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区議会質問
 
歴史的事実と道理に立った冷静な外交交渉による尖閣諸島問題の解決を求める意見書(案)についての賛成討論(儀武さとる)

 私は日本共産党豊島区議団を代表しまして、ただいま議題されております議員提出議案第18号歴史的事実と道理に立った冷静な外交交渉による尖閣諸島問題の解決を求める意見書について、賛成の立場から討論を行います。
 
 尖閣諸島問題をめぐって、日本と中国の両国間の対立と緊張が激化し、経済や観光など国民生活にも深刻な影響がでています。
 わが党は、日本政府が尖閣諸島の領有の歴史上、国際法上の正当性について、国際社会及び中国政府に対して、理をつくして主張することが必要なことであること。また、中国政府に対しては、中国国民に自制をうながす対応をとること、在中国邦人、日本企業、日本大使館の安全確保のために万全の措置をとるよう中国大使館に直接申し入れました。

 尖閣諸島は、歴史的にも、国際法上も明確な日本の領土です。
日本の領土であるという根拠は3つあります。
第一に、日本は1895年に尖閣諸島の領有を宣言しましたが、これは、それまで持ち主がいなかった土地を先に占有する「無主の地」の「先占」で国際法上まったく正当な行為でした。中国側は明代や清代から固有の領土だと主張していますが国家として実効支配していたことを証明する記録は一つも示し得ていません。

 第二に、中国側は1895年から1970年までの75年間、日本の領有にたいして一度も異議や抗議を表明していません。他国による占有の事実を知りながら反対の意思表示をしない場合は、その国の領有を黙認したとみなされることは国際法上の法理です。これにも中国側は有効な反論ができません。大きな弱点です。

 第三に、日清戦争に乗じて日本が不当に奪い取ったという中国側の主張ですが、日清戦争の講和条約である下関条約や、それにかかわる交渉記録を詳細に調べてみても、日本が不当に奪い取ったのは「台湾とその付属島嶼」と「澎湖列島」で、そこに尖閣諸島は含まれていません。ここでも中国側の主張はなりたたないのです。
 これほど明確な根拠がありながら、なぜ今日のような事態になっているのか。それは歴代政権の対応に重大な問題があったからです。
 中国は1970年には尖閣諸島の領有をいいはじめています。ところが日本政府は72年の国交正常化の際も78年の日中平和友好条約締結の際も、尖閣問題を棚上げしたのです。公表された議事録をみると、72年の首脳会談で当時の田中角栄首相が「尖閣諸島についてどう思うか」ともちかけ、周恩来首相が「今これを話すのは良くない」と応じて双方で「棚上げ」するという事実上の合意を交わしています。78年には中国のケ小平副首相が「尖閣は20年も30年も放っておこう」というと園田外務大臣が「閣下、もうそれ以上言わないでください」と応じています。

 本来なら日本政府は、国交正常化や平和友好条約締結時に尖閣領有の正当性をしっかりと主張するべきでした。「棚上げ」という対応はだらしない外交態度だったと言わざるを得ません。だいたい「棚上げ」ということは領土問題の存在を認めたことになります。
 にもかかわらず、その後、歴代政権は「領土問題は存在しない」という態度をとり続けてきました。国連総会で中国が具体的な論立てで領有を主張しても、日本は理を尽くした主張ができず、野田首相も「我が国固有の領土であることは明々白々」くらいしか言えない。まともな反論もできない自縄自縛に陥っているのです。

 「領土問題は存在しない」という立場は、一見「強い」ように見えても、そのことによって、日本の立場の主張もできず、中国側の主張への反論もできないという点で、日本の立場を弱いものとしていることを、ここで指摘しなければなりません。
 尖閣諸島の問題を解決するためには、「領土問題は存在しない」という立場をあらため、領土に関わる紛争問題が存在することを正面から認め、冷静で理性的な外交交渉によって、日本の領有の正当性を堂々と主張し、解決をはかるという立場に立つべきであります。 
 
 ところが、今回の自民、公明の共同提案の「香港民間団体による領海侵入及び尖閣諸島不法上陸に関する意見書(案)」では、「領土問題は存在しないという明確な事実を国際社会に示す外交努力を行うこと」などを求めています。先ほども述べたように、「領土問題は存在しない」という立場は、日本の立場の主張もできず、中国側の主張への反論もできないという点で、日本の立場を弱いものにするものです。また、「領土・領海を守るために必要な法制度の整備」を求めていますが、すでに8月29日に国会で全会派一致によって、成立した海上保安庁法や外国船舶航行法の改正によって領海警備の強化が行われています。さらなる法整備の強化を求めることは軍事力の増強による対応につながらざるを得なくなり、緊張を激化させ、感情的な対応をエスカレートさせることにつながりかねず、解決どころか、事態をさらに悪化させるものであると言わざるを得ません。

 領土問題の解決は、政府間の交渉のみならず、相手国の国民世論をも納得させるような対応が必要です。「日本軍国主義の侵略」だと考えている中国国民に対しても、過去の侵略戦争にたいする真剣な反省とともに、この問題をめぐる歴史的事実と国際的道理を冷静に説き、理解を得る外交努力こそ、いま求められています。
 よって、議員提出議案第18号歴史的事実と道理に立った冷静な外交交渉による尖閣諸島問題の解決を求める意見書を直ちに可決することを求めて、討論を終わります。
ご清聴ありがとうございました。