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区議会質問
 
李明博韓国大統領の言動に抗議し、政府に対韓国外交の見直しを求める意見書についての反対討論(小林ひろみ)

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、議員提出議案第19号 李明博韓国大統領の言動に抗議し、政府に対韓国外交の見直しを求める意見書 について可決に反対の立場から討論いたします。

 日本共産党は、竹島は、歴史的にも国際法的にも、日本の領土であるという見解を発表しています。同時に、この島を日本に編入した1905年という時期は、日本による韓国の植民地化の時期と重なっているという問題があります。日本は、1904年に「日韓議定書」、「第1次日韓協約」を強制して、韓国の外交権を事実上奪っており、かりに韓国が日本の竹島領有に異議を持っていたとしても実際上異議を唱えることはできなかったのは事実であります。竹島問題は、単に「日本固有の領土だ」と主張するだけでは問題解決にはなりません。
 確かに韓国の李明博大統領の竹島訪問については「日韓両国間の緊張を高めるような行動をとるべきではなかった」と考えます。また、天皇の訪韓条件として日本の植民地統治時代の独立運動家への謝罪を求めた李大統領の発言も「不適切」です。憲法上政治的権能をもつていない天皇に植民地支配の謝罪を求めるということ自体がそもそもおかしい、すじの違う話です。
 領土問題は、歴史的事実と国際法上の道理にのっとり、冷静な外交交渉によって解決を図ることが大事であり、感情的な対応をエスカレートさせることは日本、韓国双方とも自制すべきです。
 しかし、この意見書は冷静な外交交渉による解決の立場ではなくて、逆に緊張を激化させるものとなっています。
 
 特に、この意見書では従軍慰安婦問題についてふれ、1965年の日韓基本条約で「完全かつ最終的に解決」などと決着済みなように述べていますが、日本政府は公式の謝罪も保障もしていません。
 旧日本軍の「慰安婦」問題は、当時の天皇制政府と日本軍が朝鮮半島などから多数の女性を動員し、「性奴隷」として「売春」を強制した、言語道断の戦争犯罪です。政府機関や植民地経営にあたった総督府、軍自身が組織的に女性を集め、「慰安所」の設置や管理にも関わるなど、国家機関と軍の関与は明らかです。日本政府は1993年になってようやくいわゆる「河野談話」で、「慰安婦」問題について国の関与を認め謝罪しました。日本が侵略戦争と植民地支配の誤りを反省するなら、公式に「慰安婦」問題について謝罪し賠償するのは当然ですが、村山内閣は、「基金」による「償い金」というあいまいなやり方で政府の責任を回避したため、日本は世界からの批判の声で包囲され、孤立してきたのがこれまでの経過です。ここ数年だけでも、日本に「慰安婦」問題の解決を求めた決議や報告は、アメリカ、オランダ、カナダの各下院や欧州議会、国連機関など多数にのぼります。こうした国際社会の声にこたえるためにも、日本政府は「慰安婦」問題の解決を急ぐべきです。
 とりわけ直接大きな被害をこうむった朝鮮半島の韓国、北朝鮮などの訴えは切実です。韓国では元「慰安婦」の人たちのほとんどが「償い金」受け取りを拒否し、日本政府の公的な謝罪と賠償を求め、裁判にも訴えています。
 日本政府は1965年の日韓基本条約で、請求権の問題は「解決済み」といっていますが、これは通用しません。そもそも条約交渉当時、「慰安婦」問題は俎上にのぼっていません。交渉の日本側責任者であった椎名悦三郎外相も、条約の成立後「両国の解釈が重大な点において違うというような場合」は「両国の当局者が協議をすることも起こりうる」とのべています。「解決済み」だとして韓国側の要求を拒否するのは成り立ちません。
 韓国では昨年8月、憲法裁判所が「慰安婦」問題で日本と交渉しないのは憲法違反だと判決し、日本との交渉を急ぐよう督促しました。元「慰安婦」と名乗り出た人たちは高齢で亡くなる人も相次いでいます。解決を遅らせること自体、重大な人道問題です。
 昨年12月李大統領は首脳会談で、「この問題が解決されればさまざまな問題にも資する」と発言しました。日本が過去の清算に積極的に取り組むことは、世界の国々との信頼と友好発展に不可欠です。ところが日本の一部の政治家、たとえば最近では橋下大阪市長が「強制連行の証拠はない」と発言し韓国国民の感情を逆なでするようなことをしているのです。
 
 竹島問題をめぐって今問題なのは、日韓両政府の冷静な話し合いのテーブルがないことです。日本が過去の植民地支配に対する根本的反省と清算をおこなうことが、領土問題での冷静な話し合いのテーブルをつくるうえで不可欠になっています。とりわけ、1910年の韓国併合について、不法・不当なものだったということを認めること、日本軍「慰安婦」問題などの植民地犯罪について謝罪と賠償をおこなうことが必要であります。そうした立場のうえに、両国で歴史的事実をつきあわせた共同研究をおこない、解決への道を開くことが求められているのです。
 この意見書では、民主党政権が対韓国融和路線をとり、しばしば国益を棄損する対応をした結果、韓国の行動に歯止めがかかっていないとしています。「歯止めをかけるために」韓国外交の総合的な見直しを求め、結局は対韓国強行路線に転換を求めるものであります。これでは問題は解決しません。
 
 今年は、豊島区と韓国ソウル特別市東大門区との友好都市協定から10周年。今月1日の区政80周年式典には東大門区から出席する予定でしたが、9月に「いい時期ではない」との連絡がきて出席しませんでした。区は、少年野球の交流が縁で友好都市になり毎年8月子どもたちが互いの国でホームステイしていることについて「来年も交流は続けたい」としています。こういう時期に豊島区議会がこのような意見書をだすべきではありません。
 よって議員提出議案第19号李明博韓国大統領の言動に抗議し、政府に対韓国外交の見直しを求める意見書 の可決に反対を表明し、討論をおわります。