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区議会質問
国民健康保険制度の広域化撤回を求める意見書提出および国民健康保険料の区独自の減額制度創設を求める陳情について(討論)(儀武さとる)
2015/07/03

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題となっています27陳情第8号「国民健康保険制度の広域化撤回を求める意見書提出および国民健康保険料の区独自の減額制度創設を求める陳情」について、不採択とすることに反対し、ただちに採択することを求めて討論をおこないます。

 5月27日「医療保険制度改革関連法案」が可決され、消費税増税は社会保障の拡充に充てるとしていたにも拘らず、医療、介護、年金などの社会保障制度の切り捨ての具体化、国保の広域化が2018年度から実施されることになりました。
 この陳情は、国保の広域化では、保険料の値上げや徴収強化に追い立てられることになるので、国に対して広域化撤回を求める意見書を提出すること、区に対しては、独自の保険料減額制度を創設することを求めるものであります。

 いま、国保制度は社会保障・住民福祉として再建するのか、それとも、負担増と徴収強化の路線を継続・拡大するのか、大きな分岐点に直面しています。
 国保加入者は、年金生活者、自営業者、非正規雇用者などで構成され、その8割が年収200万円以下の低所得者です。それにもかかわらず毎年、国保料が値上げされ、保険料を払いたくても払えない滞納者が増えています。
 ところが区は滞納者に対して短期証、資格証を発行し、5月31日現在では、短期証は3951人、資格証は2539人となっています。これらの発行数は23区中で常に2位から3位と高位を占めています。
 資格証になると、医療機関を受診した際、窓口で医療費の10割全額を払わなければなりません。保険料を払えず滞納している方が医療費10割全額を払うことができるでしょうか。当然、受診抑制になり、低所得者は安心して医療を受けることができない事態がうまれています。事実上、区民の医療を受ける権利が侵害され、国民皆保険制度が空洞化しているのであります。

 区は、6月18日に当初賦課決定通知書を65825通送付しましたが、わずか4日間で1408件の問い合わせが殺到しました。その主な内容は「収入は増えないのになぜ昨年より保険料が高いのか」「保険料の算定方式を知りたい」などです。
 消費税増税、円安で物価がどんどんあがるなかで、保険料の値上げに悲鳴が上がるのは当然です。
 委員会審査で、国保料の収納率が71%という事が明らかになりましたが、約3割の加入者が保険料を払いたくても払えない状況という事です。
 区は私の質問に対して、今年度から委託業者が訪問催告をはじめ、収納率をあげると答弁しました。しかし保険料の収納率が悪いと、徴収に駆り立てられることになり、特に委託業者だと実績をつくるために徴収強化にますます走ることにつながりかねません。また、区は保険料滞納者の給料や預金の差し押さえもおこなっており、私も、実際に相談をうけましたが、差し押さえで生活ができなくて、知人などから借金をして1か月間凌いだと訴えられました。
 国民健康保険は、国保法第1条で「社会保障及び国民保健の向上」を目的とし、区民に医療を保障する制度です。その制度が、高すぎる保険料により区民の生活苦に追い打ちをかけ、人権や命を脅かすことなどあってはなりません。 
 そもそも、高すぎる国民健康保険料の主たる理由は、国庫負担を次々と削減し、国保加入者に負担を押し付けてきたからです。そのため23区は一般財源から国保会計へ繰入をおこない、保険料を抑えてきたのであります。

 さて、陳情者が指摘している国保の広域化についてです。
 政府は、国保制度の安定化を図るためとして、国保の広域化により都道府県が財政運営を担い、都道府県による国保財政の管理、病床削減、給付費の総額管理の下で、都道府県の「標準保険料率」の提示に基づき区市町村で保険料を決めることになります。区は、資格管理や保険給付、保険料の徴収などを担うことになると説明しました。
 私が国保の広域化で「保険料は下がりますか」と質すと、区は「下がるとも上がるとも言えません」と答弁しました。しかし、この間わが党が指摘してきたとおり、2018年度からの広域化導入に向けて、2014年度から段階的に高額療養費分の区の繰り入れ分を賦課総額に算定するようになりました。今年度、本区では区の繰り入れを5億円削減し賦課総額に算定、結果、保険料が大幅に引き上げられたのであります。さらに今年度の国の「保険者支援金」もそのまま区の一般会計に繰り入れられました。
 これらを見ても国保の広域化で保険料が下がることはあり得ません。委員会審査で区は、一般会計から国保会計にこれ以上「多額」の繰入はできないと繰り返し言っていますが、これでは今後も保険料が上がり続けるのは必至であります。まさに陳情者が指摘しているとおり、広域化で保険料が大幅に上がるという事であります。広域化は撤回すべきであります。

 国保制度は社会保障制度であり、区民に医療を保障する制度です。ところが高すぎる保険料で命を脅かすことになっているのであります。先ほども話しましたが、今年度から委託業者が訪問催告を行います。本来、区の職員が訪問し、区民の生活実態をつかみ、対応すべきであります。低所得者の約3割が保険料を払いたくても払えない状況があるのですから、親身に相談に乗って減免措置や福祉制度を適用していく”最初の窓口“ともなりうるものです。滞納者をぎゅうぎゅう締め上げるのではなく、生活に困っている人を救済する収納対策に根本的に転換すべきであります。低所得者に対して、わが党は繰り返し独自の減免制度の創設を求めてきましたが、区は全くやる気がありません。区民が安心して医療を受けられるためには、陳情項目にあるように区独自の保険料の減免制度の創設は待ったなしの課題であります。

 ところが、委員会審査では、与党は「一般会計から国保会計に32億、33億円も繰り入れている、これ以上の繰入は、他の区民との公平性が確保できない」「持続可能な制度にするためには広域化はやむを得ない」「医療費が毎年1兆円増えている、今やらないとバンザイする」など繰り返し主張し、陳情を不採択にしました。

 安倍自公政権は消費税増税、社会保障の切り捨てで国民生活を犠牲にし、1兆5000億円の法人税減税をすすめ、企業が世界1活躍しやすい国づくりをすすめています。さらに今後も社会保障費の自然増分も含め3000億から5000億円以上も削減しようとしています。
 国保の広域化で、国保の財政基盤を安定させるといいますが、社会保障を削減したのでは、貧困と格差をひろげ、国保の「構造的問題」すなわち「高すぎる保険料」の解決にはならないのはあきらかであります。国保財政の安定、強化のためには、早急に国保財源として国庫負担を大幅に増やすべきであります。

 以上、27陳情第8号国民健康保険制度の広域化撤回を求める意見書提出および国民健康保険料の区独自の減額制度創設を求める陳情について、不採択とせず、ただちに採択することを求め、討論を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。