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区議会質問
26陳情第13号 「医療・介護総合法案による介護保険制度の見直しを行わないよう 国に対して意見書提出を求める陳情」の不採択に反対し直ちに採択を求める討論(渡辺くみ子)
2014/7/4

 私は日本共産党豊島区議団を代表し只今議題となりました26陳情第13号「医療・介護総合法案による介護保険制度の見直しを行わないよう国に対して意見書提出を求める陳情」の不採択に反対し直ちに採択を求め討論致します。
 この陳情は先の6月18日に参議院本会議にて日本共産党、民主党、みんな、維新、結い、社民、生活の各党が反対する中、自民、公明両党のみの賛成で可決、成立した医療・介護総合法に対し、介護サービスの低下、利用者の負担増、介護サービスに地域格差を生じさせるなど多くの問題があるとして、国に法施行の中止を求める意見書提出を求めたものです。

 まず、医療・介護総合法の問題点を3点に絞り指摘します。
 第一に現在介護予防給付の対象となっている要支援1,2の通所介護、訪問介護を予防給付から外し、新たに設定した地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業に移行するとしていることです。
 委員会審査で担当理事者は、「介護保険からはずすことはなく、現状と変わらない」「生活支援など多様なニーズに対応できるようになる」とし、そのために供給主体もNPОやボランティアなどを様々な形で提供できると強調しました。
 そんなことはありません。現在は、要支援1,2は介護予防給付事業として介護支援専門員、すなわちケアマネージャーが被保険者の状態に合わせケアプランをたて、介護福祉士やヘルパー等の専門家による介護予防サービスが提供されています。要支援者は、専門的な介護支援を受けることで、在宅生活を継続している人が多くいるのです。しかし地域支援事業に移行した場合、要支援者の状態に合わせた専門的な対応がなくなり、サービス提供者もボランティア等に移行するのですから、現行の介護予防給付とは根本的に異なり、サービスの質の低下が指摘されているのです。
 現行の地域支援事業は、自治体独自の任意事業としておこなわれており、本区ではおむつ支給事業など、かつては区の独自施策として実施されていた高齢者事業が組み込まれています。予算枠は介護保険の総給付額の3%の枠内で実施されていますが、この枠は今後どうなるか決定されておらず、どこまで生活支援が受けられるか全く不透明です。さらに現行では利用料は1割が原則ですが、新たな地域支援事業に移行した場合の自己負担額も全く明らかになっていません。結局、要支援者を介護予防給付から外すことだけが先行しているということです。
 委員会では、他の委員から「要支援者の多様なニーズに応えられる」との発言も多くありましたが、この間、ヘルパーさんの病院付き添いはだめ、日中独居でも家族がいるからヘルパーさんの派遣はだめ、挙句の果てに今期からは派遣時間を大幅に短縮し従来介護保険で利用できていたサービスまで取り上げる改悪を進めてきました。その結果、介護保険導入時には受けられたサービスがどんどん縮小し、それこそ多様なニーズに応えきれなくなったのです。介護保険の事業サービス枠をどんどん削減しておきながら、地域支援事業に移行すれば多様なニーズに応えられるなどとはごまかしであります。

 第二の問題は特養ホームの入所者を要介護3以上にすることについてです。
 特養ホーム入所申し込みを要介護3以上に限定することで要介護1,2を最初から外すということです。理事者は「必要によっては要介護1,2の人も入所可能、現行と変わらない」と強調しましたが、ではなぜ要介護3以上などと規定したのでしょうか。まさにごまかしであります。
 介護保険制度は、「利用者自身による選択、主体性の尊重を基本」などと明記されていますが、今回のように総合法で特養ホーム入所対象を要介護3以上に規定することは、要介護1,2の人から「特養入所」という選択枝すら奪うことで、法律の理念からも大きく逸脱しています。
 しかも、本区では、我が党森議員が一般質問でも指摘してきたように、「特養入所優先基準」を作り、入所対象を介護度4,5に限定し、さらにポイントが当初10だったものが11、12と引き上げ、しかも昨年からは毎年入所申請を提出することまで決定。結果、入所申請を出せなかった人は入所選考からはずし、必要度を低く見せることまで行っているのです。

 第三の問題は利用料2割負担の導入と施設利用者における補足給付の要件変更についてです。
 まず利用料2割負担についてです。
 今でも「1割負担が大変」という利用者の声が多く寄せられています。ところが今回、年金収入で単身280万円以上の収入の人から利用料を2割負担に引き上げるとしました。政府は「引き上げ後も対象者の家計には余裕がある」と説明していましたが、参議院社会労働委員会で、我が党小池晃参議員の質問に対し「やりくりすれば耐えられる」と修正しました。年金収入280万円はゆとりなどないことを政府は認めざるを得なかったということで、引き上げの根拠が崩壊したということです。また区理事者は利用料には月額上限があるので単純に2倍の負担とはならないと言いました。しかし、この月額上限も現行の一般37200円のほかに、新たに「現役並み所得相当」として44400円を設定しました。結局さまざまな基準を設定し利用料の引き上げを行っているのです。
 後期高齢者医療制度における3割負担の階層は、収入383万円以上としており、これと比べても「年金収入で単身280万円以上」の利用料の2割負担設定は大問題です。

 次に施設利用者の補足給付の基準についてです。
 現在、住民税の非課税世帯が特養ホーム等介護福祉施設に入所した場合、申請に基づき補足給付を支給し負担軽減を行っています。ところが今回、預貯金の収入換算、世帯分離していても配偶者が課税されていれば対象外、さらに本来非課税所得となっている遺族年金や障害年金まで収入に換算し、補足給付の対象から外すとしました。
 厚労省の調査でも年金受給者の48%が年額100万円以下の低年金者です。サービス付高齢者住宅や有料老人ホームなど利用できない高齢者が多くいるということです。これらの高齢者にとって特養ホーム以外に入所できるところはありません。そこにさらなる負担増を強いるやり方は本当に許せません。

 そのほか、介護保険制度の改悪ばかりでなく、医療面でも病床の再編、削減が示されています。また理事者の答弁でも明らかになりましたが、長期入院に関しては診療報酬の削減があり、結果、特養にも入れない、病院にもいられない、介護難民が増えるということです。
 これだけを見ても医療・介護総合法は、介護給付は縮小する、反対に保険料、利用料は次々と増やす。まさに医療、介護の総改悪法であります。さらに今後、新制度に移行した場合、その給付の中身も自己負担の中身も全く不明のまま、制度の大枠を決定してしまうやり方はあまりにも国民不在で乱暴です。この立場からすれば陳情者の言うとおり、施行中止を国に求めるのは当然のことであります。

 しかし委員会審査で自民党は「持続可能な制度の維持」を強調し、陳情の不採択を主張。必要なサービスが受けられないで、どこに「制度の維持」ができるのでしょうか。利用者が「利用者自身による選択、主体性の尊重を基本」として必要な介護が受けられることこそ制度の維持と言えるのではないでしょうか。しかも安倍内閣は「消費税増税は社会保障のため」と言いますが、消費税増税分5兆円のうち介護分はわずか40億円です。増税が社会保障のためなどとは大ウソであります。
 また「自治みらい」の委員は「法律が制定されたから」と陳情の不採択を主張しました。6月18日付けの東京新聞の1面に医療・介護総合法案の記事が掲載されていましたが、その中で、民主党の国会議員は「介護保険創設時の理念である『介護の社会化』が変質していると言わざるを得ない」と指摘し法案に反対しています。みんなの党は「性質の異なる法案を一括して賛否を求めるのは乱暴」と批判。社民党の福島瑞穂氏は「短時間での採決は国会審議の軽視だ」と述べ法案に反対したことが報道されました。自治みらいの会派は民主3人、社民2人と生活者ネットの方です。総合法が区民にとってサービス低下と負担増となることははっきりしているのですから、今からでも出来ることをするのが地方議員の役割ではないでしょうか。国会では法案に反対しておきながら、「法律が成立したから」と言って、陳情を不採択にするなどとは、まさに区民を欺くものと言わざるを得ません。
 以上、医療・介護総合法の問題点を指摘し、26陳情第13号 「医療・介護総合法案による介護保険制度の見直しを行わないよう国に対して意見書提出を求める陳情」の不採択に反対し直ちに採択することを求め討論を終わります。

 ご清聴ありがとうございました。