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区議会質問
第20号議案 豊島区立区民住宅条例の一部改正条例討論(垣内信行)
2015/3/19

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております第20号議案 豊島区立区民住宅条例の一部を改正する条例について、可決に反対の立場から討論を行います。
 本議案は、借り上げ契約が終了する区民住宅を廃止するため、関係条例の一部を改正するとして提出されたものであります。
 そもそも区民住宅は、特定優良賃貸住宅として、区がオーナーより20年契約で借り上げ、入居者には20年間を期限として利用承認する、区の住宅です。
豊島区では、「ソシエ」という名称で呼ばれております。
 特定優良賃貸住宅(特優賃)を取り巻く状況について、区は、地域優良賃貸住宅制度すなわち地優賃制度へ移行したことにより、全国的に、その役割を終えたとしています。
 また東京都の事業である「都民住宅」も例外なく返還する方針で、他の自治体でも区民住宅は、返還をすすめていることから、本区でも借り上げ契約が終了した住宅を順次オーナーに返還しようというものです。
 今回の条例改正は、そのうち7団地を廃止する条例改正であり、区の住宅対策の後退であることは明白であります。

 順次廃止に反対する理由について述べます。
 まず、第一に、無責任な区の対応についてであります。
 区の住宅対策を若干振り返りますと、バブル期から本格的に始まりました。
以前、自民党政治は、「自分の家は自分で」という持家政策が中心のため、日本の公営住宅建設は進んできませんでした。
 とくに都心部は、土地が高く、定住化は困難で、マイホームを持つことは、「夢のまた夢」、バブル期では、住まいの確保は難しく、本区でもファミリー世帯の流出が大きな課題でありました。
 年々減り続ける人口は、土地の高騰と高家賃によるもので、その対策は本区でも急がれていたのでした。
 とくに所得の低い人は、家は持てず、居住水準に満たない住宅にすまなければならない状況に置かれ、豊島区のように都営住宅など公営住宅が少ない区は、なおさらでした。
 区は、我が党の粘り強い主張から、80年代後半から独自の住宅対策に乗り出しました。区民住宅もその一つで、区営住宅や福祉住宅だけでなく、中堅所得者層向けの住宅として区民の定住化を図るというものでした。
 私は、今から20年前、当時の区民建設委員会で、この区民住宅の新設条例の審査にあたった一人ですが、当時も様々な角度で論議されました。
 理事者は、「中堅所得者層の人たちを公的にカバーしていく住宅政策がなかったということが一番の始まりで、一番何もやっていない対象に向けた政策である」と答弁しております。
 また、当時の助役は、「どういう階層にしろ、住宅自体が全然たりないということは事実。それぞれの階層にあった形でのいろんな高齢者住宅はじめ、区営住宅その他をやっているが、今回は、いわゆるファミリー向けというものに重点にした」というように述べております。なかなかいいことを言っているではありませんか。改めて、区も住宅対策に力を入れていた時期もあったと感心いたした次第です。
 さて、バブル崩壊後、土地の価格は下落しはじめ、住宅制度を取り巻く状況は、確かに変化しました。区民住宅では、同じ家賃負担をするなら、ローンを組んでマイホームを取得したほうが得、また、より安い賃貸住宅を求めていくようになりました。
 つまり、区民住宅の家賃負担額が、高いために空き家の発生が多くみられるようになったのです。区は、独自策として、所得区分T、U以上の方について「傾斜家賃を凍結」するなど対策を講じました。また、要件を緩和し、それこそ世界中からが申込みできるようにもしました。
 それでも申し込みが少ないのは、家賃が高く、公営住宅としては魅力のないものにしてしまったからであります。
 わが党が、かねてから主張しているように、家賃負担を引き下げることや、区営住宅など低所得者向けの公営住宅に転用すれば、廃止しないでも済んだのであります。結局、区の無責任な住宅行政の結果、定住化どころか、家賃を払いきれない入居者を追い出すことにしてしまったのです。

 廃止に反対する第2の理由は、入居者支援策があまりにも不十分ということであります。
 区は、廃止した「ソシエ」に引き続き入居を希望する場合、激変緩和措置として引き続き入居支援の助成を行うとしています。
 現在、「ソシエ」の入居者は、5段階の所得に応じた家賃設定がされており、所得の低い区分の人ほど、契約家賃との差額を区が多く助成しています。
 制度上は、廃止した区民住宅の入居者は、所得に関係なくオーナーとの契約家賃を払わなくてはなりません。そのために満了後も引き続き居住する方に対し、条件に該当する方には助成金を支給するとしているのです。
 では、具体的にその支援策はどういうものでしょうか。
 1年目は、これまでの家賃(入居負担額)の1.2倍を新負担額とし、その差額を助成するものです。2年目以降は、前年の家賃負担額をさらに1.2倍とする新家賃としていき、オーナーとの契約家賃と新家賃との差額がなくなるまで助成するというものです。
 委員会審査で示されたモデルケースでは、12万円の家賃は、廃止すると、いきなり18万4千円になってしまうので、1年目は、月4万円、2年目は月1万1千円を助成するといいますが、それでも家賃は、一年目は14万4千円になり、2年目には、17万3千円になってしまうのです。
 これを実際の入居者にあてはめてみると、どうなってしまうのでしょう。
 現在、ソシエ東池袋にお住いのAさんの場合です。Aさんは、月額所得20万円から26万8千円の所得区分Tに該当し、区民住宅の入居基準では一番低い所得区分の方です。
 このAさんの居宅は、オーナーとの契約家賃が、19万2500円です。
 所得区分Tにあるため、現在の家賃は、11万7900円です。それが、廃止されると、1年目には、14万1480円になり、2年目には、なんと16万9776円、3年目には、満額の契約家賃19万2500円を払うということになります。
 激変緩和措置といっても、毎年2割増しの家賃となります。支払いは困難になることは明らか、ソシエからは当然出ていかなくてはならなくなります。区の住宅から区民追い出すことは許せないものです。

 第3の反対理由は、住宅対策そのものをますます軽視していることです。
 これまでも区営住宅や福祉住宅の増設を求めても区長は、これを拒否し、「公営住宅よりも既存の賃貸住宅の利活用や供給のあり方に移行すべきもの」と言っていますが、しかしこれもうまくいっていません。
 区民ののぞむ公営住宅の増設、確保を区長は拒み続けています。過去最大の予算というなら、まずは区民の住まいを第一優先の課題として位置づけるべきです。 区有地を活用すれば区営住宅は、一団地25戸分で約一億5千万円。借り上げの福祉住宅は、25戸分は2050万円で増設できるのです。50億、60億円もかける劇場ホールの30分の1程度で区営住宅、福祉住宅あわせて50戸も供給できるのです。劇場ホールよりも住宅を区民は求めています。
 廃止する区民住宅も家賃補助を拡充すれば、存続して、公営住宅として活用できるのです。
 今回の区民住宅の廃止は、結局、区の住宅対策の後退であり、認められません。今後は、区民の実情を直視した住宅対策を推進することを区長に求め、第20号議案 豊島区立区民住宅条例の一部改正する条例の討論とします。
 ご清聴ありがとうございました。