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区議会質問
 
2010年12月10日
「豊島区役所の位置に関する条例の一部を改正する条例」の可決に反対する立場から討論(渡辺くみ子議員)

 私は日本共産党豊島区議団を代表し、只今議題とされました第60号議案「豊島区役所の位置に関する条例の一部を改正する条例」の可決に反対する立場から討論します。尚、後ほど議題とされます22請願第6号「区庁舎と民間超高層マンションの合築に反対し、区民の意見をとり入れた庁舎建設を要望する請願」と22陳情第41号「新庁舎計画の見直しを求める陳情」は直ちに採択を、22陳情第47号「新庁舎建設の早期実現についての陳情」は不採択とすることを求め合わせて討論します。

 第60号議案「豊島区役所の位置に関する条例の一部を改正する条例」は豊島区役所を現在地の東池袋一丁目18番1号から南池袋二丁目45番1号に変更するというもので、施行日は別途規則で定めるとし、この改正案は地方自治法に基づき、出席議員の三分の二以上の賛成を必要とする重要事項案件として提案されました。
 庁舎の移転先である南池袋二丁目45番1号は南池袋二丁目A地区市街地再開発地区で区は市街地再開発事業で新庁舎を建設するという計画です。高さ189m、49階建て、450戸もの民間分譲マンションと商業機能との合築計画となっています。

 改めて区役所の役割と規定を見てみます。
 地方自治法では、第一条の二で「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」と規定しています。 そして第四条第1項で「事務所(すなわち区役所)の位置を定め又はこれを変更しようとするときは、条例でこれを定めなければならない」とし、2項で「住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等について適当な考慮を払わなければならない」、3項でこれらの決定にあたっては、当該地方公共団体の議会においては出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない」と定めています。
 地方自治体とは、住民の福祉の増進を図るために、主権者である住民の声に耳を傾け政策を立案、実施することが役割です。そして区役所はその役割を推進するための事務所、すなわち住民自治の拠点と言うことです。そのため位置の設定や変更は、利便性を確保し、主権者である住民が自治に参加することをきちんと保証するため、出席議員の三分の二以上の者の同意が必要とする重要事項として規定しているのです。

 さて、区が提案している庁舎の変更地は、現在旧日出小学校の建物があり、旧南池袋児童館の建物も残ったまま、庁舎の建物はどこにもありません。しかも条例案の施行日は2013年末としており、3年も先のことです。
 では、なぜ今、3年も先の庁舎の移転についての条例を決めなければならないかということです。
 その点をただすと、区は、市街地再開発事業の権利変換計画に区として同意をするにあたり、「法的な根拠はない」が、区の同意だけではなく、「しっかりと議会の議論を頂いてから返事をするのが筋」として、今回議会に提案したと答えました。要するに、再開発事業を進めるためのものであり、再開発事業の建物が完成したら「確実に庁舎が入ることを決めておく」ということです。
 しかしこの庁舎建設計画に対しては、今回、早急に決定せず区民合意を求める請願や陳情が7,000人近くの署名とともに提出されたように、多くの住民が疑問や反対を示しています。
 我が党は庁舎建設に関して、いずれ庁舎の建て変えは必要だと考えています。しかしその際、第一に区民合意で進めること、第二に必要最低限の規模で合理的な庁舎とすること。第三にこれらを進めるために、資金計画をきちんと立て、区民負担を低く抑えることが重要と主張してきました。
 この立場から改めて、現在の庁舎建設計画の問題点を指摘します。
 第一の問題点は、民間分譲マンションとの合築という点です。
 庁舎の機能、役割は「区民の福祉の増進を図り、区民の自治を司る所」であります。
 今回の市街地再開発事業として450戸もの民間分譲マンションとの合築に対し、地域説明会でも、自治の拠点としての機能がまもられるのか、大規模修繕、建て替え、日常の管理コストはどうか等、多くの疑問、質問が出されてきました。しかし区は「管理規約できちんと規定するから大丈夫」と言い続けています。
 今回の委員会審査で改めて「規約」について質しましたが、具体的な管理規約は来年度中に作成との答弁が繰り返され、さらに「きちんとした管理規約の制定や修繕計画、修繕積立金は具体的には権利変換計画が終わり、民間マンションの分譲前に再開発組合(都市再開発法)で作成する」としているのです。これでは建物が完成しすべてが進んでからということです。合築で、庁舎機能がどう担保できるのか不明のままです。
 さらに今後の建て替え等でも、儀武議員の「地権者の5分の4の賛成がなければできないが将来可能なのか」と質すと「今後10年以内には建て替えが可能となるように必ず法整備される」との答弁が繰り返されました。この間、都市計画審議会においても学識経験者の委員から同様の意見が出されています。
 公的な施設である庁舎と民間の分譲マンションの合築は、建て替えばかりではなく、日常の管理運営でも問題です。区は「今建て替え等で問題となっているマンションの多くは管理規約が無かったり、積立金が脆弱」なためとしていますが、何年もたてば、分譲マンション居住者のライフサイクルも変わり必ず足並みが揃わなくなります。まして450戸となればなおさらです。それにもかかわらず具体的根拠を示さないまま「大丈夫」などとはあまりにも無責任です。区民や専門家の指摘や疑問に対し「管理規約は平成23年度中に示す」では、庁舎移転が是か非かの判断すらできません。今回も委員会審査で「現在検討している」と答弁が繰り返されるので、改めて検討中の資料の提示をもとめました。しかし今まで出されたものと全く同様のものが出されただけです。まともな根拠も示さず、「移転は必要」では疑問は一切解消しません。
 また修繕積立金が毎年2000万円と示されています。この数字の根拠を質すと、「同様の手法で管理されているアウルスポットと中央図書館のu単価91円に合わせた」としています。しかし屋上庭園、エコベール等含めそれらがどう反映するのか不明です。実際に根拠がないということです。ランニングコストは3億5000万円。現在より1億5000万円も多くなります。この分は「1部共用部分」「全体共用部分」の経費と言い、実施設計が出ないと詳細は不明としていますが、合築でなければ必要ありません。毎年の修繕積立金は必要ですが、区の単独施設であれば区のみですみますし、シンプルにすればランニングコストも下げられるはずです。
 大規模改修、将来の建て替え等を含め「管理規約で決める」と言うのであれば、まず検討内容を示すべきです。今回の条例提案をする上で、それすら示さず審議しろとは、提案に黙って従えと言うことと同じです。
 さらに区は、今回の建築計画の手法について「区の財政難がある」「最善の方法」といいます。しかし地方自治体の財政悪化の原因は、国・都の補助金削減が大きく、また長引く不況の中で税収減が大きく影響しています。今「金が無い」と言って、将来に禍根を残すようなやり方で庁舎建設は絶対にすべきではありません。

 第2の問題は資金計画についてです。
 区が示している計画は資金計画とはいえません。
 区は今回の計画を「区財政への負担を抑えた新庁舎整備」と繰り返しています。本当にそうでしょうか。
 2008年区は「新庁舎整備方針」で資金計画を示し、「10億円のプラス」と宣伝してきました。しかし今回の計画では、「37億円の赤字」で、わずか2年間で47億円もの差が生じています。また現庁舎地の賃料について一括賃料の期間を25年とか35年とかいい、定期借地期間を50年、60年、70年などと言い出しました。また現庁舎地の年間の賃料についても、9億円だったものが、7億3000万円と1億7000万円も下がりました。
 区長は、我が党森議員の一般質問に「このような変動は想定内のもの。試算額が変動したら一括賃借期間を延ばして対応する」と答弁しています。こんな無責任な答弁はありません。「資金計画」などと言っていますが、これでは計画などとは言えるものではありません。
 区はこの間「財政難」を口実に様々な区民重要を削り続け区民に痛みを押し付けてきました。にもかかわらず「何十億と言う資金の変動は想定内」などとは、区民の財産の管理を司る自治体の長としては失格です。
 そもそも現庁舎地を今売却すれば365億円、定期借地期間が60年の場合の支払いは総額399億円。これで借り手などあるのでしょうか。しかも借り手となる事業者の公募は2013年後半に開始としていますが、この時期はすでに工事着手後で、後戻りできないのです。
 委員会審査で「事業者のめどは」との私の問いに、部長は「オールオアナッシング」と無責任な答弁を行い、区長も「現庁舎地の資産評価は高いから大丈夫」と抽象的答弁を繰り返しました。そもそも不動産市況に資金計画をゆだねる、このような手法が間違っているのです。
 さらに区は税金を投入しないなどと言い続けていますが、この間の我が党の質問で明らかにしてきたように、市街地再開発事業には111億円の補助金が投入されるのです。さらに今委員会審査で明らかにしてきましたが、2005年からの調査費だけでも9000万円を超える区民の税金が投入されているのです。「区には金が無いから、最良の方法」と言いますが区民の貴重な税金が投入されているのです。
 また日出小跡地がなくなり、南池袋児童館がなくなり、さらに現庁舎地等が最低でも50年間も民間に貸し出す。区民の貴重な財産がまさに売り渡されるのと同様であります。このような区民の財産の切り売りは認められません。

 第三の問題は区民不在という点です。
 区は区民説明会を2006年、2008年と2010年の3回行っているとしています。また区長は招集挨拶で説明は70回といいました。しかし当初5か所候補地が2か所になり最終的に日出小跡地にした時区民には事後報告。さらに2棟案から1棟案への変更も区民に聞かず、一方的な事後説明だけが行われてきました。
 さらに2009年はパブリックコメントだけです。
 2009年から2010年にかけては、市街地再開発事業に関する再開発組合がつくられ、事業計画がつくられました。これは再開発事業で行われる庁舎建設計画の根幹に当たる、それこそ重要案件です。副都心委員会で説明はされたものの、それらは東京都の許認可申請をしていると言うだけで事後報告です。もちろん全区民対象の説明会も開かれず、区民には一切の説明が無いまま区は進めてきたのです。さらにこの間、我が党が情報公開で資料要求しても重要なところは全部黒塗りの資料。また再開発組合の総会後資料請求をしても、再開発組合に聞いてからと言い、挙句の果てに室長あてに「資料要求している議員は反対の立場だから出せない」との回答が寄せられ区もそのまま受け入れているのです。議会にも区民にも詳細を知らせないまま区は進めてきました。
 委員会審査で、区長は「抽象的な答弁ばかりで申し訳ない」「できる限りの情報は提供してきた。これからも情報は提供していく」と繰り返して答弁していましたが、新庁舎建設の是非を判断する材料さえ明確に示していないのです。区は市街地再開発事業として情報は出さずに次々と計画を進め、このような計画への疑問や反対意見は"取り入れられない"とし、区民に対し「説明しご理解を頂く」と言う態度です。
 しかもこの間の地域説明会で、建物の全体の構造や風害など具体的な質問に対し、区は「今後再開発組合が説明する」と言って一切説明しませんでした。委員会で私の発言に、区長は「南池袋二三四町会からも言われ説明に行って来た」といいましたが、「庁舎建設にはこの手法しかない」と言いながら、再開発事業としての建物について、区民の質問に「説明しない」と言う区の姿勢は間違っています。
 さらに今回の地域説明会で区は「推進計画なので反対の意見はとりいれられない」と発言しました。委員会審査でこの問題を指摘すると、区は「パブリックコメントの意見に対して」と言いましたが、地域説明会でも、パブリックコメントでも同様です。これでは、何のために説明会を開き、意見集約しているのか、これは大問題です。

 その他にも様々な問題があります。
 福祉事務所の設置に関してです。委員会で課長は「今どんどんケースが増え、職員も増やさざるを得ず。全部新庁舎に入るというのは難しい」「東西に分けたほうがよい」「庁舎には相談等どういう機能を設置するか検討している」と言いました。
 そもそも福祉事務所を東、西に分けていたものを本庁舎に移したのは高野区長自身で、それが狭くなったからと今回東西に分け、今度は「地域密着の事務所を作るべき」と新庁舎から外そうとしていることは大きな問題です。委員会で指摘した通り、職員が地域に出て身近な所で相談にのることは必要なことです。しかし、新庁舎の"売り"はワンストップサービスであり、今回の提案はまさに"売り"に逆行するものです。区は「相談機能は残す」としていますが、どう残すのか、区民相談の連携はどうするのか、説明がありません。
 環境問題でも、儀武議員が「これでどれだけCO2が削減されるのか。我が党は決算委員会で資料要求してきたがいまだに出ない」と質す「豊島区としては減らない」と答弁しています。 エコ、環境にやさしい建物と言っていますが、これだけの大きなビル建設では、これ自体エコにはなりません。
 防災問題でも司令塔の役割は果たすかもしれません。しかし居住者、職員や来庁舎、客等多くの人が一か所に集中する場合、地域的の対応については心配の声が上がっています。この間、学校跡地など次々と空地を無くしている中で、人口が増えればその対応が求められるのではないでしょうか。
 先程来指摘している通り、庁舎機能の確保の担保はない、資金計画はあまりにも無責任、区民不在、「福祉の砦」はどうなるのか等々あまりにも不明なまま進められてきました。さらに今後議会の議決が求められるのは、建物完成後の2014年、保留床購入費についてとのこと。ということは今回位置変更条例が決まればすべてが進んでしまう、まさに後戻りできないということです。
 重要事項と言いながら、結局区民に充分説明もせず、情報も公開せず、疑問にも応えず、まさに区民不在のまま、一方的に進めています。庁舎は「区民の自治の砦」と言われますが、その砦を作る段階から、全く区民不在で進めています。
 これらの問題点の最大の理由は、庁舎建設が市街地再開発という手法で行っているからです。
 この間区は、南池袋二丁目地域をABCの3地区に分け、「池袋副都心区域に隣接した立地条件を活かし、地域の拠点となるよう」にと都市計画マスタープランの見直しを行い、同時期、東京都のしゃれた街並みづくり推進条例に基づき都の街並み再生地区の指定を受け、これらを上位計画としました。そして「低未利用地の活用」と言って、日出小を廃校にし、南池袋児童館を廃止し再開発事業を行うため区自ら未利用地を作り、再開発に提供してきたのです。今回提出された請願には、「区有財産の放棄と、大手マンション業者の便宜に区は手を貸すことにつながる」と指摘していますが、日出小跡地と南池袋児童館跡地で開発の土地の6割を占めており、この土地がなければ450戸もの分譲マンションなど建てられないはずです。まさに区有地を提供し、マンション業者の儲けに手を貸しているのであります。
 さらに、請願者は、付近の環境悪化と区民の住めない街づくりを推進すると指摘しています。実際に近隣地域では、4m道路が8m道路となり、直近に189mの超高層建物が建てられれば低層の住宅街は風害をはじめ様々な環境悪化となることは容易に想像できることです。地域住民からは今も開発反対の声が続いています。だからこそ請願者は今計画の全面見直しを求めているのです。
 しかし区長は、この再開発事業での庁舎建設を池袋副都心の起爆剤と位置づけ、「目指すべき都市像を実現していけるよう導く」とし、東西デッキ、LRTなどを進めるとしているのです。
 今回の条例案の提案も再開発事業を進めるうえでの権利変換計画にお墨付きを与えるためのもの。管理規約が示されないのは、「管理規約の制定は権利変換計画が終わり、民間マンションの分譲前に再開発組合(都市再開発法)で作成」となっているためです。

 過去にない深刻な経済状況です。食べることも住むこともできないなど、厳しい生活を強いられている区民が多くいる異常な経済状態なのです。今、自治体である区が最優先に取り組むべきは、開発ではなく、区民のいのちと生活を守ることです。
 今回の提案は重要事項として将来を含め、区民に対する議員の責任は大変大きなものです。自民党の委員は「将来のことは神のみぞ知る」と発言しましたが、無責任の極みであります。また「民主党は説明責任と情報公開が重要と繰り返し、今回「白紙委任状ではない」と発言しました。しかし先ほど来指摘しているとおり説明責任も、情報公開も全く不十分であり、さらに今回可決されれば、庁舎建設に向け一瀉千里です。まさに白紙委任状ではありませんか。

 以上第60号議案「豊島区役所の位置に関する条例の一部を改正する条例」の可決に反対し、22請願第6号「区庁舎と民間超高層マンションの合築に反対し、区民の意見をとり入れた庁舎建設を要望する請願」と22陳情第41号「新庁舎計画の見直しを求める陳情」は直ちに採択を、22陳情第47号「新庁舎建設の早期実現についての陳情」は不採択とすることを求め、討論を終わります。