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区議会質問
第57号議案  豊島区立図書館設置条例の一部改正条例討論
2015/07/03

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております第57号議案 豊島区立図書館設置条例の一部を改正する条例につきまして可決に反対の立場から討論を行います。
 本議案は、区立図書館において指定管理者を導入するために提出されたものです。具体的には、東部地域の駒込図書館と上池袋図書館を2016年4月から、西部地域の池袋図書館と目白図書館を2017年4月から指定管理者による運営を開始するというものであります。
 区は、指定管理者の導入の目的として、@地域図書館の活性化を図るA地域図書館の開館日を拡大し利便性を向上させるという2点を挙げています。

 指定管理者制度が法制化され、本区においても2005年度から、この制度を導入し、公会堂、区民センターをはじめ、自転車駐輪場、スポーツ施設、福祉施設など37の施設を指定管理者に管理させるようにしてきました。
わが党は、指定管理者制度は、住民サービス、プライバシーの保護、事業の継続性、採算性など問題点が多々あり、公の施設導入については、基本的にふさわしくないとの立場から、指定にあたっては、慎重にすべきと審査にあたってきました。とくに図書館については、生涯教育の提供の場であり、プライバシーの保護、専門性、住民サービスの確保、事業の継続性からみて、公務員による直営で行うべきと主張してきました。

 この間、図書館について区は、自民党の構造改革路線に沿って、財政難を口実にした自治体リストラで、非常勤化をすすめ、窓口業務の委託化をはじめ、効率化といって図書館機能の縮小などで住民サービスの低下を招いてきました。
 さらに区長部局にその管理運営を移行し、参与などを置き、区長の思いが色濃い図書館のあり方に変え、本来、公務員がやるべき仕事を投げ出していったのです。そして、次々と、常勤の公務員体制から非常勤、臨時、委託といった図書館の職員体制としてはふさわしくない体制を作り、最近でも図書館長の兼務で、的確な指示や対応ができなくしてしまいました。
 自民党などは、図書館にも指定管理者を導入しても住民サービスが向上されると主張し、慎重だったはずの本区は、態度を変えてしまい、今回、導入を提案したのです。

 以下、本条例改正に反対する理由について述べます。
 委員会審査でも指摘したように、本区の図書館も加盟している日本図書館協会の見解が示すように、公立図書館の指定管理者制度は適切でないのであります。
 その理由は、一つに、専門性の蓄積、所蔵資料のコレクション形成は、図書館運営にとって極めて重要であり、これは一貫した方針のもとで継続して実施することにより実現できるのです。
 また、図書館は使用料を取るような施設ではないため、事業収益が見込みにくい施設であり、自治体が住民の生涯学習を保障するために経費を負担すべき事業なのです。
 第二に、図書館の管理を安定して行うために、その能力を有した事業者があるかどうか、指定期間が限られているもとで事業の蓄積、発展ができるか、経費節減により図書館で働く人たちの賃金等労働条件に安定性を欠く事態が起きないのかなど指定管理者制度の本質的ともいうべき問題点があります。

 したがって、国会の議論でも、図書館サービスは、単に利用者数が増えるとか、開館時間数の延長、開館日数の増といった量的なものだけでは測れない性質のものがある、経費削減により安定した長期雇用が保障されず、短期的の職員の入れ替わりによる弊害が生じるとして、政府も「公立図書館への指定管理者制度の導入はなじまない」と言っています。
 このように、図書館運営においても中心的役割を果たしている日本図書館協会が、適切でないといっているのにもかかわらず、無理にすすめるというやり方は容認できるものではありません。

 次に、現在の東京の図書館における労働者の雇用、処遇実態にてらしてどうかについて述べます。
 東京23区では、12区が指定管理者を導入し、227館のうち48%にあたる109館が指定管理者となっています。そして、その図書館においては、業務委託、指定管理者制度などの委託化が拡大し、職場内では、不当解雇事件や法令違反が相次いで起こっています。
 先ほどもふれたように、公立図書館は、住民の知る権利・学習権を保障するための公の施設であり、その運営にとって司書の配置は図書館法でも明確です。
 ところが、23区では、1996年に司書制度を廃止し、現在は、司書職制度がなく、司書資格を要件とした職員採用がありません。そのため、図書館職員に占める司書有資格の比率は、全国平均52%に対して、特別区は、27%と異常に低くなっています。またベテランの正規職員は、少なく、選書やレファレンスをはじめとする専門的業務は、多くの非常勤職員、もしくは委託先労働者が担っている実態です。本区でも同様であります。
 司書制度の廃止が、図書館の民営化や指定管理者導入をすすめる一つの要因となっているのです。
 図書館業務は、資料貸出だけでなく、資料の保存も行っており、専門性、継続性が求められる職場であり、官製ワーキングプアでは、職場に定着し継続した業務に従事することが大変に困難になっています。
 本区の現在の職員配置は、中央図書館は、正規が19名、再任用が1名、非常勤が18名、臨時職員6名です。地域図書館は、合計で再任用2名、再雇用2名、臨時職員6名、非常勤48名であります。非常勤職員は、全体で66名ですが、指定管理者を導入すると、必要な非常勤職員は55人になるといいます。
 超過する10名については、学校図書館の司書として、採用するように教育委員会と調整中とのことです。雇用を確保するのは当然のことでありますが、非常勤のままには変わりありません。
 非常勤職員は、1年ごとの更新で、最大4回の更新が可能でありますが、5年後、この仕事を続けようとすれば、またゼロから出発し、採用試験を受けることになります。また、月16日の勤務ですから、資格を持っていても月21万円程度の収入であり、とても安定した状況にないのです。

 さらに指定管理者になりますと、そこの職員は、受託契約の企業に拘束されます。5年ごとに指定管理者が変わる可能性がある状態で、指定管理者が雇用するスタッフは、短時間勤務のもの、短期間の雇用のものが多く、知識や技能の蓄積が行われず、結局住民サービスの低下が懸念されるのです。

 以上の理由から、豊島区の図書館の指定管理者導入は行うべきでなく、直営で実施すべきであり、第57号議案 豊島区立図書館設置条例の一部を改正する条例につきまして可決に反対するものです。以上で討論を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。