は8%に抑え、大幅な値上げにならないよう配慮した」と言いますが、私が「残りの25%を賦課総額に算入すると18年度の保険料の値上げはいくらになるのか」と質したところ「1万円以上になる」と答弁しました。
 この間わが党が指摘してきたとおり、国保の広域化は、都道府県を保険者にすることで、国の責任を軽減し、市区町村の法定外繰り入れを廃止し、結局、区民の保険料の値上げになるのです。国保料が上がれば、払えない区民がますます増えることは、はっきりしています。

 この様な値上げ案に対し、「国民健康保険制度の改善と保険料の減額を求める陳情」は、「国や自治体による福祉政策の切り捨てが国保事業の運営を圧迫しており」、「憲法25条の精神に沿った国保制度に改善」することを求めて提出されたものです。
 陳情文では、「国民健康保険(国保)制度は、全国民が加入できる『国民皆保険』として国民のいのちと健康を守る大切な役割を果たしています。国保法第1条には『この法律は、国民健康保険事業の健全な運営を確保し、もって社会保障及び国民保健の向上に寄与することを目的とする。』と書かれ、国保制度が社会保障であることを明確に位置付けています。」と指摘しています。
 1984年以前は、国庫負担は国保会計全体の約48%だったのに対し、現在は20%前後です。また、自治体の一般会計繰入の削減など、国や区による福祉政策の切り捨てが国保事業の運営を圧迫している大きな要因であることは明らかです。ですから、陳情の記書きにあるように、第一に国保料の値上げをしないために国庫負担の増額を国に要請することは当然のことです。第二の国保料の値上げを抑えるために一般会計から繰り入れをおこなうのは、自治体本来の役割です。第三の短期保険証や資格証明書をむやみに発行せず、滞納者の実情をよくくみ取り、機械的な差押え等の滞納整理を行わないでください、という記書きですが、私たちのところに来る相談者は、生活保護基準以下の収入しかない方には、生活保護受給をすすめるのですが、「生活保護は受けたくない」自分で働いて暮らしたいとの理由で、70歳を過ぎても頑張っている人も少なくありません。払いたくても払えない高すぎる保険料のため、23区の中でも4位、5位に位置する資格証や短期証を発行している本区は、あまりにも冷たい区政です。また、保険料の滞納者500件以上差し押さえをおこなうと、東京都が、特別調整交付金3,000万円を出し、差押えを推奨していますが、なんとひどいやり方ではないでしょうか。 
 区民が医療を必要な時に受けられる制度にするために「国保は社会保障」「国民皆保険」の位置づけで、区や都、国はその役割を果たすべきです。
 ところが、安倍自公政権は来年度予算で、医療や介護などの社会保障の自然増分1,400億円も削減しようとしていますが、社会保障の切り捨てはやめるべきです。

 委員会審査では、他会派は「国保制度を維持するためには仕方がない」「負担の公平」などと言って保険料の大幅値上げに賛成しました。しかし、高すぎる保険料のため、医療を受けられない区民を生み出すことは「国民皆保険制度」に逆行していることであります。
 繰り返しますが、国民健康保険制度は、国民皆保険の理念のもと、高齢者や自営業者、失業者など経済基盤の弱い人々が安心して医療を受けられるためにつくられた制度です。財政投入しなくても良い、保険料は高くても仕方がないというのは、結局、国の責任と保険者である地方自治体の責任をなし崩しにするものです。保険料が高すぎて払えない人が増えれば皆保険ではなくなるのであります。
 今こそ国と自治体が責任を持ち、住民の命と健康を守るために国庫負担の大幅増額をおこない、安定した国保財政にするべきであります。同時に区が一般財源を投じてでも保険料を引き下げるべきです。
 よって、第13号議案「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について可決に反対します。また、29陳情第6号「国民健康保険制度の改善と保険料の軽減を求める陳情」は直ちに採択すべきことを強く求めるものであります。
 以上で討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。