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区議会質問
豊島区の中学校にふさわしい教科書選びについての請願討論(かきうち信行)
2015/07/03

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、27請願第5号 豊島区の中学校にふさわしい教科書選びについての請願について、子ども文教委員会の報告どおり継続審査とすることに、賛成の立場から討論を行います。

 本請願は、今年夏に行われる四年に一度の中学校教科書採択にあたって、その責任と権限を有する教育委員会に、最大限配慮を求めたいと願い、豊島区議会のご指導を衷心より期待するとして、具体的には8項目の観点から公平公正な対応を求めるとして、提出されたものであります。
 請願者は、豊島区西池袋在住の教育問題懇話会豊島区世話人代表の 中矢忠男さんほか1名です。
 紹介議員は、子ども文教委員会に所属以外の自民党議員10名、公明党議員2名、そして無所属の小林弘明議員の計13名であります。

 今、安倍政権が、「海外で戦争する国づくり」への暴走を続けるなか、これとあいまって、ゆがんだ歴史認識を持ち込む教科書採択に向けて、政治家が絡んだ動きが活発化しております。
 教育委員会の制度が変わったことを利用して、首長や一部の議員の意見を教育委員会に反映させ、「育鵬社」「自由社」の新しい歴史教科書の採択を狙っているのです。
 「育鵬社」「自由社」の教科書は、戦前の大日本帝国憲法は高く評価する一方、現行憲法を敵視し、改憲へ誘導しています。
 日本国憲法がうたう基本的人権では、現行教科書にあった「憲法に保障された権利と自由が次の世代にも受け継がれるように努力しなければなりません」の文言は削除。教育・勤労・納税を「国民の義務」と強調し、脚注では、「多くの国の憲法では国防の義務を課している」と新たに挿入しました。
 また、「平和主義」の単元では、記述の大半を自衛隊に割き、他国の憲法を引きながら「国防の義務」を強調。自衛隊には違憲論もあると述べていた脚注は削除しました。
 「集団的自衛権」は、「同盟関係にある国の防衛を支援し、おたがいに協力しようとする権利」と述べ、現行本の「自衛」の表現を「防衛」に書き換えました。「平和主義と防衛」の単元を挿入し、コラム「沖縄と基地」のなかで、「日米安保体制は日本の防衛の柱であり、アジア太平洋地域の平和と安全に不可欠」と記述。住民の苦悩や基地撤去を求める運動には一切触れず、「普天間飛行場の辺野古への移設などを進めています」と、安倍政権の主張を伝えています。
 「公民」とは「公の一員として考え、公のために行動できる人」だと述べ、前回以上に「公」を強調。改悪教育基本法を反映させ「愛国心」を太字で示し、右傾化を強めています。
 歴史は、育鵬社、自由社ともに、侵略戦争を美化し“日本は正しい戦争を行った”とする認識を子どもたちに持ち込むものです。わが党は、教科書検定に通ったとはいえ、未来を担う子供たちに、このような教科書を使って教育することは絶対に許せないのであります。

 さて、本請願について、審査に先立ち、請願者から意見陳述がありました。
 陳述を行ったのは、一人が請願者の中矢忠男さん、そしてもう一人が練馬区在住の空花正人さんであります。
 あとで調べて判ったことですが、空花氏は、新しい歴史教科書をつくる会の東京支部に所属し、その教科書採択に熱心に活動しているだけでなく、漫画はだしのゲンを図書館から追放する運動にもかかわってきた人です。

 意見陳述に基づく質疑で、私は、第一に、教育問題懇話会のというのは、どういう組織で、どういう活動をしているのか。第二に、今回の請願提出にあたって、紹介議員になっていただいた背景、第三にどういう教科書が望ましいと認識されているのか。そして第四に、請願の記述に沿って、順次質問してまいりました。
 その中で、中矢氏は、私の質問に対し、「私たちがいいと思う教科書を採択する形でお力をいただきたい」と自民党、公明党に相談して紹介議員となっていただいた旨を述べ、その教科書は「自由社」の新しい歴史教科書であることを明確にのべたのであります。
 請願では、議会の教育に対する不当な介入には、一切無関係であることを確認しておく。とありますが、特定の教科書採択を狙ったものであることが明らかであります。

 さらに、本請願は、これまでの教科書採択のあり方が、あたかもおかしいやり方だったともとれる内容になっています。
 それは、教育委員会が遵守すべき事項について、教科書調査員により順位づけされた教科書を選ばないこととか、また、教職員の投票によって選ばれた教科書を無批判に追認しないこと。とか、学校現場が混乱するなどの理由で、同じ教科書を採択し続けるようなことはしないことなどと、あたかも、過去の教科書選定にあたって、こうした事例があったかのように描いています。
 これについては、教育委員会は「そういうことはない」と明快に答弁しています。

 以上述べてきたように、この請願は、議会の議論を介して、特定の教科書採択をするために教育委員会に圧力をかけるものにほかなりません。
 よって、わが党は、このような請願を採択することは、断固反対であることを表明しておきます。
 委員会では、自民党は、この請願について会派で結論を経て審査に臨んでいることから採択を表明しました。民主ネットが、最終的に継続審査を主張したのに続き、請願の紹介議員になっていた公明党は、請願者の意見陳述から総合的に判断したとして、継続審査を表明しました。
 私は、継続審査が否決されることになると、自民党のみでも採択されることになるため、絶対に採択を許さない立場から継続審査としました。
 採決の結果、継続の賛否が同数のため委員長採決となり、結果、継続審査になったのが委員会の結果であります。
 継続審査になった以上は、このような議会を通して教科書採択に圧力をかける本請願は、直ちに取り下げるよう強く求めます。
 そして、教育委員会におかれては、こうした動きや特定の教科書採択のための政治介入に屈することなく、公平かつ子供にとって最もふさわしい教科書について採択されることを求め、私の討論を終わります。