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区議会質問
集団的自衛権の行使容認に反対の意見書提出を求める請願、陳情についての討論(儀武さとる)
2014/7/4

 私は日本共産党豊島区議団を代表しまして、ただいま議題されております26請願第4号「海外で戦争する国」にする集団的自衛権の行使容認に反対の意見書提出を求める請願、並びに26陳情第19号「立憲主義を否定する政府の憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使容認することに反対する意見書」を国に提出を求める陳情について、不採択とすることに反対し、ただちに採択することを求めて討論を行います。
 本請願と陳情は「憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認を行わないこと」「日本国憲法9条を守り、生かすこと」を国に意見書提出を求めるものです。

 安倍政権は7月1日、国民多数の反対の声に背いて、集団的自衛権行使容認を柱とした解釈改憲の「閣議決定」を強行しました。
 「閣議決定」は、「憲法9条のもとでは海外での武力行使は許されない」という従来の政府見解を百八十度転換し、「海外で戦争する国」への道を開くものです。
 こうした憲法改定に等しい大転換を、与党の密室協議を通じて、一片の「閣議決定」で強行するなどというのは、立憲主義を根底から否定するものであり、断じて認めることはできません。

 「閣議決定」は、「海外で戦争する国」づくりを、二つの道で推し進めるものとなっています。
 第一は、「国際社会の平和と安定への一層の貢献」という名目で、アフガニスタン報復戦争やイラク侵略戦争のような戦争を米国が引き起こしたさいに、従来の海外派兵法に明記されていた「武力行使をしてはならない」、「戦闘地域にいってはならない」という歯止めを外し、自衛隊を戦地に派兵するということです。
 「閣議決定」は、自衛隊が活動する地域を「後方地域」「非戦闘地域」に限定するという従来の枠組みを廃止し、これまで「戦闘地域」とされてきた場所であっても、支援活動ができるとしています。「戦闘地域」での活動は、当然、相手からの攻撃に自衛隊をさらすことになります。攻撃されれば、応戦し、武力行使を行うことになります。それが何をもたらすかは、アフガン戦争に集団的自衛権を行使して参戦したNATO諸国が、1000人以上の犠牲者を出したことに示されています。

 第二は、「憲法9条の下で許容される自衛の措置」という名目で、集団的自衛権行使を公然と容認していることです。
 「閣議決定」は、「自衛の措置としての『武力の行使』の『新3要件』」なるものを示し、日本に対する武力攻撃がなくても、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には、武力の行使すなわち集団的自衛権の行使ができるとしています。
 これについて「閣議決定」は、「従来の政府見解における基本的な論理の枠内で導いた論理的帰結」といいますが、これほど厚顔無恥な詭弁はありません。政府の第9条に関するこれまでのすべての見解は、「海外での武力行使は許されない」ことを土台として構築されてきました。「閣議決定」が、その一部をつまみ食い的に引用している1972年の政府見解も、この土台に立ち、「集団的自衛権の行使は、憲法上許されない」という「論理的帰結」を導き出しています。今回の決定は、従来の政府見解の「基本的な論理の枠内」どころか、それを土台から覆す、乱暴きわまる解釈改憲であることは明瞭であります。

 委員会審査でも指摘しましたが、集団的自衛権の行使容認は、あくまで「限定的」なものにすぎないといいますが、悪質なゴマカシです。「明白な危険」があるか否かを判断するのは、時の政権です。「限定的」といいますが、時の政権の一存で、海外での武力行使がどこまでも広がる危険性があります。また、「必要最小限の実力の行使」といいますが、いったん海外での武力の行使に踏み切れば、相手からの反撃を招き、際限のない戦争の泥沼に陥ることは避けられません。集団的自衛権にはことの性格上、「必要最小限」などということはありえないことです。
 さらに、政府は、集団安全保障においても、「新3要件」を満たすならば、憲法上「武力の行使」は許容されるとしています。
 集団的自衛権を名目とした武力行使も、集団安全保障を名目にした武力行使も、ともに許容されるとなれば、憲法9条が禁止するものは何もなくなってしまいます。それは、戦争の放棄、戦力不保持、交戦権否認をうたった憲法9条を幾重にも踏みにじり、それを事実上削除するに等しい暴挙です。
 こうした無制限な海外での武力行使を、「自衛の措置」の名で推し進めることは、かつての日本軍国主義の侵略戦争が「自存自衛」の名で進められたことを想起させるものであり、認めることはできません。
 60年前に創設された自衛隊は、「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」とうたった憲法9条に反する違憲の軍隊としてつくられました。それでも、60年間、自衛隊は他国の人を一人も殺さず、一人の戦死者も出すことはありませんでした。それは、憲法9条が存在し、そのもとで「海外での武力行使をしてはならない」という憲法上の歯止めが働いていたからです。
 「閣議決定」は、こうした戦後日本の国のあり方を否定し、日本を「殺し、殺される」国にしようというものです。それは、日本の国を守るものでも、国民の命を守るものでも決してないのです。米国の戦争のために日本の若者に血を流すことを強要し、米国と一体に他国の人々に銃口を向けることを強要するものにほかならないのです。このことによって日本が失うものは、はかりしれません。
 もともと「集団的自衛権行使は、憲法上許されない」とする政府見解は、ある日突然、政府が表明したというものでなく、半世紀を超える長い国会論戦の積み重ねをつうじて、定着・確定してきたものであります。それを、国民多数の批判に耳を傾けることもなく、国会でのまともな議論もおこなわず、与党だけの密室協議で、一片の閣議決定によって覆すというのは、憲法破壊のクーデターともよぶべき歴史的暴挙です。
 委員会審査で、自民党は「集団的自衛権は最小限は必要」として不採択を主張、公明党は「国民的な議論は必要」として継続を主張し、継続が否決されると、公明党は不採択としました。自治みらいは「「議論が十分つくされていない、9条を守り、生かすことについては会派内の意見が違う」として、請願については退席、陳情については採択を主張。みんなの党は「憲法9条、公選制、道州制」など改正の立場だから不採択を主張しました。結局、採決では請願、陳情ともに不採択となりました。
 毎日新聞の世論調査では、集団的自衛権の行使を容認すれば、「他国の戦争に巻き込まれる恐れあると思う」が71%にのぼり、「思わない」は19%にすぎないことがわかりました。集団的自衛権の行使容認への反対は58%、賛成は32%です。行使容認が他国の日本攻撃をおもいとどまらせる抑止力になるという安倍首相の説明について、「そう思う」は27%にとどまり、「思わない」は62%でした。
 沖縄県議会は6月30日、集団的自衛権の行使容認の閣議決定を強引に推し進める安倍内閣に強く抗議し、慎重審議を求める意見書を、与党の公明党を含む賛成多数で可決しました。全国では190以上の自治体で、反対もしくは慎重審議を求める意見書が可決されています。豊島区議会においても、区民の意思を明確にするために請願、陳情を採択すべきです。

 最後に採決にあたり一言述べます。憲法9条を守り生かすのか、戦争ができる国にするのか、まさに、日本が岐路に立たされ、その選択が問われている時に、本請願について、自治みらいの一部議員が退席することになっています。同じ態度をとるべきなのに会派として体をなしていません。そのことを指摘して討論を終ります。