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区議会質問
【2016年度予算 本会議討論】(森とおる)
2016/03/15

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、
第38号議案、平成28年度一般会計予算、ならびに
第39号議案、国民健康保険事業会計予算、
第40号議案、後期高齢者医療事業会計予算、
第41号議案、介護保険事業会計予算の3特別会計に、反対の立場から討論を行います。

 安倍政権は、アベノミクスで企業がもうけを増やせば賃上げや雇用の拡大も進み、経済の好循環が起きるといってきました。ところが先月発表した政府の統計で、その根拠は総崩れとなっています。労働力調査によると、安倍首相がプラスに転じたといってきた正規雇用は、昨年10月から12月期で3,307万人、これは第2次安倍政権発足前の2012年同時期から23万人も減少しています。毎月勤労統計調査によると、実質賃金指数が前年を0.9%下回り、4年連続でマイナス。これにより賃金の伸び以上に、消費者物価が上昇しているということが裏付けられます。また、昨年10月から12月期の実質GDPは、前期比0.4%減、年率換算1.4%減となり、経済の好循環とはいえないことが、もはや明瞭です。
 そこへきて来年4月から消費税10%増税を強行するために、軽減税率などといって食料品などの税率は8%に据え置く方針を進めますが、税率が複数になる混乱や小売業者の負担増も予想されますし、何よりも国民にとっては1人あたり27,000円、1世帯あたり62,000円もの負担増です。このようなやり方は、アベノミクスの破綻に拍車をかけることにしかなりません。

 東京都においては、東京の将来像の実現に向けて積極果敢な施策展開を図る予算としていますが、その中身は、防災の名の下に住民を追い出し、商店街破壊などを強行する特定整備路線の予算を255億円も増やすことをはじめ、都市機能の強化、とりわけ幹線道路建設などを中心とした投資に力が注がれたものです。その一方、福祉の充実による生活の質の向上という立場が、編成方針の基本事項から外され、都民が切実に求めている、くらし・福祉を守る立場は、部分的前進はあるものの、全体としては極めて不十分であり、世界一の福祉都市の実現という知事の公約に照らせば重大な後退と言わなければなりません。
 豊島区の当初予算案は、一般会計は1,218億800万円、前年度に比べ104億1,200万円の増、特別会計を含めた予算総額は1,845億8,700万円、前年度に比べ120億8,800万円の増、3年連続で4会計すべての財政規模が過去最大です。区は、投資的経費の規模拡大の影響と、これまでの努力で財政構造が着実に改善したことに加え、好景気による一般財源収入の増収を見込めた結果で、財政調整基金の残高は200億円台に達する見通しとなり、将来の安定的な財政運営の確立に道筋をつけることができたとしています。

 今、区民のくらしは、安倍政権による消費税増税等による負担増と、相次ぐ社会保障の削減により、大変深刻な事態となっています。そこで日本共産党区議団は、本予算案について、
第1に、「深刻な区民生活を直視し、福祉を最優先にした予算になっているかどうか」
第2に、「大企業のための大型開発優先で、区民不在の街づくりになっていないかどうか」第3に、「将来に財政悪化をもたらす予算になっていないかどうか」
この3つの観点で予算審査に臨みました。

●まず第1の観点、「深刻な区民生活を直視し、福祉を最優先にした予算になっているかどうか」についてです。
【特別養護老人ホーム】についてです。
 区は、昨年2か所の特養開設で待機者はかなり解消するとしていましたが、昨年12月末の待機者は568人、Aランクは188人で増加しています。また特養に関する「新たな整備手法に関する報告」では2015年度の特養整備率を維持するためには今後156床を必要としており増設は待ったなしです。ところが区は、「Aランクの中にも在宅希望者がいる、過剰な投資、区外特養、グループホームの引き合いがある」と答弁し、区内増設に背を向けた態度です。区民から、「高齢者を区から追い出すのか」と怒りの声があがっています。区は、この間、区内増設に対し「土地が無い。土地が高い」と繰り返していますが、区長会でも国、都に対し用地取得補助の復活を求めています。区としても国、都に対し用地補助の復活を引き続き強く求め、区内増設を計画すべきです。

【保育園の待機児童対策】についてです。
 昨年4月の待機児童数209名に対し、今年は157名が見込まれています。認可保育園入所の一次選考がありましたが、相変わらず20点以上でも入ることができない子どもたちがいるのです。保護者は、「仕事を辞めたら生活できない」と、毎日、必死に保育園を探し続けています。区は、2017年度に待機児童を解消することを目標にかかげていますが、今、認可保育園に入りたくても入れない子どもに対する緊急策は不十分です。また、私立認可保育園の枠をこれまでの社会福祉法人から株式会社に広げましたが、きちんとした区の管理体制が必要です。保育士不足の問題にも積極的に取り組まなくてはなりません。区は、「私立と区立に差はない、スピーディーで熱意がある」などと答弁しましたが、自治体としての責任を明確にすべきです。そのためにはやはり、区立の認可保育園の増設が不可欠です。

【防災】についてです。
 救援センターの概算収容人員は、21,229人。人口28万人に対する収容人員数として7.6%で、23区でトップは北区46%、22位は目黒区12%、大幅に引き離されての最下位です。区は、「補助救援センター77か所に約13,000人収容できる」といいますが、いざ災害が発生した時に、開設するための判断を要し、それまでは避難することはできません。また、「自助で自家待機してもらい、食料等を取りに来てもらう」などと言いますが、どれだけの世帯で待機が可能だと言えるのでしょうか。救援センター増設の努力が必要です。この間、福祉救援センターの設置や要援護者対応に足を踏み出したことは一歩前進ですが、もっとスピードを持って取り組むべきです。
 また、【AED】普及の取り組みが他自治体に遅れをとっており、セーフコミュニティ国際認証都市として中身が伴っていません。自治会、町会単位で網羅できるように、早急に区が購入し支給する制度や、購入に対する助成制度を創設し、救命活動に本腰を入れるべきです。

【公契約】についてです。
 建築費の高騰により工事契約金額が異常なまでに上がっています。それだけに学校改築や公共施設の改築改修を優先し、不要不急の事業はやめるべきです。工事金額が上がっても、建設労働者の賃金は上がっているかといえば、必ずしもそうは言えません。今や、公契約条例を制定している区は4区に広がりました。検討中の区もあります。本区も、直ちに検討を開始し、区内労働者の条件向上に努めるべきです。

【買い物難民対策】についてです。
 商店街がシャッター通りとなり、近所に店がなくなり、特に生鮮三品の購入は難しい地域が増えています。「新庁舎が開設しても東通りの商店街は客が増えない」「20年、営業していた生協がなくなり周りに店がなくなった」など、ますます深刻です。区は、現状を正確に把握するためにしっかりした調査を行うべきです。まちづくりの際にも住民の声をよく聞き、安心して住み続けられるようにすべきです。そして答弁にあった、東京都の商店街買物弱者支援事業等を早急に導入するなどして、実効性ある買い物難民対策を進めるべきです。

【住宅】についてです。
 「家賃が高すぎる、公営住宅に入りたい」といった切実な声が区民から相次いでいる中、区が住宅施策の中で積極的に推進しているのが、リノベーションまちづくり事業です。「住みたい街、住み続けられる街へ」と、区内の空き家を活用して、民間主導の公民連携による街づくりを進めるというものです。昨年の実績はスクールを1回開催しましたが、32名の受講者中、区民は8名のみ。事業化は2件だけでした。そう簡単には進んでいないのです。それでも予算は今年度から200万円ほど増額し3,100万円も計上しています。それに対して家賃助成の予算計上はどうかというと、子育てファミリー世帯が1,670万円、高齢者世帯等住み替えが1,120万円とあまりにも低く、要件を緩和するなどの手立てはありません。住宅施策として積極的に進めるべきは、こうした家賃助成の拡充と公営住宅の増設です。その拡充なくして、持続発展都市とか、女性にやさしいまちづくりとか言いますが実現できません。

 本予算の中で大きく削られた最たる施策が【住宅修繕リフォーム資金助成事業】です。 2014年度に予算500万円で始まった本事業に多くの区民、建設労働者は期待しました。ところが、実績が、たったの3件209,000円にとどまったからと言って、今年度は予算285万円に減額、来年度はなんと68万円に大幅に削減してしまったのであります。以前の制度のように所得制限を撤廃するなど早急に改善すべきです。ところが区は、「相談が6件しかなかったので、広報やPRに問題がないか究明中である、様子を見る、他にも様々な施策をやっている」などと無責任な態度に終始しました。他区では100件を超えて実施しているところが3区もあるのです。要はやる気が全くないのであります。建設労働者の仕事が増えることで経済波及効果も大いに期待できるのです。

 43年間の歴史を持つ【知的障害者の日曜教室つばさクラブ】の中止された宿泊学習の存続を、わが党は求めてきました。今年度、利用者と家族の声に応えて復活実施したことは評価に値します。しかしながら、来年度の日曜教室の募集において、重要事項説明書に不適切な表現、内容が含まれていたことは看過できません。障害者差別解消法が4月から施行されようとしている中、このような状況が発生するなど重大問題です。傷ついた利用者、その家族が納得するまで、きちんと謝罪し、内容を根本的に改めるべきです。

【子どもの貧困対策】についてです。
 子どもの貧困が社会問題となっています。本来だれもが等しく成長し学ぶ権利を保障されるべきですが、安倍政権のもと格差と貧困が、子ども達に影を落としています。小学校、中学校入学にかかる費用の工面に、大変苦労をしている家庭が増えています。消費税増税と物価の上昇が相まって深刻な事態となっています。こうした中、【生活保護】世帯への給付を安倍政権は、この3年間で大幅に削減しました。特に母子世帯へは一番影響が出ているのであります。塾代の補助が出るようになるなど前進面はありますが、今こそ削減した法外援護の復活が求められているのです。昨年の決算委員会で渡辺議員に対して区長は前向きな答弁をしていましたが、何ら予算計上はありませんでした。
【教育費の私費負担】軽減についても、区は、これまでの行革でバッサリ削り、一向に復活しようとはしません。義務教育は無償の原則にのっとり直ちに復活すべきです。【就学援助】制度は生活保護基準額の1.2倍に設定されたままです。この間、わが党の指摘で生活保護基準の引き下げに連動させずに来ました。教育委員会は、結果的に実質1.27倍になっていると言います。しかし、消費税引き上げ、物価の高騰、子どもを取り巻く環境は、いっそう深刻になっているのであります。大幅に基準を引き上げるべきです。
【子どもの医療費】拡充についてです。独自助成をおこなう自治体に対し国庫負担金を減額するペナルティーを課しています。その額は全国で115億円、豊島区は2,800万円と答弁がありました。法人住民税の国税化拡大同様、国の横暴です。全国市長会が国に要望をしているから良しとせず国が断念するまで戦うべきです。また、区の拡充に対する答弁は、「色々ある施策の中で優先順位」とありましたが、子どもの貧困対策として、子どもたちの命と健康を守る立場として最優先に取り組むべきです。

 以上、述べたように、深刻な区民生活を直視し、福祉を最優先にした予算になっていないのであります。

●次に第2の観点、「大企業のための大型開発優先で、区民不在の街づくりになっていないかどうか」についてです。
 本定例会に旧庁舎跡地と公会堂敷地を、東京建物とサンケイビルに76年6か月の期間、定期借地し、地代191億円を一括前払いで受け取る議案が提出されました。地代191億円に関しては、不動産鑑定を2社に依頼したところ139億円と146億円だったとして、最大限、土地のポテンシャルを評価してもらったとしています。しかしながら、2008年の整備方針で区は、50年で401億円の地代としていました。1年あたりの地代収入に換算すると、8億円が2億5,000万円へと31%に激減したのであります。私が、この事実を突きつけても区は、時代の変化だとか、25年分前払いと一括前払いとは受取方法が違うなどと言い訳に終始し、まともに答えることはできませんでした。
 また、契約内容について、相手が破綻・倒産した場合に借地料を返還しなければならなくなった際に、どのような対抗措置があるのか、オフィスタワーが競売にかけられた際に、相応しくない事業者が参入してこないような対策は取られているのか、私が問いただすと、区は、「191億円を出せる企業であり破綻して地代を返すことは万が一であり稀である。そのようなリスクを含めると契約が成り立たない」などと答弁しました。シャープの買収が取りざたされ、リーマンブラザースの破綻が現実に起こった中、76年もの間、区財政に対する悪影響、それを区民が背負わなければならない懸念が、ずっと続いていくことになるのです。何と無責任なことでしょう。
 区は、生活産業プラザと一体化する新区民センターの改築費用を2013年に示していた44億円から、66億円に増額しました。生活産業プラザは、まだ築20年で大規模改修の時期ではありません。公会堂跡地に新ホール、すなわち劇場ホールをつくるため、公会堂の代わりとして、新区民センターの8階、9階部分に500席、平土間の多目的ホールをつくるためにはスペースが不足するので、生活産業プラザと一体化させるために、大規模改修を早めたのです。新ホールをつくらなければ必要のない税金投入です。区は、生活産業プラザの1階は受付だけであり、地下も使いにくく、早急に改修が必要だと答えました。そうだとするならば、新区民センターの設計はどうでしょうか。入り口の1階から3階は見た目重視の吹き抜け、使い勝手の良い低層階はコスプレイヤーのためのフィッティングコーナー、パウダーコーナーと、35ブースの女性用トイレです。これがパブリックと言えるのでしょうか。また需要が無かったり、経年して需要が無くなったりした際は、それこそ簡単に改修できず、多額の費用がかさむことになります。一方、公会堂の代わりとされる多目的ホールは最上階の8階です。大道具小道具の搬入や、500人の利用者にエレベーターの容量が十分なのか心配されます。
 新ホールにおいても、2013年の50億円から昨年75億円に増額していました。これにより、周辺区道整備と中池袋公園大規模改修を含めた、旧庁舎跡地及び周辺整備の総事業費は114億円から158億円へと44億円も膨らむことになりました。これは2010年の新庁舎整備推進計画時の区民センター単体の建て替え費用22億円と、公会堂建て替え17億円の合計39億円と比べると100億円を優に超える増額です。区は、この税金投入について、国際アートカルチャー都市の顔となる文化にぎわい拠点の創出と説明しています。
 区は、新庁舎を整備するにあたり、区所有の資産を活用するので、新たな借金をしないと言ってきました。その中身は、旧日出小学校跡地等の6割を占める区有地と、4割の民間の土地に、市街地再開発事業で、分譲マンション、商業施設の再開発ビルが建築され、その中に区有地の土地分が権利床に、不足している分が旧庁舎跡地を定期借地して得られる地代で賄われ、新庁舎が整備されました。賄われた額は旧庁舎の解体費用等を含めると約141億円です。区は、定期借地地代収入が191億円になったので大きくプラスになったと言います。しかしながら大企業を誘致するために、旧庁舎跡地及び周辺整備に158億円もの税金投入です。この税金投入なくして新庁舎整備はありえなかったのであります。しかもその内の新ホール整備費75億円は実際に東京建物、サンケイビルに支払われるのであります。区民の大切な財産である旧庁舎跡地を大企業に差し出すだけにとどまらず、大企業を誘致するために莫大な税金投入、これが実態なのであります。

 【池袋駅東西デッキ】は、これまでに整備に関する調査、基本計画検討に5,000万円以上を投入しました。JR東日本と西武鉄道に調査名目で支払った額が含まれます。同様に来年度も5,000万円が予算化されています。これらの税金が具体的に何に使われたのかを確認しても、区は民間事業者の土地に関わることなどと言って、調査結果を明らかにしようとはしません。建設コストについては、これまで平米あたり150万円から200万円と言っていたのが、200万円から300万円へと跳ね上がることが新たに判明しました。未だに総事業費は答えようとせずに、鉄道事業者や商業施設といった民間事業者と、公共事業の区分けの条件も曖昧なままです。私が、全てが区の持ち出しとなるのではないかと問いただすと、否定もしませんでした。公共事業としての条件は、デッキの両端が接道していることです。ところが両端にあるのは、JR東日本と西武鉄道のビルなのです。にもかかわらず、池袋の回遊性、地下通路の混雑解消、災害時の避難のためなどと理由をつけて、大企業のデッキに税金投入するなど認めることはできません。

【木密地域不燃化10年プロジェクト】の特定整備路線についてです。都は、道路にかかる権利者の数を公表せず、補償についても未だにあいまいにするなど質疑で無責任な態度が改めて浮き彫りになりました。儀武議員が、借家人の転居対応、従前居住者対策、無くなる児童遊園の問題等を厳しく指摘すると、区は、「立ち退きに対する施策を広げる、児童遊園の代替地を見つけたい」と答弁しました。さらに区が積極的かつ責任を持って住民の声に応えるべきです。こうした現状で2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに完成させるなど、あまりにも強引であり、まさに住民追い出しです。これに同調し、区が一緒にやっていくなど大問題です。

 このように大型開発を進める中、区民にとって身近な【公園、児童遊園の管理】はどうでしょうか。
 公園等の整備費は造幣局跡地、南池袋公園、中池袋公園、旧高田小が予算化されていますが、他の公園、児童遊園の整備費予算は今年度より削減されています。雑司が谷中央児童遊園は「トイレが汚くて使えない」との区民の訴えに、区は「築45年で老朽化しているが改築はしない。トイレは近隣の公園の紹介を」としています。渡辺議員に対し、区は、「『行財政改革プラン2004』で旧高田小の公園化時に存廃を決める方向だから改築はしない」と答弁しました。財政難を口実にバッサリ削った、区民にとって必要な予算は復活しないのであります。
 現在の公園の清掃管理は住宅街では週5日しか実施しておりません。雑司が谷1丁目公園で起こった健康遊具の事故等、区民に身近な公園等の整備は待ったなしです。区は未来戦略推進プラン2016でも緑と環境を強調していますが日常の整備の拡大と合わせて、区内の全公園、児童遊園の調査を行い必要な改修に取り組むべきです。

 このように、大型開発には莫大な税金投入、一方、身近な公園、児童遊園の管理はおざなりで放置するなど大問題です。

●続いて第3の観点、「将来に財政悪化をもたらす予算になっていないかどうか」についてです。
 基金と起債について述べます。今年度末の財政調整基金の残高は209億円、来年度末は229億円が見込まれています。区はこれまで、「23区の中では少ないから」と言って積み増ししてきましたが、区の目標額120億円を大幅に上回り、他区と比較しても少ないという、これまでの言い分は通用しません。区は今回の予算を財政調整基金の取り崩しを行わなかった予算と位置づけていますが、私が、大幅に基金を増やした予算ではないかという指摘に対し、区長は否定をしませんでした。今後、積み増しするのであれば、いつまでに、何のために、どれだけ増やすのかといった新たな目標や、取り崩すのであれば、いつ、何に、どれだけの額を充当するのかを明らかにすべきです。私がこの点について質したところ、「来年度に示す」の繰り返しで、まともに答えられませんでした。
 起債すなわち借金については、114億1,200万円で当初予算案では初めて100億円を超え起債依存度は9.4%となりましたが、それ以降は抑えるというだけで具体的な将来像は示されませんでした。
 区は、わが党の資料要求に対し、「当面する5か年の投資的経費の概算想定」を作成しました。総額969億円です。その中に占める旧庁舎跡地及び周辺整備158億円は16.3%ですが、ここで問題となるのが財源です。158億円には国や東京都の補助は一切なく、全てが一般財源からの持ち出しです。その他の事業は、学校改築、造幣局跡地防災公園整備、市街地再開発事業、居住環境総合整備事業、不燃化特区、橋梁など、多くの事業に国庫補助や特別区財政調整交付金がつくのです。私は、事業別に財源を明確に示した資料を要求しましたが出てきませんでした。しかし質疑で158億円の内訳については明らかになりました。一般財源は33億円、公共施設再構築基金の取り崩しが33億6,200万円、起債が91億3,300万円とのことでした。旧庁舎跡地及び周辺整備158億円が、投資的経費の一般財源に占める割合が大きくなる事は間違いありません。私が起債の償還計画を問いただすと「10年から20年、借り換えなどもあるが、今は確定していない」などと無責任な回答に終始しました。また、公共施設再構築基金の現在の残高36億円が、ほとんどが使われてしまうことについて、今後の積立計画も明らかにできませんでした。

 当面する5か年の投資的経費の概算想定には、区民から要望の強い特養ホームや、区立認可保育園、公営住宅等の建設費は入っていません。身障センターの改築改修費用や、さらに老朽化する学校や公共施設の改築改修費用もかかります。大型開発の東西デッキも入っておりません。昨年、池袋駅周辺地域が【特定都市再生緊急整備地域】に指定されましたが、民間事業者の開発行為が公共貢献として認められると、公的補助や税金の優遇措置、建築条件の緩和等が受けられるようになるというもので、東西デッキにおいても活用される可能性が出てきているようです。池袋駅西口再開発等が本格化すれば道路整備費用など新たな税金投入も出てきます。歳入面においても、人口増や課税人口増がいつまで続くのか、都区財調が今まで通り保障されるのか、法人住民税の国税化の拡大などの問題があるのです。
 これらの問題が今後の区財政にどのような影響を及ぼすのか、また悪影響にならないという明確な根拠が、数字に示されていない予算なのであります。はっきりしていることは、財政悪化をもたらさないために一切の無駄遣いはできないということであります。
 私は、【新ホール75億円、周辺整備を合わせた158億円】の税金投入は、いかに区民に還元されるのかが問われると質しました。区は、「公会堂とは異なり文化芸術の拠点となる。なおかつにぎわいの創出となる。お金を落とす、観光が増えることで経済効果が生まれる。それが回りまわって様々な産業に循環をしていく」などという答弁がありました。その発想はまさに、アベノミクスの三本の矢でありトリクルダウンです。大企業が儲かれば、回りまわって庶民にも還元されるという筋書きでした。しかし、待てど暮らせど回ってこないのが現実です。文化というのであれば、池袋駅東口に一局集中させるのではなく、豊島区全体に広げていくことが大事です。この税金投入は文化や芸術を名目にした無駄遣いそのものです。
 旧庁舎跡地を区民のために使えば、投入する税金のほんの少しを福祉に振り向ければ、国の悪政から区民を守ることができるのです。特別養護老人ホームや認可保育園を建設すれば、待機者、待機児を減少することができます。国民健康保険料を減額すれば、国の悪政にあえぐ区民負担を軽減することができます。これらは一例ですが、こうした事業を展開すれば家計を支える一助になるのです。

 高野区長は、就任当時の区財政を振り返り、「バブルがはじけたのに、その延長で起債を発行していた。基金なんて全くなかった」と繰り返します。しかし、区民にとって大切な施設ができたのも事実です。この間、児童館、ことぶきの家、出張所を廃止し、今後は劇場ホールなど大型開発を進めようとしています。これが高野区政のビルドアンドスクラップの実態です。行革の名で、区民の福祉、教育をバッサリ削りながら、強引に借金を減らして基金を溜め込む、その上で大型開発に突き進むやり方は、まさに区民不在であり、将来に財政悪化をもたらす予算に他なりません。

 以上、3つの観点で審査しました。中には学校トイレ改修を早めるなど、わが党が長年にわたり要求し、実現したものがあります。しかし区が力説している、「福祉、子育て、教育、防災、治安などに重点を置き、安心して住み続けられるまちの創造に向けた施策の充実に最優先に取り組んだ内容」であることは認められず、区民の立場に立った予算ではありません。よって、一般会計予算に反対します。

 次に3特別会計について述べます。
【国民健康保険事業会計】についてです。
 来年度の国保料は、1人あたり4,644円の大幅値上げで111,189円となります。給与所得者65歳未満4人世帯の収入200万円では16,359円の値上げで208,747円となり収入の1割を超える区分の世帯が、また増加します。このように毎年の値上げ、社会保障切り捨て、相次ぐ負担増で区民のくらしは限界です。本区の滞納世帯は36.7%、23区最高、資格証発行割合は3位、なんと区民に冷たい区政でしょうか。国保料値上げの要因の一端が、国が2018年に導入を狙らっている国保の広域化です。後期高齢者医療制度同様に、自治体の責任がますます無くなり、区民の切実な声がいっそう届かなくなるのです。国と自治体が住民の命と健康を守るために、国庫負担の増額、区の一般財源を投入し、負担軽減すべきです。

【後期高齢者医療事業会計】についてです。
 2016年度から2017年度の保険料は均等割りが42,200円から42,400円と200円の増、所得割は8.98%から9.07%と0.09%の引き上げです。結果、2人世帯で年金収入168万円以下の所得階層までは据え置きとなりました。これは保険料抑制のため財政安定化基金交付金145億円の取り崩しと、62区市町村の一般財源から支弁する特別対策の継続によるものです。低所得者が据え置きになるとはいえ高齢者にとって保険料は高すぎます。
 ところが区は、昨年3月末現在、短期証発行は21件、しかし23区中4区は発行しておらず、これは区の裁量とのことです。更に今年1月には2件の差し押さえまで行っています。区は保険料の徴収強化に躍起になっていますが、そもそも高すぎる保険料が問題なのです。年金削減であえいでいる高齢者にとってはあまりにも過酷です。
 厚労省の発表によると、2014年度の「後期高齢者医療制度」財政状況は、5,374億円の黒字が明らかになりました。これらを活用して保険料の引き下げを国に強く求めるべきです。

【介護保険事業会計】についてです。
 この間、安倍政権の下、介護保険制度の全面改悪が行われ、昨年4月から介護報酬引き下げ、8月から利用料の引き上げ等で、利用者、介護保険事業所は大きな負担を強いられています。そして本年4月から要支援を保険給付から外す新総合事業が始まります。区は、新総合事業に移行しても、報酬単価等は現在の国基準で行い、専門家の係わりを含め基本的には現行サービスを継続するとしています。しかし、第7期事業計画がどうなるのか等、大変不安です。また安倍政権の下で、今度は要介護1、2を保険給付から外すという更なる改悪の方向も示唆されております。さらに介護職員の処遇改善も待ったなしの課題です。高い保険料は強制的に徴収され、必要な介護は受けられない。まさに「保険あって介護なし」です。来年度の経過を踏まえ、区民への必要な介護を提供できる制度の構築を進めることを強く要望するものです。

 以上、3特別会計に反対することを述べ、討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。