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区議会質問
 
区民のいのちを守るため、国保料の値上げに反対する陳情について、不採択に反対する討論(森とおる)
2013/03/21

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、25陳情第3号「区民のいのちを守るため、国保料の値上げに反対する陳情」について、不採択に反対し、ただちに採択すべき立場から討論を行います。

 本陳情は、長引く不況と雇用破壊、連続する社会保障の改悪のもとで、毎年値上げされる国保料によって、滞納世帯の増、短期証・資格証世帯の増加による診療抑制のための健康破壊等の例が増えていることを看過できないとして、2年間、行なっていた経過措置を継続することおよび、保険料の引き上げをしないように求めるものであります。区議会として、この切実な声に応えなければなりません。

 区が提示した、来年度の国民健康保険料は、基礎賦課額と後期高齢者支援金等賦課額は、所得割料率が8.51%から8.36%へと0.15%下がるものの、均等割額が1,200円の値上げとなります。それに加えて、2011年度から実施されていた「2年間の経過措置」が廃止され、「新たな減額措置」が導入されることになります。
 均等割額の上昇は、低所得者や家族人数の多い世帯は特に大変な負担増となります。また、今回廃止される「2年間の経過措置」は、賦課方式が、従来の住民税方式から旧ただし書き方式に変更されると同時に導入されました。住民税方式では、収入から基礎控除、扶養控除、配偶者控除、障害者控除、社会保険料控除などを引いて計算される住民税を基礎にして保険料を計算していました。ところが旧ただし書き方式では、収入から基礎控除33万円しか引かずに計算するため、低所得者や扶養家族の多い世帯、教育費のかかる子育て世帯、障害者や障害者を支える家族など、様々な税額控除がある区民ほど影響を受けることになったのです。このような世帯の保険料が、大幅にはね上がることを回避するため、激変緩和措置を取らざるを得なかったのであります。
 「2年間の経過措置」の対象区分は3つありました。住民税非課税から、課税標準額が100万円を超え、前年中の総所得金額等から基礎控除額33万円が課税標準額の1.5倍を超える方までを3つに分けるものでした。この対象区分をご破算にし、「新たな減額措置」として、住民税非課税の方のみに実施するというものです。この変更による減額措置対象世帯は約2,900世帯です。住民税課税で「2年間の経過措置」を受けていた約10,100世帯が対象から外れることになります。さらに住民税非課税者についても2013年度は、これまで75%だった減額を50%に減らし、2014年度はさらに25%まで減らし、2015年度は減額措置を全く無くすというもので、「2年間の経過措置」と比べると、ほんのわずかばかりの減額措置であります。
 よって、今回は保険料の値上げに加え、賦課方式の変更に伴う経過措置の廃止という2重の値上げであります。そのため、1人あたりの保険料は、97,250円から98,999円へと1,749円の値上げが示されているのです。

 介護納付金賦課額については、所得割料率が1.49%から1.69%へと0.2%、均等割額が14,100円から15,000円へと900円、いずれも値上げとなり、1人あたりの保険料は、27,624円から30,288円へと2,664円もの値上げが示されており、まさに3重の値上げとなるのであります。
 以下、採択すべき理由を述べます。

 1点目の理由は、値上げが区民のくらしに多大な影響を与えるからであります。
 本区の国保加入世帯は、2012年3月末で59,851世帯と全世帯数の約4割を占めています。そのうち所得が200万円以下の世帯は、45,881世帯と約77%です。所得のない世帯についてみると23,959世帯であり、国保加入世帯の4割にも上ります。この現状を区は、「負担能力の低い所得層が多く加入している実態となっており、国民健康保険制度が抱える構造的問題の1つ」であることを認めています。にもかかわらず今回も大幅な値上げを強いているのです。
 年金受給者2人世帯で年収230万円の場合を調べてみると、116,869円から130,612円へと13,743円、11.8%の値上げ、住民税方式だった2010年度と比較すると、わずか3年間で34,842円、36.4%もの値上げです。
 給与所得者2人世帯で年収200万円の場合では、157,749円から202,245円へと44,496円、28.2%の値上げで、保険料は年収の1割を超えることになります。3年間では84,903円、72.4%もの値上げです。
 同じく給与所得者4人世帯で年収300万円の場合では、すでに年収の1割を超えていた317,699円から355,395円へと37,696円、11.9%の値上げ、3年間では何と148,790円、72%と、異常とも言える値上げになるのです。月額25万円で2人の子育て中のファミリー世帯にとって、不況で収入が上がらない中で、教育費、家賃や生活費の出費、各種保険料や光熱費の値上げ、増税など本当に苦労しているのです。このような区民にさらに保険料の値上げを押し付けるなどとんでもないことです。

 2点目の理由は、滞納世帯が増加することについてです。
 ここまで述べてきたように、経済基盤の弱い加入者が多い国保において、保険料の値上げは耐えることのできない痛みであり、これ以上払えないという世帯が増えることになるのです。保険料の滞納世帯は、2009年度が26.97%、2010年度が29.13%、2011年度が31.66%と毎年増加しています。保険料階層別では均等割世帯が36.49%と、3分の1以上が滞納世帯という異常な事態です。このことは当然、収納率にも影響しており、2011年度は、現年分・滞納繰越分保険料合計で、70.72%まで落ち込んでいるのです。保険料を滞納すると保険証が取り上げられます。本年2月末で、短期証は3,450世帯、資格証は2,095世帯と、多くの世帯が正規の保険証ではありません。特に資格証は、他区に比べて極めて高く、区民に冷たい本区の姿勢が浮き彫りになります。なぜならば、資格証は病院の窓口で全額医療費を支払わなければならないため、生活費の少ない加入者は、水光熱費を節約するために冷暖房もつけずに、食費を抑え、医者にかかることをギリギリまで我慢しています。そうすると症状が悪化したり、最悪のケースでは命に関わることになりかねないからであります。

 3点目の理由は、公的な財政負担をきちんと行なえば、保険料の値上げをする必要はないからであります。
 保険料を上げると、収納率が低下し国保財政が圧迫される、だからまた値上げをする。この悪循環が、国保制度の財政悪化と保険料の高騰をまねいているのです。その原因は、長年に及ぶ国の予算削減です。1984年に政府は、医療費の45%とされていた国保への定率国庫負担を38.5%に引き下げ、その後も国保の事務費や保険料軽減措置などへの国庫負担を縮小、廃止してきたのです。その結果、国保の総会計に占める国庫支出の割合は、1984年度の50%から24.1%に半減しているのです。また、国保加入世帯の平均所得は、20年前の240万円から、2009年度には158万円にまで落ち込んでいます。自営業者等の経営難とともに、低賃金の非正規労働者や、失業者、年金生活者など無職の方が7割以上になるなどしたためです。住民の命と健康を守るために、そして制度を維持するためにも国が、国庫負担の大幅増額をおこない、安定した国保財政にするために責任を負うべきです。区に対し、このことをどう考えているかと問うと、理事者は「全国市長会などから国に要望している」とおきまりの答弁が返ってきますが、それだけでは国は動く気配すらありません。区が本腰を入れて、国に対する姿勢を強めなければならないにもかかわらず、来年度の国民健康保険事業計画案の重点目標をみると、「財政基盤を強化することが肝要である」と相変わらず本質を避けた表現となっており、肝心要の国に対する強い姿勢がどこにもないのであります。区民の命と健康を守るため、そして国保制度を維持するため、さらには区財政からの支出を軽減するために、区長を先頭に国や東京都に対し、負担の増額を強く求めるべきです。それが実現するまでは、さらなる一般財源を投じて保険料を引き下げるべきではありませんか。今日、明日の生活をどうするか、途方に暮れている区民に背を向けていながら、借金返済や財政調整基金の積み立てに躍起になり、LRTや池袋駅東西デッキなどといった区民から批判の多い無駄な大型開発へ突き進むなど到底許されることではありません。

 ところが、区民厚生委員会の審査で、他会派の委員の質疑を聞くと、あいつぐ負担増にもう限界といった区民の気持ちが本当に分かっているのだろうかと感じました。「滞納者にはきめ細かな対応を」とか、「制度維持のためには増額いたしかたなし」や、「これ以上の区財政の投入は無理」、さらには「国も評価してほしい」など、国政でも与党の会派の意見を聞くと、どちらを向いていらっしゃるのかと思わざるを得ませんでした。
 本来、国民健康保険制度は、国民皆保険の理念のもと、高齢者や自営業者、失業者などが安心して医療を受けられるためにつくられた制度です。毎年のように際限なく保険料が上がれば、保険料が払えなくなり、保険証を取りあげられ、医療が受けにくくなっていること自体、保険制度そのものが崩壊することになるのです。これまで述べてきたように、値上げが続けば滞納がますます増加し、収納が減少するという悪循環に陥り、それこそ制度が維持できなくなるのであります。
 来年度も「2年間の経過措置」は継続し、保険料の値上げは実施してはなりません。憲法25条、生存権に則った社会保障として、誰もが安心して医療を受けられる国民皆保険の根幹としてふさわしい充実した制度であることを区民は望んでいるのです。

 よって、25陳情第3号「区民のいのちを守るため、国保料の値上げに反対する陳情」は、ただちに採択すべきです。以上、討論を終わります。