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区議会質問
新ホール買入れ 反対討論(森とおる)

2016年12月10日

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、第98号議案「建物の買入れについて」、並びに、後ほど上程されます第99号議案「平成28年度豊島区一般会計補正予算(第7号)」について、可決に反対の立場から討論を行います。

 現在、旧庁舎、旧公会堂跡地を、民間事業者である東京建物、サンケイビルに76年6か月の期間、定期借地し、民間事業者が旧庁舎跡地に33階建て158mのオフィスビルとシネマコンプレックス等を建設し、同じ民間事業者が旧公会堂跡地に新ホールを含めた建物を建設するという計画が進められています。
 第98号議案は、旧公会堂跡地に建設される建物の面積10,605uのうち、区が新ホールとして、専有部分6,111uを区分所有権として、また共有部分2,808uのうち2,201uを持分として、全体の78%、8,312uを民間事業者から76億6,800万円で買い取るという契約議案です。支払い時期については2019年度の竣工後が予定されています。
 第99号議案は、これまで2019年3月とされていた新ホールの竣工時期が、1か月ほど伸びて、年度を超えて4月末になったために債務負担行為の補正として提出されました。
 この計画の大元にあるのは、新庁舎建設資金計画です。新庁舎を建設するにあたり、区長が「税金を使わない。借金をしない」と公言し、新庁舎整備費の不足分の保留床を購入するために、その当時は141億円でありましたが、その費用を捻出するために、旧庁舎跡地等を民間事業者に貸し付けて、その地代収入で賄おうというものでした。その収入額は191億円だったので、区は予定を50億円ほど上回ったので良かったとしています。
 わが党区議団は、区民の大切な財産である土地を民間事業者の儲けのために差し出すもの。税金を使わずに新庁舎を建設するというが、土地を使うことは税金を使っていることと何ら変わらない。また、不動産市況に委ねる資金計画は民間事業者に足元を見られかねないと警鐘を鳴らし続けてきました。その指摘通り、今や当初の資金計画が大きく悪化し、地代収入が激減し、新ホールの価格が激増したのであります。わが党区議団は、本年第一回定例会に提出された定期借地契約の議案に反対するなど、終始一貫した態度を貫いてきました。それは新庁舎を建設するためとされた資金計画の中身や、土地の活用方法などが、まさに大企業優先であり、区民にとって到底容認できない計画だからであります。
 以下、本議案に対する反対の理由を述べます。

☆まず第一の理由は、「新ホールは区民のための施設とは言えない」からであります。
 委員会で区は、「公会堂を利用していたのは、708コマのうち、区外利用者、企業、行政が多く、区民利用は5%もなかった」と答弁しました。これは、区民が使っていないのだから賑わいを創出するために来街者を呼び込むための劇場ホールにすることを正当化するための答弁に他なりません。そうではないでしょう。区は、これまで公会堂について、区民が使いやすいように申し込み方法を最優先するとか、使用料金を大幅に減免するなど、最大限の努力をしてきたとは言えないのであります。
 新ホールの使用料金は未だに明らかにされませんが、各地の既存の劇場をベースにするもので、公会堂をはるかに上回ることになります。申し込み方法についても、歌舞伎や宝塚に来てもらいたいと、区長がかねてから言うように、これまでよりも早い段階で、なおかつ長期にわたりワクが押さえられることになるなど、とても区民が入り込む余地はありません。予定している利用ワクについて確認すると、成人式、小中学校の音楽会等で年間10日程度とのこと。そうであるならば、これまで通り芸術劇場を使うなどすれば済みます。新ホールは、区民がいつでも気軽に使える施設ではなく、大変敷居の高い劇場だということです。
 区が、公会堂の代わりに準備をしているのは、新区民センターの8階と9階の2層につくるホールです。8階部分は、平土間で椅子が固定設置されておりません。必要に応じて6階にある倉庫からエレベーターを使って椅子を持ち運びしなければならず、時間と労力がかかります。また、新ホールに備えられる照明などの設備と違い、スポットライトや動かせる照明はなく、点けるか消すか程度です。新ホールに比べて設備面も、かけようとしている費用面も雲泥の差があるどころか、公会堂と比較しても見劣りするものと言わざるを得ません。

☆次に第二の理由は、「価格が適正とは認められるものでない」からであります。
 2008年の新庁舎整備方針では、公会堂建て替えの予定価格は17億円でした。しかも土地の定期借地期間は50年間で、地代収入は401億円。その収支の中に建て替え事業費は含まれていました。
 その後、2013年に公会堂は面積が2倍の劇場ホールに変更され、価格は50億円と増大しました。税金を使わないと公言した新庁舎建設が、税金を使わなければ成り立たなくなってしまったので、区は資金計画から新ホールを外してしまったのであります。しかも加えて、区民センター単体の建て替え計画が、公会堂の代わりのホールを組み込むために、築後20年の生活産業プラザと一体の新区民センターに変更して、これも資金計画から外してしまいました。他にも周辺区道整備、中池袋公園整備を新たに加え、民間事業者を呼び込むために、「現庁舎地の活用及び周辺整備」を策定し114億円もの税金投入を公表しました。
 2014年に区は、土地の定期借地期間を50年以上70年以下に大きく伸ばし、逆に定期借地料の目標額は新庁舎整備費と同じ141億円にすると激減させてしまいました。以前、私が指摘した「バナナのたたき売り」です。一方、新ホールは随意契約で、買取り価格は55億円に増額した上に、さらに共用部分にかかる費用は民間事業者から提案をもらうとして、先方の言い値に従うかのような大盤振る舞いに転じたのであります。
 こうした新ホール価格の激増とそれを取り巻く経緯が、きちんと区民に説明されてきませんでした。昨年末に開催された区民説明会で新ホールの価格の推移の説明はなく、資料にも掲載はありませんでした。今月、特集版の「広報としま」には国際アート・カルチャー都市のシンボルとして多数の図面を掲載しておきながら税金投入額については全く説明がありません。区は「紙面の都合」などと答弁しましたが、言い逃れでしかなく説明責任を果たして来なかったことは、清水議員が委員会で指摘した通りです。

 さて、予定価格税込み76億6,800万円は、11月7日に開かれた財産価格審議会で審査されました。その判断材料となったのは唯一、日本不動産研究所による不動産鑑定調査結果でした。税抜き価格71億円は、調査結果の75億1,000万円よりも低いというものでした。しかしながら、なぜ4億1,000万円もの開きが出たのかという肝心な点について、明確な答えは出なかったのであります。審議会に出席した私と垣内議員は「価格が適正であるとは認められない」と反対をいたしました。その後、本議案が議会に提案され、正副幹事長会を経て、議員協議会において、区から議案説明がありましたが、ようやく不動産鑑定の調査報告書が資料として出てきたのは12月2日の総務委員会でした。しかしそれも全てではなく抜粋というものでした。調査報告書には次のような記載がありました。「適用可能手法は原価法のみであり、適切に要因比較を行いうる取引事例を収集することが困難であることから取引事例比較法は適用せず、収益還元法も適用しない」というものです。先ほども述べましたが、調査報告書は財産価格審議会には出されませんでした。こうした事実がきちんと示されていれば答申結果は変わっていたかもしれません。
 区は、2014年3月に旧庁舎跡地等の民間活用と新ホール整備についてプロポーザル実施要項を公表し、この中に「新ホール要求水準書」を提示しました。これを受けて、2015年3月に区は民間事業者、すなわち東京建物、サンケイビルを選定し、その民間事業者から新ホール価格税抜き69億5,400万円と提案されました。今回、税抜き71億円へと1億4,600万円の増となった要因について区は、面積の変化であるとか、エスカレーターの増設など増額になった点や、逆に設備機器を見直すなど減額になった点を説明しました。ところが肝心の71億円に至った新ホール全体の仕様についてどうだったのか、積算した結果、総額がいくらになったのか、当然それらがあって初めて価格が適正なのか、適正ではないのか、判断ができるのです。その情報が開示されなくして価格が適正だとは断じて言えないのであります。

☆第三の反対理由は、「莫大な事業費でありながら財源が不透明であり、なおかつ、他にも財政負担を招く要因が多々ある計画」だからであります。
 平成になって28年です。区はその間に、総事業費が70億円を超えた投資事業については9事業と答弁しました。これらは豊島区政始まって以来の9事業と思われます。その中で土地の取得費が入っているのは「上池袋さくら公園整備」「三芳グランド整備」「アトリエ村建設」「生活産業プラザ建設」の4事業です。残りの5事業のうち国や東京都から補助がある程度、多くついたのは「健康プラザとしま建設」「東池袋四丁目第1地区市街地再開発事業」「南池袋二丁目A地区市街地再開発事業」の3事業です。土地の取得を除き、建物のみに対して区の持ち出しが70億円を超えたのは、「新庁舎保留床購入」と「池袋本町連携校建設」の2事業だけです。新ホールは過去3番目に高額だということです。
 それだけに今後の区財政に影響しないという、しっかりとした資金計画が求められるのです。委員会で財源について確認すると、公共施設再構築基金から半分の38億3,000万円、同じく半分を起債にするとのこと。これにより公共施設再構築基金は無くなるので新たな積み増しをしなければなりません。また起債については、20年の償還計画で将来負担にはならないと答えました。しかしながら、元金の支払いが発生するのは借り入れてから10年後以降であり、その時点における区の財政状況がどうなっているのか、この事業以外にも、今後、多額の投資事業が目白押しになっている中で償還計画の全体像がどのようになっているのかが明らかにならなければなりません。私は今後20年間の区全体の償還計画はどのようになっているのかを問いただしましたが、区は答弁できませんでした。来年度予算編成後には答えを出すということでしたので、早急に資料として出しいただきたいと重ねて申し上げておきます。
 問題点はこれだけにとどまりません。今後76年の間に、ホールは修繕や大規模改修が当然必要になりますが、その費用については試算をしていないということが明らかになりました。その理由は、建物全体が区の所有ではなく、民間事業者と区分所有になっているために具体化することができないというものでした。区分所有による弊害であると同時に、それを理由にした言い逃れです。修繕や大規模改修にも多額の費用がかかるということを区民に明らかにすべきです。その説明責任を果たさずに本議案を出すこと自体が間違いです。
 また、収支についても確認しました。ランニングコストは、水光熱費が平米あたりの単価が12,000円とされ、旧公会堂とほぼ同額とのこと。照明など省エネルギー化が進む一方で、エスカレーターやトイレ等の設置が増えたことによって単価が下がらないのです。面積は2倍に増えていますから費用も倍増です。年間の維持管理費等は1億5,000万円、事業費は1億7,700万円、人件費は9,000万円を見込み、合計4億円以上。公会堂は5,000万円程度でしたから数倍に膨れ上がります。
 方や収入については、「使用料、売り上げ等を策定中で精査中だ」とこれまで同様の答弁が繰り返されました。以前、区長が「黒字になるような事業ではない」と言い放ちましたが、議案を審査する時点で赤字額がどれだけになるのか、その費用をどう捻出するのかが、未だに先送りです。私がこれまで再三やるべきと言ってきた需要調査についても、区は必要性を認めながらも、いつ実行するのか明確にしようとはしませんでした。
 さらに私は、76年間の定期借地期間中に、需要が少なくなり、別の事業のニーズが出てきた際に、ホールの建て替えができるのかと確認いたしました。区は、「76年で区分所有の形態で契約したので全く想定していない。できない」という答弁でした。これも区分所有によるデメリットであり、76年間もの長きに渡り、民間事業者同様、区自らにも縛りをかけたことになるのです。
 区長は、これまで賑わいの創出、歌舞伎、宝塚だと思いを語ってきました。その賑わいが将来にわたり、安定して持続するのかという点についてですが、できなかった時に誰がどう責任を取るというのでしょうか。かつて区長は、「区の最高責任者である私にある」と言いましたが、実際に負担を被らなければならないのは、ほかでもない区民なのです。
 これまで述べてきたように、本議案の「建物の買入れ」にかかる莫大な費用だけでなく、大規模改修費であったり、収支による毎年の赤字額であったり、他に財政負担となるものを何ら開示していないということです。これはまさに将来に禍根を残す計画に他なりません。区長は区の財政運営について、ことあるごとに、「就任当時の財政状況は厳しかった。借金ばかりで貯金は全くなかった」と語りますが、私にはこの事業が同じ道を進もうとしているとしか思えません。繰り返し申し上げますが、後は野となれ山となれで困るのは区民なのであります。
 区は新ホールについて、国際アート・カルチャー都市のシンボルとして来街者を呼び込み、賑わいを創出するから経済効果がある。それが回り回って区民にも効果をもたらすと言います。今、区民が置かれている状況はどうでしょうか。アベノミクスにより大企業は大儲けをする一方、人間らしい雇用の破壊、増税、社会保障削減等によって格差と貧困が拡大し、区民の暮らしはますます深刻です。待てど暮らせどアベノミクスの恩恵は庶民には回ってきません。こうした中、区が最優先に取り組まなければならないことは、国の悪政から区民を守ることではありませんか。新ホールを取り巻く莫大な事業費のわずかばかりを、区民を応援する事業に振り向ければ、今日明日の生活に困っている多くの区民が救われるのではないでしょうか。本議案はアベノミクス同様、大企業優先の計画に他なりません。

 よって、第98号議案「建物の買入れについて」並びに、第99号議案「平成28年度豊島区一般会計補正予算(第7号)」について可決に反対いたします。
 以上、討論を終わります。