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区議会質問
国に生活保護法の改正をやめさせ、生活保護費基準の引き下げを中止させる意見書の提出を求める陳情(森とおる)
2013/10/24

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、25陳情第19号「国に生活保護法の改正をやめさせ、生活保護費基準の引き下げを中止させる意見書の提出を求める陳情」について、不採択に反対し、ただちに採択すべき立場から討論を行います。

 本陳情は、本年8月に行った生活保護基準の引き下げは、これまでもギリギリの生活を強いられていた生活保護受給者の暮らしをますます悪化させると同時に、他施策へも影響を及ぼし、国民生活水準全体を引き下げるものとして中止を求めています。また、国が、本年6月の通常国会で廃案となった生活保護改正案を、再提出しようとしていることについて、「違法な水際作戦を合法化するもの」として、再提出をやめるように求めているものです。

 まず、生活保護基準の引き下げについて述べます。
  生活保護基準の見直しは、本年1月にとりまとめられた社会保障審議会生活保護基準部会における検証結果や、物価の動向を勘案するという考え方に基づき、総額670億円、最大10%を3年かけて毎年引き下げるものとして、今年度予算に盛り込まれ、8月に強行されました。
  これまで、国が不況を広げてきたことや、年金などの引き下げ、労働者派遣法の改悪などで国民の生活は厳しくなり、生活保護受給者の増加は、とどまることを知りません。これまでも老齢加算の廃止などありましたが、今回の過去最大の引き下げは、アベノミクスなどによる生活必需品の値上げラッシュと重なり、受給者に深刻な打撃を与えています。陳情の文章にあるように受給者からは、「今でもぎりぎりに切りつめた生活をしている。物価は上がるし、どうやって生きろというのですか」と悲鳴が上がっています。この国の横暴に対し、全国の受給者が続々と不服審査請求に立ち上がり、その数1万件以上という規模に広がっています。
  生活保護基準引き下げによる影響は、受給者だけにとどまらず、他の施策にも及びます。本区においては69事業です。非課税世帯の住民税の限度額が下がることにより、全国の非課税世帯3千万人に影響します。介護保険料、高額療養費の限度額、保育料、就学援助の適用基準、最低賃金等にも影響があります。これは人間の生きる権利、すなわち生存権を、いっそう奪うと言うことです。ただちに引き下げは中止すべきであり、今後も引き下げなどやってはなりません。

 次に、生活保護法改正案について述べます。
  安倍政権は、このような生活保護基準の引き下げの強行にとどまらず、これまでも横行していた窓口で申請者を追い返す、違法な水際作戦を合法化する内容の、生活保護法改正案の成立を狙っています。これは、昨年の民主党政権の時に、自民党と公明党が出した「社会保障制度改革推進法」が、民主党を加えた3党の密室協議で成立した際、その附則に生活保護の見直しが書き込まれたことがきっかけとなりました。安倍政権になって、通常国会に提出されましたが、6月の国会最終日に参議院で首相問責決議が可決され、そのまま閉会となり、法案は廃案となりました。
  現行法では、保護の申請は口頭でも良く、申請後、決定をするまでの間に通帳や住宅賃貸契約書などの書類を可能な範囲で提出すれば良いことになっています。ところが改正案は、文書申請と給与明細、預金通帳などの提出を義務づけることなどを原則にしているのです。これは、申請のハードルを上げ、保護をいっそう利用しにくくすると言うほかありません。
  また、現行法では、親族の扶養は保護の要件ではありません。仕送り等がされた場合に、その分、保護費が減額されるにとどまります。これについても改正案では、要保護者の扶養義務者に対して、報告を求めることができるという規定(28条2項)を新設し、扶養義務者の資産・収入等について官公署、年金機構、銀行、雇い主等に調査できるという規定(29条)を拡充しました。扶養義務者に対する調査権限の付与、また義務を果たしていないと判断した場合の扶養義務者に対する通知の義務づけは、扶養義務の履行を事実上義務づけたことになります。これにより、「子どもに迷惑をかけたくない」とか、「親族に知られたくない」などの理由で、申請をためらう生活困窮者を続発させることになり、親族間にもあつれきを生じさせかねません。
  これら法案の中身は、申請手続きを厳格化して生活保護の権利性を弱め、生活困窮者の生活保障に関する国の役割を放棄するもので、まさに、これまでも横行していた違法行為の水際作戦を合法化するものです。

 委員会審査で他の会派からは、「不正受給への対応は」とか「通報は」など、不正受給に焦点を当てるような質問が出ました。2010年における不正受給は、全国で0.38%しかありません。昨年、お笑い芸人の母親の事例を、自民党が国会で取り上げ、厚労省が不正受給ではないと認めたにもかかわらず、マスコミ報道が過熱しました。そのため、多くの受給者が「自分が何か悪いことをしているようだ」と肩身の狭い思いをしているのです。
  また、「生活保護は裕福という声もある」といった発言もでました。これは保護受給者の生活実態を見ようともしないものです。

 生活保護法は、「憲法25条に規定する理念に基き」とうたっており、「保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と明記されています。この基本理念ならびに制度の根幹である無差別平等の原則は、いささかも揺るぎがあってはならないのであります。安倍政権による生活保護改悪は、この基本理念を侵すものとなっており認めることはできません。

 よって25陳情第19号「国に生活保護法の改正をやめさせ、生活保護費基準の引き下げを中止させる意見書の提出を求める陳情」は、ただちに採択すべきです。

 以上、討論を終わります。