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区議会質問
 
2012年度予算案についての反対討論(渡辺くみ子議員)

 私は、日本共産党豊島区議団を代表し、ただいま議題とされました、第21号議案、平成24年度豊島区一般会計予算、第22号議案、豊島区国民健康保険事業会計予算、第23号議案、豊島区後期高齢者医療事業会計予算、第24号議案 豊島区介護保険事業会計予算に反対の立場から討論を行います。

 東日本大震災からちょうど1年、改めて被災された方々にお見舞いを申し上げます。
 被災地では、懸命な努力が続けられています。復興への展望を本格的に切り開くためには、その要である「働く場」の確保など、被災者の生活と生業(なりわい)の再建に国がその責任を果たしきるべきです。原発問題でも、東電と国は被災者への全面賠償に背を向け、除染も遅々としてすすんでいません。根拠もなく「収束宣言」をした政府にたいし、多くの国民、被災者から不信と憤りの声があがっています。
 野田政権は「社会保障と税の一体改革」で、社会保障の切り捨て、無駄遣いの温存と大企業・富裕層への減税ばらまき、消費税増税の先取りなど、自民党顔負けの逆立ち政治を推し進めています。さらに民自公は労働者の派遣を継続する派遣法改悪案を可決しました。
 これらの動きの中で、社会保障は戦後初のマイナス予算となり、削減は高齢者から働き盛りの世代まで国民の暮らしを直撃し、「孤立死」や「孤独死」が続発するなど国民生活はますます深刻化しています。
 内需低迷と巨額の財政赤字という現状を変えるためには、今政府がやるべきことは、無駄遣いの一掃と大企業・富裕層が応分に負担する税制・財政の改革で消費税に頼らず財源を生み出し、社会保障と財政の再建を図ると同時に内需主導への経済改革を、全力を挙げて進めるべきです。
 東京都においても、外かく環状道路をはじめ巨大な道路や港湾施設の建設、さらには八ツ場ダム建設などの浪費的投資が拡大され、また外国企業を呼び集める巨大開発の推進などが最重視されています。さらに「オリンピック招致」や「東京をアジアの司令部にする」ことを至上命題とする石原知事のもとで、4000億円をこえるオリンピック開催準備基金を温存し、財界・大企業の要求である過大な産業基盤整備のための投資を優先するなど、都民の福祉・くらしを守るという地方自治体に最も求められる立場から大きく逸脱しています。都の予算は12兆円近い財政規模です。浪費をけずり、オリンピック開催準備基金などを適切に使えば、都民施策は大幅に拡充できます。

 このような国や都の動きのもとで区民の生活はどうでしょうか。
 納税者の課税所得が200万円以下の区民は2011年度では57,3%にもなっています。反対に200万円を超える所得者層は大きく減少しており、生活保護受給者も大幅に増えるなど、厳しい生活を強いられている区民の実態がこれを見ても明らかです。
 働かなければ生活できないが保育所に入れない、毎日ハローワークに行っているが仕事が無い、派遣の仕事をしているが半年更新で不安、利用料が高くて必要な介護が受けられない、入院と言われたがお金がかかるので外来で見てもらっている、などなど私どもの所には、連日深刻な相談が寄せられています。
 また50代後半のAさんは「都営住宅に申し込んでいるが当たらない、家賃が払えない」と30年以上住み続けた豊島区を離れ、都下に転居しました。しかし職場が遠くなり「毎日4時起きで体がつらい」と訴えています。まさに政治の欠陥の被害者です。こういう深刻ななか、区民に直接関わる自治体として、区民の実態を直視し、いのちと暮らしを守ることを最優先にした区政実現に総力を挙げて取り組むことが、今切実に求められています。

 この立場から日本共産党区議団は、2012年度予算審査にあたり、第一に区民生活を守る財政運営になっているか、第二に区民の暮らしを直視し切実な要望に応えるものになっているか、第三に将来にわたって区民が暮らしやすい街づくりにしようとしているか、の観点で審査にあたってきました。

 第一に区民生活を守る財政運営になっているか、についてです。
 区は昨年10月に依命通達を出し、56億円の財源不足があり、その歳出対策として13億円の歳出抑制の精査を行い、さらに義務教育施設整備基金の積み立て減を6億円とし、また歳入確保では財調基金約19億円を取り崩す予算案を提案しました。
 民主党政権は自公政権に引き続き、「地域主権主義」をより一層進め、地方自治体に仕事を押し付け、自治体本来の住民福祉の機関という役割を大きく変質させ、さらに都市間競争を看板にした大企業による大型開発を推進しています。
 区長はこれらの流れにそって、区民に「財政難」「景気に左右されない強固な財政基盤を作る」「身の丈をふまえた健全な財政運営を」として、リストラ、合理化、住民犠牲の行革を実施し、区民サービスを大幅に削減してきました。
 こうして区民に対してはやるべきことはやらず犠牲を強いて、反対に基金をため込み、3年で125億円という行き過ぎた借金返済を最優先にしてきました。そして「財政を立て直してきた」と繰り返し発言してきたのであります。
 しかし今予算では56億円もの財源不足です。区長の言う「強固な財政基盤を作る」「景気に左右されない財政運営」は達成できなかったということです。区長が進めてきた財政運営は間違っていたということです。
 ところが、わが党が区長に、財政の悪化を招くこととなった財政運営の責任を問うと「責任を問われるようなことはない」「財政健全化によって区財政が安定し、区民サービスの充実が図られた」との答弁を繰りかえし、さらに来年度予算では、新規・拡充事業は160事業で22億8000万円を盛り込んだ、可能な限り対応したと言います。
 しかし「未来戦略推進プラン2012」をみますと、新規・拡充事業と言いながら実際には予算を削減しているものが沢山あります。今年度、重点施策としている防災対策の一つで戸建ての建築物耐震化促進事業は、今年度予算は1億1100万円、ところが来年度は2500万円で、なんと8600万円も削減しているのです。そして都の補助事業である緊急輸送道路建築物耐震化助成事業を組み込み、拡充したというのです。その他にも実際には予算を削減しておきながら、新しい事業を起こして新規・拡充事業としているものも沢山あります。こんなひどいことはありません。まさにごまかしであります。
 さらに将来の財政運営について問うと、「聖域なく歳入・歳出を精査し見直していく」と強調。結局また同じ手法、やり方で、区民サービスを削り続け、犠牲を強いるということです。自治体の長としてあまりにも区民に冷たい姿勢であります。

 では、歳入確保についてはどうでしょうか。
 我が党はこの間、強固な財政基盤を確保するためには、国や東京都の財源圧迫に対し唯々諾々と受け入れてきたことが大きな問題と繰り返し指摘し、その結果、生活保護、就学援助、特養ホームなどについて、財政支援を少しずつ、区長会などを通じて、国や都へ要望するようになりました。
 ところが今予算では「持続可能な財政基盤の確保」と言いつつ、国や都への働きかけや、これまで削られてきた財源の復元などについては一切触れられていません。それどころか、「地域主権」「権限の委譲」などと称して、新たに様々な仕事が課せられましたが、財源ははっきりしないままです。またもや国の言いなりとなっています。
 そのうえ使用料や手数料など「受益者負担」と称して、引き上げを検討することを明らかにしました。歳入確保でも、同じやり方で区民にさらなる負担を強いるということです。そもそも区有施設は税金でつくられたもの、区民が廉価で利用するための施設です。それを「受益者負担」などとして区民に負担増を強いることは許されないことです。
 さらに歳入確保の観点が間違っており、結果的には財政を悪化させることになりかねないという問題です。
 予算の重点施策では、都市再生、魅力あるまちづくり、価値あるまち、地域ブランドなどの表現が、街づくりでも、中小企業対策でも、文化、観光、環境などあらゆる分野に見られます。
 区長は、これまでも「都市間競争に勝つ」「魅力あるまちが新たなエネルギーを生み出す」「来街者が来ることがポリシー」と何回も繰り返し発言していますが、区長が進める区政は、「豊島区の価値を上げる」それを全国に示すことで、来街者を増やす。そうすればお金を落してくれるし、土地の価値も上がる、金持ちが住むようになれば、税収も上がって歳入確保につながるという構想です。
 垣内議員がこのことを質すと区長は「その通り」と答弁しました。要するに、まわりまわって究極の目的は、大型開発などの先行投資で金持ちを呼び込むためのものであることがはっきりしました。
 結局は、所得の低い人が追い出されることを進めているのです。

 今、財政が逼迫しているという時に、後でも述べますが、人を呼ぶための先行投資的にLRTとか東西デッキなど進めたら区財政はいくらあっても足りません。
 西部地域の複合施設計画が進められています。区長は、東の新庁舎に対峙する西のシンボルと言いますが、これも文化、地域ブランドを名目にした施設統合です。説明会では区民からも、身近な施設がなくなる、使い勝手が悪くなる等の声が寄せられています。また総工費45億円で一般財源を35億円もつぎ込むという計画に対しても、区民からは財源が心配、本当に大丈夫かとの声があがっています。建物は着工したら後に引き戻せないのです。
 今後、学校の改築、特養や保育園の増設など区民のための投資的経費が必要な時だけに、人を呼び込むための投資的もの、すなわち区民にとって不要・不急なものはきっぱりとやめるべきです。
 この間、財政破たん、逼迫となった自治体の多くは、来街者を増やす、観光客を呼ぶとして、「魅力ある街づくり」と開発を進めた結果、にっちもさっちもいかずに破たんに追い込まれ、活性化どころか廃墟の街になってしまったのです。
 人を呼び価値を上げて、歳入確保を図るといってもうまくいかない、このような教訓を学び、こうしたやり方は改めるべきです。

 第二に区民の暮らしを直視し切実な要望に応えるものになっているか、についてです。
 区は予算編成方針で「福祉・健康・子育て・教育等の施策の充実」に取り組むとしていますが実際はどうでしょうか。
 1つ目に保育園の待機児解消です。
 わが党区議団は、日を追うごとに増え続ける保育園の待機児童を抜本的に解消し、ゼロにするために区が責任をもって認可保育園の増設を基本に進めるべきと毎回質してきました。我が党の指摘をうけ、保育計画については、5ヵ年で300名の増員計画を450名に上方修正するなど、前進面は伺えるものの、これで待機児童をゼロにできる保障はありません。来年度の認可保育園の定員増は、改築・改修と分園による取り組みで60名であります。
 来年度の待機児童の見込みは、一歳児では、二次募集の募集枠8名に対し、181名、2歳児では9名の募集に125名ですから、今年度の171名の待機児童を上回ることは明らかです。需要に応じた対策をとってこなかった区長の責任は重大です。 
 なかには両親ともフルタイムの共働きで、入所指数が満点の20点を満たしているのに入所できない子どもがいます。この子どもはいったい誰に保育せよと言えばよいのでしょうか。
 理事者は、認可保育園に入所できない子どもは、認証保育所や臨時保育所、保育ママなどで、対応するといいますが、高い保育料を払わなければなりません。また南長崎地域に開設予定の認証保育所は、約100u程度の保育室に40名の子どもを押し込むとしており、保育所としてふさわしいとは言えません。
 区は、今年度から認証保育所の保育料を助成する制度をわが党の提案をきっかけに創設しましたが、認可保育園からくらべ、補助しても高い保育料を負担しなければならないのです。認証保育所の誘致を待機児童解消の基本にすることは問題です。しかし当面、最低でも認可保育園と同じ保育料となるようその差額を直ちに補助すべきです。
 また政府は、「子ども・子育て新システム」関連法案の骨子を決めました。区市町村が保育の実施に責任を持つ現行の公的保育制度を解体し、保育を市場化・産業化することが柱であり、区長が新システムを擁護する立場に立っていることは問題です。

 2つめは特別養護老人ホームについてです。
 特別養護老人ホームの待機者は昨年12月末で、1245人、そのうち区が緊急に入所の必要性があるとしているAランク待機者は435人と増え続けています。このように待機者を増大させたのは、この7年もの間、特養ホームを建設してこなかったからであり、区長の責任は重大です。
 特養に申し込んでも入れず亡くなった方は昨年度で227人にもなっています。待機者が一番多い菊かおる園では、なんと883名も待っているのです。
 これまで区が、やってきたことは民間の誘致策であり、その誘致にことごとく失敗してきたのです。失敗の理由も明確です。この間、国や東京都による補助制度が廃止や削減されているため、民間が建設し、運営するには負担が大きすぎるからです。これを区が容認してきたために特養の増設が進まない大きな要因になっているのです。
 千川小跡地と旧中央図書館跡地に建設計画が進んでいますが、合わせて160床です。
これが完成しても待機者は大きく減る見込みはありません。区は、適地がないと言いますが、今後売却を予定している区の施設や公有地など候補地はあります。今からすぐにでも計画を立てなければ特養建設は進みません。介護施設の基盤作りは区の責任です。高い介護保険料を払っても、必要な介護が受けられない制度では、保険とは言えません。直ちに待機者に見合った増設を区が責任を持って進めるべきです。

 3つめに防災についてです。
 東日本大震災と原発事故から1年が経過しました。被災者の生活と生業(なりわい)を再建し、被災地の復興を果たすこと、原発事故の被害から住民のくらしと健康を守ることは、政治に課せられた最重要、最優先の課題です。しかし、対策は遅々として進んでいません。それは政府の取り組みがあまりにも遅く、その規模も小さいからです。その理由は、自公政権時代、防災分野に「自助、共助、公助」にもとづく役割分担の考え方を持ち込むことで、公の役割を否定する道に踏み出したからにほかなりません。石原都政も同様に震災予防条例を改悪し、予防の文言を削除し、自助、共助にもとづく役割分担を東京の防災活動に押しつけたのです。本区の防災計画もそれにならっているため、被害をどう防ぐのか。この観点が不足しているのです。
 ようやく出された「震災対策の基本方針」は、人的被害と建物の倒壊被害をどれだけ減少することができるのかといった分析が不足しています。またマグニチュード7,3規模の地震が発生した際の区民の避難者予想数57000人に対し、避難所の収容可能人数は33000人しかないことについても掲載はなく、避難所をどのように増設するのかといった観点はありません。住宅の耐震化についても、あらゆる対策を講じて、その財源については、国と東京都に強く求めるべきです。それが公助であり、公の責任です。この姿勢がなければ生きた防災計画にはならないのです。

 4つ目は生活保護についてです。
 孤立死や孤独死が続発している中、全国の生活保護受給世帯は200万件を超え、その勢いは増すばかりです。
 本区でも1月末時点で6140世帯と増え続けています。生活保護受給増にともない、マスコミが不正受給を取りあげるケースが増えています。仕事をして得た収入を隠すなどの行為は許されるものではありません。しかし、不正受給は極々限られたケースなのです。「病気があって働けない」、不況下で失業率も高いために「働きたくても仕事がない」など、様々な問題を抱えている受給者の方が圧倒的に多いのです。マスコミの取り上げ方は異常であり、まさに害悪といえるものだと考えます。政府が進める「社会保障と税の一体改革」で、年金が引き下げられ、消費税が増税されることによって生活保護世帯が、ますます急増することの方がよっぽど大問題ではありませんか。
 生活保護世帯の増加にともないケースワーカーの増員が追いついていません。受給者は周りから孤立していることが多く、ぎりぎりの生活を余儀なくされているために生活費をガマンして低栄養状態で病気になりがちです。就労のためにも職員のアドバイスがとても大事です。本区のケースワーカーは現在60名で、1人あたりの担当件数は100件を超えています。社会福祉法では80件が標準数とされており、大幅に不足しているのです。生活保護から自立をめざしているなど、受給者一人一人にきめ細かい対応をするためにケースワーカーの大幅増員を求めます。

 5つめは障がい者福祉についてです。
 自公政権が2006年に強行した障がい者自立支援法は、障がい者に原則1割の「応益負担」を強いる過酷な制度です。この間、政府は自立支援法を廃止し、新しい障がい者総合福祉法の制定を約束していましたが、今回、厚労省が示した法案概要は、原則無償化を見送り、「障害程度区分」も盛り込み、対象とする難病患者の拡大も一部にとどめるなど、障がい者の生活実態や支援の要望が反映されない仕組みです。許されるものではありません。
 さて、私たち区議団は震災時に二次避難所となった仙台の施設を視察してきました。日常は障がい者の通所施設ですが、福祉避難所として高齢者を中心とした宿泊所となり26日間対応したそうです。物資や人的対応など「想定外」の対応が求められ本当に大変な状況が分かりました。また仙台市では、福祉避難所として当初52施設と協定を締結していましたが、実際に受け入れができたのは40施設だったそうです。
 豊島区の福祉救援センターは、高齢者受け入れ施設は43施設、障がい者受け入れ施設は6施設です。しかも障がい者受け入れ6施設中の3施設は心身障害者福祉センター内に併設されており、実質的には建物として一か所です。これでは全く足りません。
 しかも身障センターは配管が劣化するなど早急な施設改修が求められており、しかも施設自体が旧耐震施設です。にもかかわらず、区は大規模改修には代替施設が必要で、改修は2017年と何と5年も先としています。身障センターは障がい者にとって、日常的にも重要な施設です。耐震補強を含め改修は待ったなしです。直ちに具体化することを改めて求めます。また福祉避難所としての福祉救援センターも大幅に足りません。増設を含め、在り方の検討を直ちに進めるべきです。
 6つ目は中小企業支援策についてです。
 長引く不況、経済危機に加え、区内の中小企業は、商店に限らず、深刻な状況になっており、対策をとらなくてはならないことは、区も認識しています。
 長い間、商売をしている店を閉鎖しなければならないことは、商人にとっては、断腸の思いです。
 区は、いろいろなメニューを取り揃えて経営を後押ししている、ビジネスサポートセンターによる販路拡大や商店街の活性化についての対応もしていると言います。しかし、支援のメニューを並べても、廃業は後を絶たない、売り上げが伸びないという現状です。消費購買力を上げなければ、消費が落ち込み、経済が悪くなるといった悪循環を断ち切ることはできません。
 今、商売をやっている人たちから寄せられるのは、「売り上げを伸ばすには、お客さんの財布を開いて買っていただかなくてはならない」「安くしなければ売れない」という声です。
 消費税についても価格に転嫁すれば、ものは売れなくなる、売るためには仕方なく自ら抱えている、これが10%になったら商売はやっていけないといった声が大多数です。にもかかわらず区長が、増税を擁護する態度は許せません。
 こうした中で、来年度予算では、産業振興による都市活力の創造について推進していくといいますが、区長の進める中小企業支援は、まちのブランドを上げ、商売できる人を呼び込むという支援であって、今困っている中小企業を支援し、救済するものとはなっていません。これではさらに商店街は衰退し、商売をしてきた区民は追い出されることになります。

 7つ目は住宅対策です。
 生活に困っている区民の救済策が求められていますが、中でも住宅対策は喫緊の課題です。低廉で安心して住み続けられる住宅が必要不可欠です。今年度の募集状況は、区営住宅がわずか2戸に対し応募は130人、福祉住宅15戸に対し応募は200人と少ない空き家に応募が殺到しています。この間、わが党は再三増設を求めていますが、区は都営住宅からの移管しか考えていません。移管で区営住宅が増えたとしても、すでに入居しているわけですから空き家募集があるわけでもありません。本区はそもそも都営住宅自体が少ないのですから、東京都に都営住宅の増設を働きかけるように求めても、それすら行おうとはしないのです。
 家賃助成についても、高齢者世帯等住み替えの新規利用者は、前年度が9件、今年度は4件のみ、子育てファミリー世帯向けは、前年度が12件、今年度は23件にとどまっています。利用条件が実態に見合っていないことが明らかであり、ただちに見直すべきです。
 区民住宅の今後のあり方と、区内民間住宅の空き家、空き室については、区営住宅や福祉住宅への転用を検討し早急に実現することを求めます。
 
 8つめは教育について3点指摘します。
 1点目は私費負担についてです。
 リストラなど親の経済状況が悪化するなかで、子どもの貧困問題はますます深刻になっており、就学援助の認定率は小学校で約2割、中学校で約3割となっています。
 ところが2011年度の私費負担は中学3年生で155,390円、小学6年生で107,766円と高額のままです。2011年3月に出された定期監査では「義務教育無償の本旨に鑑み、私費負担を軽減し、可能な限り公費負担により実施できるよう検討されたい。」と指摘しています。しかし教育委員会は、検討したが23区全体の状況を見て判断した、改善はしないとしています。教育委員会のこのような判断は義務教育の無償化、教育の機会均等から見ても許されるものではありません。
 また義務教育の命綱である就学援助制度について、国は「三位一体改革」で国庫補助を廃止し、国が責任を持たない一般財源化しました。我が党はこの間、再三復活を国に求めるよう指摘してきましたが、今回やっと教育委員会も認めました。そうであるなら、豊島区独自での制度の拡充にも取り組むべきです。
 
 教育の2点目は池袋本町地区校舎併設型小中連携校についてです。
 池袋第二小学校地に防災ひろば用地を加えた土地に、池袋第二小学校と文成小学校を統合し、合わせて池袋中学校の校舎を建てる。隣接する池袋中学校の土地に、中学校の校庭を整備するという計画が進められています。元々は、それぞれの土地に、統合した小学校と中学校を別々に建設する計画だったものです。
 教育委員会は、小学校、中学校の9年間を小1プロブレム、中1ギャップ等の解決、学びと育ちの連続性に焦点を当てる。工事期間の短縮、建設経費の削減などが期待できるとして進めています。しかし、子どもの学び、成長、発達にとってどのような影響があるかの検証は不十分です。また、中1ギャップの解消と言いますが、この確証もありません。小学校6年生は学校のリーダーとして自力を付ける大切な時期ですが、この機会を失いかねない事態も生じてしまうのです。
 そして重大問題として中学から通うことになる池袋第一小学校の子どもたちへの影響は何ら解決されていないのです。このように問題が山積し、また地域住民からは反対の陳情が議会に出されています。これらを見ても計画は見直すべきであります。

 教育の3点目は子どもの自転車ヘルメットの着用率向上に向けての普及啓発事業についてです。
 区はセーフコミュニティの取り組みの重点として、子どものけが・事故予防、学校の安全(セーフスクール)などを課題としています。23小学校のうちの一つである朋有小学校をインターナショナルセーフスクールとし、児童の自転車事故を無くすために、全児童を対象にヘルメットの購入費用一つ3000円相当を予算計上しました。一方、他の22小学校の児童対象の事業はヘルメットを購入の際、今年度予算では2000人を対象に2000円の補助をするとしています。
 なぜ同じ区民、子どもなのに1000円もの差をつけるのでしょうか。教育委員会は朋友小の児童は「安全教育を受けている」ので、全区の「模範的役割を担う」からとしています。
 しかしこれは二重の誤りがあります。一つは他の小学校では安全教育の機会さえ与えていないのに「やっていないから」と1000円の差をつけること。もう一つは、区立の学校は、公教育の場であるのに23校中一校を選び他校と差をつける、教育委員会が最もやってはいけないことなのです。
 本当に自転車事故を無くすのにヘルメットの着用が効果があるというならば、区民の子どもは等しく3000円の補助をするべきです。学校の違いで子どもに差があってはなりません。
 地方自治法には、自治体は「住民の福祉の増進をはかる」となっています。安心・安全をことさら声高に言わなければならないのは、区が地方自治体の「本旨」に沿っていないからではないでしょうか。
 わが党は是正を求めましたが、区長も教育委員会も拒否しました。そこで、修正案を提出しましたが、各会派の皆さんは否決しました。
 こんな道理の無いことを区民は納得するはずがありません。

 次に審査の第三の観点である、将来にわたって区民が暮らしやすい街づくりにしようとしているか、についてです。
 区は新庁舎建設を起爆剤として池袋駅中心の開発を進めており、その一つとして、昨年、池袋副都心交通戦略を策定しました。これは自動車に過度に依存しない「人と環境に優しい」都市へ見直すために交通戦略を検討するというものです。
 これらの計画が区民にとって、将来にわたって真に暮らしやすい街づくりとなるのか、についてです。

 1点目は新庁舎問題です。
 今年2月から新庁舎建設が始まりました。来年度の予算は庁舎室内プラン実施レイアウト作成、管理規約の検討等で2983万円とし、これらの資金経費は2010年に提案された整備推進計画に示されている140億円に含まれているとしています。そして資金源は、同じく2010年度計画の現庁舎地活用収入で定期借地料25年分一括受け取り額143億円としています。しかしこの資金計画が現在の経済状況からして妥当かどうか、直近の不動産市況については、2014年度に誘致先の公募をかけるのでその時点で調査し、25年一括受け取りか35年一括受け取りかを検討するとしたままです。
 また2008年に提案された整備方針では区民センター敷地利用経費が含まれていましたが、2010年の整備推進計画でははずされています。この問題を質すと、これもその時点で必要であれば、35年一括受け取りを検討するなどして対応するとしています。
 しかしこれだけの大事業を行うのですから、資金計画を検討し、その裏付けのもとで行うのは当然のことです。しかも工事を始めているのです。具体的な資金計画を区民にも示さず行うやり方は大問題です。さらに合築施設での、区庁舎としての「公共性の担保」についても全く明らかにしません。
 自治の砦としての機能はどうなるのか、子どもや孫の代までつけを残さないのか、将来の建て替え等はどうなるのか等々、工事が始まってもいまだに何一つ明らかにしないというやり方は、区民無視の最たるものです。
 2点目はLRT路面電車と池袋駅東西デッキです。
 LRTの事業費は約70億円、東西デッキは150億円が想定されています。どのようにして莫大な費用を捻出するというのでしょうか。しかも区民の利便性のためではなく、池袋にいかに来街者を多く呼び込むかといった事業です。このようなやり方で来街者が増えるはずはありませんし、たとえ物珍しさで一時的に観光が増えたとしても区民にとって何らメリットはありません。どちらの事業も区民からは疑問と批判の声が相ついでおり、これのどこが魅力あるまちづくりと言うのでしょうか。「聖域なき事業の総点検を行う」と言いますが、これこそが「区長の聖域」ではありませんか。
 一方、区民からは「LRTよりもコミュニティバスを走らせて」という声が、乳幼児をかかえる家庭、高齢者から日増しに高まっています。23区では18区が運行し、すべての隣接区では運行しているのです。この要望が出されるのは当然のことです。しかし区はこれらの区民の要望を認識していながら検討さえ行おうとはしません。コミュニティバスが駅、病院など様々な施設を結び、区民の外出の機会を支える、まさに区民が求める公共交通機関なのです。
 区民の意見を真摯に受け止める姿勢が欠落しています。区が一方的に進める押しつけの大型開発では、魅力あるまち、価値あるまちづくりにはなりません。

 3点目は池袋東口駅前を歩行者空間にする、という計画についてです。
 区は「道路空間のウエイトを歩行者に戻し」「駅からまちなかへと人の流れを生み出し、住む人、訪れる人にとって楽しい街の実現」のため、2019年の環5の1道路の地下化の完成と合わせ、池袋東口駅前を歩行者空間にするとしています。
 環5の1道路は、現道の無い所につくられた道路です。かつて区も区議会も建設に反対したにも関わらず、都が建設に固執し、最終的には我が党のみ反対のもとで決定されたのです。その時、地元住民の意見を反映させ、地域環境を守るためとして、地上道路は「生活道路」とし、通過交通は地下道路にと計画されたのです。
 しかし、池袋東口駅前を歩行者空間にすれば、「人と環境に優しい」都市、「住む人に楽しい街の実現」どころか、通過交通が地上道路も占領することは明らかです。結局、「来街者が来ることがポリシー」などとする、区長の「街づくり」のしわ寄せを区民に押し付けるものです。
 このような区の計画は許されません。直ちに検討し直すべきです。

 さて具体的に3点について取り上げてきましたが、区は都市間競争として再開発事業による新庁舎建設や、LRT、東西デッキなどの大型開発には国庫補助がつく、財調があると飛びついてきました。しかし多額な財政負担があることが改めて確認されました。
 区長は答弁の中で、魅力ある街をどうつくるか、区は区民だけのものではない、来街者が来ることがポリシー、シンボルとなるような街づくり、と繰り返し発言しました。さらに中央図書館の利用は区民40%、来街者60%と言い、区民外の利用が高いことを大きく評価しました。しかしこの事業で保留床購入費には巨額な区費が投入されています。一方で雑司が谷図書館を無くし、この間再三取り上げて来た分室の設置も拒否したままです。
 これらの計画は、将来にわたって莫大なつけを区民に負わすこと、地域の環境を壊すことは明らかで、結局、区民に目を向けていないということです。
 先程の財政運営でも述べましたように、魅力あるまちづくり、価値あるまち、地域ブランドなどの表現があらゆる分野で見られますが、すべての分野で人の住めないような街づくりを進めているということです。

 以上3つの観点から来年度予算を見てきました。予算の中には、特養ホームの増設の方向、がん検診の無料化の拡充、図書館司書の増員、保育園など区有施設の耐震補強や改修など、わが党の提案で一部前進した部分はみられますが、これまで述べてきた理由で、2012年度一般会計予算に反対します。

 次に3特別会計についてのべます。
 まず国民健康保険事業会計についてです。
 またもや来年度1.438円の値上げです。今年度「旧但し書き方式」に変更し大幅に保険料を引き上げしましたが、来年度もさらに上げるというのです。
 先ほど森議員が発言しましたように、国保加入世帯は60,127世帯、そのうち所得が200万円以下の世帯は77%、所得のない世帯は、加入世帯の4割にものぼり、高額な保険料が払えず、収納率は70%にまで落ち込んでいます。景気悪化や国の負担増、仕事が減り収入が下がったなど、区民の生活実態は本当に深刻だということです。
 保険料を滞納すると保険証が取り上げられます。本区の短期証は9,371世帯、資格証は2,022世帯で、合わせると国保加入世帯の2割近くが正規の保険証ではないということです。資格証は病院の窓口で全額医療費を支払わなければならず、高すぎる保険料を払えない世帯がなんで10割もの医療費を払えるのでしょうか。医者にかかれず、症状が悪化し、まさに命に関わる重大問題です。しかも資格証は他区に比べて発行数が断トツに多いことを区も認めていますが、本当に異常な事態です。命を守るべき保険制度で、命の取り上げにつながる資格証は絶対に発行すべきではありません。直ちにやめるべきです。
 今年度から保険料の計算方法が「旧ただし書き方式」に変更になり、大幅に跳ね上がることになり、その抑制策として2年間、経過措置がとられています。それでも大幅な値上となっており、経過措置が無くなればさらに値上げとなります。また同時に保険料が入らなければ保険制度そのものにも影響することになります。この経過措置は何としても継続すべきです。
 毎回指摘していますが、そもそも国民健康保険制度は国保法の第一条の「目的」に示されているとおり、社会保障です。だからこそ、だれもが安心して医療が受けられる保険制度を維持するために費用の45%を国が負担してきたのです。国庫負担を引き上げ、保険料を引き下げ、加入者が安心して医療を受けられる制度に戻すことが、制度の存続につながるのです。減らしてきた政府の責任は重大ですが、それを唯々諾々と受け入れてきた区長の責任も問われます。保険料は値上げすべきではありません。そして国に対し、国庫負担を大幅に引き上げるよう強く求めるべきです。
 次に後期高齢者医療事業会計についてです。
 後期高齢者医療制度が実施をされて5年目を迎えます。民主党は廃止を提案していましたが、政権に就いたとたん廃止の方向も出せず、マスコミでは、今回の保険料の大幅アップにも影響していると報道しています。直ちに老人保健制度に戻すべきです。
 このような背景のもとで、4月からの保険料は、所得割率が7,17%から8,19%に引き上げられ、限度額も55万円に引き上げ、また前期に据え置かれた均等割が2,300円増の40,100円とし、結果一人当たりの2012年度の年平均保険料は93.258円で、今年度より10.3%と大幅な値上げで、すべての所得階層が上がります。
 本区では2012年1月末現在、滞納者は760人、短期証の発行は22人です。短期証発行について区は無保険期間は無いとしていますが、高齢者の罹患状況を考えれば、発行すべきではありません。さらに差し押さえ件数は2011年度で5件となっています。区は「再三働きかけている」「高額所得者や『払わない』人がいる」と言いますが、差し押さえの判断は区市町村の権限であり、23区でも差し押さえを行っている区は6区のみです。一般質問でも指摘しましたが、いかに豊島区は高齢者に冷たいかと言うことです。改めて指摘します。直ちに差し押さえは止めるべきです。

 最後に介護保険事業会計についてです。
 第五期事業計画での平均保険料は年額62.280円となり、15.877円もの大幅な値上げとなっています。高齢者の負担増は本当に深刻です。
 介護保険の運用でも問題があります。
 同居人がいることを理由にヘルパー派遣をしない実態は改善されていません。さらに今回は同居どころか隣家に80歳代の「親族がいる、親族の長男がいる」ことを理由に地域包括支援センターは、当初ヘルパーの派遣を認めませんでした。
 この間我が党は機会あるごとにこの問題を取り上げてきました。区は「現場の判断に任せる」「地域包括支援センター所長会で周知している」と言いますが、現実には地域包括支援センターでも、又事業者によってもヘルパー派遣はしないところがあります。本来、介護保険は同居の家族がいようと、介護度によって必要な介護が提供されるべきものです。保険者として、区の責任で早急に改善すべきです。
 さらに、デイサービスの昼食代について、区は42事業者の調査から「200円から850円の昼食代となっており」、利用者が「事業者を選択できる」「利用者思考の開かれた福祉が実現している」としました。そして区独自の支援策は拒否し、今後利用者に情報提供することが区の仕事と言います。結局、お金の無い人は安いお弁当で我慢しろということなのでしょうか。
 グループホームについてです。現在9施設中の6施設で生活保護の人を受け入れており、13人の方が入所しています。しかし各施設では家賃等を減額して対応しており、区も経営的にこれ以上の受け入れは困難としています。区は「開かれた福祉が実現している」と言っていますが、お金が無ければ利用できないということです。
 先程も言いましたが特養ホームは施設が無くて入れない、利用したくてもお金が無くて利用できないなど、どこが「開かれた福祉が実現している」というのでしょうか。
 また今回、区は一般会計で行ってきた介護福祉関係の4事業を来年度予算から介護保険会計に移行します。区は第5期事業計画では保険料に影響しないとしていますが、次期事業計画に影響することが明らかになりました。区民負担を強いるこのようなやり方は止めるべきです。

 以上、第21号議案 平成24年度豊島区一般会計予算、第22号議案 豊島区国民健康保険事業会計予算、第23号議案 豊島区後期高齢者医療事業会計予算、第24号議案 豊島区介護保険事業会計予算に反対し、討論を終わります。
 長時間にわたりご清聴有難うございました。