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区議会質問
保育学童新制度条例反対(小林ひろみ)
2014/10/22

 私は日本共産党豊島区議団を代表し、ただいま議題となっております第64号議案豊島区放課後児童健全育成事業の設備及び運営の基準に関する条例、第65号議案豊島区家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関する条例、第66号議案豊島区特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例について、可決に反対の立場から討論します。
 
 これらの条例は、来年4月から施行が予定されている子ども・子育て支援新制度に移行するにあたり、豊島区が学童クラブや保育施設について、設備や運営などについての基準を規定するため、提案されたものです。
 
 まず、第64号議案豊島区放課後児童健全育成事業の設備及び運営の基準に関する条例、について討論します。
 学童保育については、国は98年に法制化したものの最低基準を作ってきませんでした。新制度に施行にあたり、児童福祉法で、市区町村は国の定める基準に従い条例で基準を定めることになったのです。今回、国が事実上の最低基準を定めたことは一歩前進ですが、今回の条例で豊島区の学童クラブを改善することになっているかどうかが問題です。
 第一に面積基準についてです。
 これまで、児童館で行っていた学童クラブでは、東京都の要綱による基準により一人当たり1uとしていました。利用者がふえ待機児童がでると、学童クラブ室の面積を計算上ふやすために、事務室との境を床にテープをはってしきったりしたこともありました。その後豊島区は、児童館での学童クラブを次々廃止、スキップに移行してきました。
 スキップにすると「受け入れ限度」がなく待機者はないことになっています。現在、スキップの学童クラブの登録者はふえ大規模化し、たとえばスキップ高松の登録者は81名、要が90、池一が90となっています。
 現在のスキップでは児童一人当たりなどの面積基準もないのですが、基本的に1教室分のコアのスペース、主に学童クラブの児童が使う部屋にくわえ1教室分のセカンドスペース、一般の児童のランドセルを置くように使うような部屋、それプラス体育館、校庭、学校によっては図書室とか使えるとなっていました。さらに最近は人数が増え高松のように「むかし館」の部屋を放課後だけサードのスペースにしたりしています。また、スキップ池一は、セカンドが専用スペースではない多目的室を、学校が使わないときにつかわせてもらっている状況です。
 今回条例ができて、学童一人当たり1.65uという基準ができます。施設の広さによって学童クラブの定員もきめられます。学童の児童のスペースがこれまでより広くなるなら、いいのですが、そうはなりません。課長は、国の基準ではコアとセカンドを学童のスペースと考えていい、時間をわけて学校と共有してもいいとなっている、といい、改善するつもりがありません
 せっかく条例を作って基準を設定するのに、現状を改善する姿勢が全く見られません。国や東京都の解釈でいいとなっているからといいますが一般児童の利用する場所なども含めてかんがえるなどというのは、本来学童の「専用区画」と規定されているのと矛盾しています。
 
 第二に、児童支援の体制についてです。
 条例では、一つの支援の単位を構成する児童の数を概ね40人以下として、その支援の単位ごとに2名の放課後児童支援員を配置する、また2名の放課後児童支援員のうち1人は補助員ということで資格者でなくてもいいことになっています。区は、これまでスキップで学童クラブとそれ以外の一般の利用者について、所長一人、非常勤が4人から5人、そこに臨時職員が入っています。4月からは6年生まで学童クラブが拡大されますので利用者は増えることが予想されます。職員の体制の改善が必要ですが、それでは来年四月から豊島区では体制を拡充する予定があるかと問えば、「児童の申し込み状況をみて」「考えていきたい」というだけです。
 
 第三に経過措置についてです。
 条例第3条2項で、「区は最低基準を常に向上させるよう努めるものとする」とあります。ところが、附則第三条に、設備の基準の経過措置について、施設については、「当分の間「1.65u以上でなければならない」とあるのを、「.65u以上となるように努めるものとする」としてしまっています。これでは、よくなる確証がありません。
 
 これまでも、豊島区は児童館を廃止しスキップにしていく過程で、学童の定員をなくし詰め込み、おやつを五時にし、児童館なら冬も6時まで遊べたのに一般の児童の利用は4時半までにしたり、と水準を下げてしまいました。
 審議を通じて、今条例と今後の区の姿勢では、学童クラブの水準を引き上げるものになっていないこととは明らかです。よって第64号議案に反対します。
 
 次に第65号議案豊島区家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関する条例、第66号議案豊島区特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例について、述べます。
 
 子ども・子育て支援新制度は、介護保険をモデルとした社会福祉基礎構造改革の一環として提起されたもので、保育の提供に行政が責任をもっていた「措置制度」をやめ、利用者と事業者の直接契約、当事者任せにし、自治体の役割を後退させるものです。保育所(認可保育園)については児童福祉法24条1項は復活し、引き続き現在の制度と同様に市区町村が保育の実施義務を担うことにはなりましたが、これも薄めさせようとの動きがでています。また、これまでの「保育」という現物サービスを提供するものから、新制度では、保育に関わる施設型給付と地域型保育給付は保護者に対する現金の支給となります。これまでの「公費は保育事業以外には使えない」という使途制限が原則としてかけられていることに比べ、営利企業にとり「使い勝手のよい制度」と言えます。
 さらに新制度は、保育の分野に格差を持ち込む仕組みといえます。待機児童対策などとして盛り込まれた地域型保育(小規模保育、保育ママ、事業所内保育など)の基準を認可保育園に比べて緩和しているのが、国の基準です。
 
 反対する第一の理由は、上乗せ横だしを一切していないことです。豊島区の基準案は「すべて国の基準どおり」で、暴力団排除事項が豊島区独自となっているだけです。認可保育園であれば、すべて資格者保育士が保育するのですが、小規模保育B型は、資格者は5割でいいとか、C型はゼロでもいいとなっているのです。審議の中では、実際現在の保育ママは、事実上教師など何らかの資格をもっているとの答弁がありました。それなら条例できちんと明記すればいいのであります。
 他区では、B型の保育士を6割にしたりしているところもあります。やればできるはずです。
 
 反対する第二の理由は、保育料の問題です。
 保育料についてはまだ決まっていませんが、11月からの申し込みの時点では確定しないことがはっきりしています。認可保育園、区立幼稚園については現行水準と同程度の方向で検討中、地域型保育も認可保育園と同様の所得に応じた保育料を適用する予定となっています。問題は、新制度では保育料以外の実費徴収、上乗せ徴収ができるとされ、条例にも、実費等の使途、額、及び理由について同意をえて徴収できるとされています。上乗せの金額により、同じ家庭的保育等でも利用料の負担に違いがでることになります。これは、公的保育としてはふさわしくないと考えます。
 
 反対する第三の理由は、現場の対応が間に合っていないことです。
 国の対応が遅れているのが最大の原因であります。しかし、現場が間に合わないなら国に抗議をする、中止を求めるなどの対応が必要ですが、区はやろうとしていません。
 国の新制度を説明するパンフレットには、「お住まいの市区町村にお尋ねください」という記述がたくさんあって、自治体が決めなければいけないことになっています。たとえば、新制度になったときに豊島区でどのような保育サービスが提供されるかということについて質問すると、課長は「認可保育園のほか、小規模保育、施設型保育ママ、個人型保育ママは考えている。事業所内保育は協議中」と答えました。また、訪問型保育サービスについては「まったく情報がはいってこない状況」ということです。
 11月には、保育園の申し込み手続きが始まります。これまでは認可保育園の申し込みがあり、入れなかった子どもを待機児童施設で対応するなどしていたのです。これを、新制度では、認可保育園のほか、小規模保育や保育ママなどの中から9施設選んで申し込んでもらう制度にするとしています。現在のところ申し込める施設については、これまでの認可保育園についてはっきりしていますが、そのほかどのような施設が申し込めるのか、どのような施設があるのか、はっきりしていなければ申し込み自体ができないではありませんか。
 保育料についても、まだ決定していませんし、待機児童の考え方についても決まっていないのであります。
 
 第四に、区民が求めている説明会を行わないことです。
 パブリックコメントでも、「説明会をやってほしい」と意見が多く出されました。制度がどうかわるのかなかなか理解できず心配している方がいるのです。これに対し、区は「説明会はしない。周知は広報とホームページで行う」としています。あとは個別の説明でやっていくという姿勢です。
 新制度になれば、新しく小規模保育なども「認可」になり申し込み方もかわる、保育の必要性の認定が必要になる、保育の必要量の認定(標準時間と短時間の認定)も必要になる、保育入所基準指数表、調整指数もかわる、さらに認可外であっても臨時保育所は連携園への点数加点があるが、認証保育所はないなど、いろいろ変わります。こういった制度改正を広く周知する説明会は開くべきです。
 
 以上、これらの条例ができることによって、子どもの最善の利益が守られるとは到底考えられません。よって第65号議案および第66号議案に反対します。
 
 以上で討論をおわります。ご清聴ありがとうございました。