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区議会質問
 
「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」についての反対討論(森とおる)
2013/03/26

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、第29号議案「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について可決に反対の立場から討論を行います。

 本議案は、保険料率の改定として基礎賦課額と後期高齢者支援金等賦課額の所得割料率を8.51%から8.36%へと0.15%引き下げ、均等割額を1,200円引き上げる。2011年度に実施した賦課方式の変更に伴う経過措置を終了し、新たに住民税非課税者に減額措置を2年間行ないます。この結果、保険料は一人あたり、97,250円から98,999円へと1,749円の大幅な引き上げになります。
 また、介護納付金賦課額の所得割料率は1.49%から1.69%へと0.2%の引き上げ、均等割額を14,100円から15,000円へと900円引き上げ、一人あたり保険料は、27,624円から30,288円へと2,664円も引き上げするというものです。
 他に、法律と国民健康保険法施行令の改正に伴う条例整備です。

 本議案は、国の予算係数の決定と政令改正が今年に大幅にずれ込んだことで、議案提案が遅れ、区議会定例会初日に間に合わず、本会議最終日に上程されました。そのため会期は5日間延長され、昨日、付託された区民厚生委員会で審査するという異例な状況となりました。よって、本来いっしょに審査するはずの「国保料の値上げに反対する陳情」とは、別々の審査日程となったのであります。私はすでに陳情の審査で、以下3点の理由で国保料値上げに反対する本会議討論を行ないましたが、ここで改めて討論いたします。

 反対の理由の1点目は、値上げが区民のくらしに多大な影響を与えるからであります。
 本区の国保加入世帯は、2012年3月末で59,851世帯と全世帯数の約4割を占めています。そのうち所得が200万円以下の世帯は、45,881世帯と約77%です。所得のない世帯についてみると23,959世帯であり、国保加入世帯の4割にも上ります。この現状を区は、「負担能力の低い所得層が多く加入している実態となっており、国民健康保険制度が抱える構造的問題の1つ」であることを認めています。このように経済基盤の弱い世帯がこれほど多いにもかかわらず、またしても値上げするというのです。
 年金受給者2人世帯で年収230万円の場合では、116,869円から130,612円へと13,743円、11.8%の値上げ、住民税方式だった2010年度と比較すると、3年間で34,842円、36.4%もの値上げです。
 給与所得者2人世帯で年収200万円の場合では、157,749円から202,245円へと44,496円、28.2%の値上げで、保険料は年収の1割を超えることになります。3年間では84,903円、72.4%もの値上げです。
 同じく給与所得者4人世帯で年収300万円の場合では、すでに年収の1割を超えていた317,699円から355,395円へと37,696円、11.9%の値上げ、3年間では何と148,790円、72%と、異常とも言える値上げになるのです。
 これほどの値上げとなった理由は、2011年度に賦課方式を旧ただし書き方式に変更した際、あまりにも値上げ幅が大きくなりすぎたため導入した、激変緩和の措置を廃止したからであります。従来の住民税方式では、収入から基礎控除、扶養控除、配偶者控除、障害者控除、社会保険料控除などを引いて計算される住民税を基礎にして保険料を計算していました。ところが旧ただし書き方式では、収入から基礎控除33万円しか引かずに計算するため、低所得者や扶養家族の多い世帯、教育費のかかる子育て世帯、障害者や障害者を支える家族など、様々な税額控除がある区民ほど影響を受けることになったのです。だからこのような世帯の保険料が、大幅にはね上がることを回避するため、激変緩和措置を取らざるを得なかったのであります。
 「新たな減額措置」が導入されますが、住民税非課税世帯に限定されるため対象は約2,900世帯に絞られます。対象から外れるのは1万以上の世帯にのぼります。しかも、2013年度は、これまで75%だった減額を50%に減らし、2014年度はさらに25%まで減らし、2015年度は減額措置を全く無くすというものです。委員会で理事者は、経過措置廃止について「2年間で激変緩和の役割は終わった」と言い、区民のおかれている深刻な実態に背を向けました。

 2点目の理由は、保険料が大幅に上がり滞納世帯が増加し、医療を受けられない区民が増えるからであります。
 ここまで述べてきたように、経済基盤の弱い加入者が多い国保において、保険料の値上げは耐えることのできない痛みであり、これ以上払えないという世帯が増えることになるのです。保険料の滞納世帯は、2009年度が26.97%、2010年度が29.13%、2011年度が31.66%と毎年増加しています。保険料階層別では低所得世帯である均等割世帯が36.49%と、3分の1以上を占めているのです。本年2月末で、短期証は3,450世帯、資格証は2,095世帯と、多くの世帯が正規の保険証ではありません。特に資格証は、他区に比べて極めて高く、区民に冷たい本区の姿勢が浮き彫りになります。

 3点目の理由は、国保は医療保険であるが、いわば社会保障制度の根幹であるということです。
 国は、長年にわたり国庫補助を削減してきました。1984年に、医療費の45%とされていた国保への定率国庫負担を38.5%に引き下げ、その後も国保の事務費や保険料軽減措置などへの国庫負担を縮小、廃止してきたのです。その結果、国保の総会計に占める国庫支出の割合は、1984年度の50%から24.1%に半減しているのです。豊島区のデータでも2011年度決算で26.4%に下がっております。住民の命と健康を守るために、そして制度を維持するためにも国が、国庫負担の大幅増額をおこない、安定した国保財政にするために責任を負うべきです。それが実現するまでは、区が一般財源を投じてでも保険料を引き下げるべきです。
 また、総医療費が増えることによって、保険料が上がる仕組みも問題なのです。理事者は、「医療費を下げるために、特定検診・特定保健指導の強化やレセプト点検の積極的な推進、ジェネリック医薬品の使用促進を行なっている」と答えました。これらは当然やるべきことです。また「昨年独自に、全国都道府県の会議で、国の負担が足らないと発言した」と答弁し、「これからも機会あるたびにやっていく」とのことでした。区として当然やるべきことであり、しっかり取り組んでいかなければなりません。医療費削減の努力も大事ですが、国へ国庫負担増を求めることの方がさらに重要なのです。もっと強く働きかけるべきです。
 委員会審査で、他会派の議員から、「保険料を下げることは、他の医療保険との公平性に欠く」との意見がありました。しかし、他の医療保険と比較し、保険料を限りなく引き上げるのは本末転倒であります。国民健康保険制度は、国民皆保険の理念のもと、高齢者や自営業者、失業者など経済基盤の弱い人々が安心して医療を受けられるためにつくられた制度です。他の医療保険と比較し、財政投入しなくても良い、保険料は高くても仕方がないというのは、結局、国の責任と保険者である地方自治体の責任を免罪することになるのです。保険料が高すぎて払えない人が増えれば、それこそ皆保険とは言えなくなるのであります。

 よって、第29号議案「豊島区国民健康保険条例の一部を改正する条例」について可決に反対します。
 以上、討論を終わります。