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区議会質問
 
決算討論(森とおる)

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、
認定第1号、2010年度一般会計決算、ならびに
認定第2号、国民健康保険事業会計
認定第3号、老人保健医療会計
認定第4号、後期高齢者医療事業会計
認定第5号、介護保険事業会計の4特別会計決算の認定に、反対の立場から討論を行います。なお、認定第6号、従前居住者対策会計には賛成いたします

 それでは討論にはいります。3.11大震災・原発災害から7か月が経過し、被災地では復興に向けて懸命の努力が続けられていますが、生活と生業の再建は遅々として進んでいません。原発事故は収束の見通しも立たず、放射能被害が拡大しています。今、民主党政権が進めているのは、水産特区構想やTPP(環太平洋連携協定)への参加など、被災した農業や漁業、中小企業の仕事を奪うものです。これは大震災に乗じて、「強いものをより強くする、弱いものは切り捨てる」という構造改革路線の政治を押しつけるものに他なりません。また政府は、復興財源として、所得税と法人税を軸とする臨時増税を打ち出しましたが、法人税は5%減税した上で、その範囲内で付加税を3年間に限って課すというもので実質2%の減税です。サラリーマンと自営業者などには10年間の増税を行い、一方大企業には減税、それも3年経ったらさらに大幅減税というのでは、理解は得られるものではありません。沖縄普天間基地問題にしても、日米両政府が共同して沖縄県民を踏みつけにしており、財界・アメリカ言いなりの政治は、まさにこれまでの自公政権と変わりありません。

 東京都を見ると、石原知事は都議会で「あらゆるエネルギーの組み合わせを追求する」と述べるなど、あくまでも原発を存続する立場です。また、防災対策指針の策定に向けた動きを見ると、自助・共助がことさら強調されておりますが、被害を最小限におさえるための予防対策は不十分です。被災者の生活再建、被災地の復興、放射能対策など、都が緊急に取り組むべき課題は山積しているにもかかわらず、1メートル1億円の外環道や、巨大港湾整備など、巨大な開発を進めるために、オリンピック招致を進め、築地市場を土壌汚染がある豊洲に移転を強行しようとするなど、都民に犠牲を押しつけています。

 では豊島区はどうでしょうか。国が進めてきた構造改革、成長戦略により、社会保障切り捨て、規制緩和・民営化が押し進められ、本来国が行うべき様々な仕事が切り捨てられてきました。また三位一体改革で、住民サービスの大幅切り下げ、地方行革の名で職員削減、民営化が進められました。これらの動きは自治体本来の住民福祉を担うという役割を大きく変質させ、住民からくらし、福祉を奪ってきました。一方では、都市間競争を看板にした大型開発には多額の補助金を大盤振る舞い。こうしたやり方が、大量の失業者を生み出し、貧困と格差をいっそう拡大し、介護難民、医療難民が生まれ、労働者、子ども、高齢者、障がい者、中小企業など、あらゆる層の人々のくらしを危機にさらしてきたのです。豊島区は、このような国の路線に忠実にしたがってきたのです。高野区政は、この12年間で財政を立て直してきたと、誇らしげですが、財政難を口実に徹底した行革、リストラにより、区民サービスを大幅に削減した結果、区民の生活をより深刻にしてしまったのです。

 日本共産党区議団は、2010年度決算の審査にあたり、
第1に、区民の切実な要望に応えるものになっていたかどうか、
第2に、区民サービス拡充のための財政運営に努めてきたかどうか、
第3に、不要不急な開発を進め、区民にしわ寄せをしなかったかどうかの観点で審査にあたってきました。

 第1に、区民の切実な要望に応えるものになっていたかどうかについてです。
【防災】
 まず1つめは、防災についてです。東日本大震災は、本区の防災の弱点をさらけ出しました。大震災の発生を目の当たりにして、区民は被災地に思いをはせ、その復興を願うとともに、豊島区であのような大地震は起きないのか、防災や避難は大丈夫だろうか、との不安を強めています。被災地の復旧、復興という国民的な問題解決にとどまらず、この教訓を区の施策に生かし、災害に強いまちづくりを進めていく、このことが区民から強く求められているのです。震災当日、豊島区は23区で唯一、災害対策本部を設置せず、帰宅困難者対策の準備不足や、鉄道事業者、集客施設との連携不足が露呈しました。本区の防災計画は、東京都の防災計画にならってきました。石原知事が、震災予防条例を改悪し、自分の命は自分で守れと、災害が起きる前の対策よりも、起きた後をどうするかに重点が置かれてきたことが問題なのです。地震は防ぐことはできないが、被害は防げる。この基本的な観点が欠落しているのです。公園の面積は23区で最下位にもかかわらず、新庁舎建設においては、広場の面積は、中池袋公園の約半分にしようとしているほどです。本区において、どのような災害が発生する危険があるのか、国の計画の見直しを待つのではなく、主体的に独自に最大限努力して、地域防災計画を見直し、練り上げることが大事なのです。そのためにも、できるところから早急に着手することが必要です。震災発生直後から被災地では避難所の果たす役割が大変重要だということが改めて再認識されました。この間、区立小中学校の統廃合により、避難所である救援センターは35か所に削減されました。収容可能人数は全体で2万人余でしかなく、マグニチュード6.9規模の地震が発生したときに予想される避難者3万人を収容することはできません。また、近隣に救援センターが無くなり、乳幼児のいる世帯や、高齢者は、遠すぎて避難できない地域も見受けられます。しかも、救援センター自体が被害を受け、避難所として機能しないことも想定しなければなりませんので大幅増設が必要です。現在、区民ひろばや区民集会室などは、補助救援センターに指定されていますが、これらは、救援センターで避難者を収容しきれなかった場合に開設する補助的な救援センターであるために、開設するまでに時間がかかり、それまでは一時待機の避難すらできません。たとえ近所に区民ひろばがあったとしても、まずは遠方の救援センターに避難しなければならない仕組みになっているのです。まずは補助救援センターに位置づけられている、区民ひろばや区民集会室等は、一時待機場所として解放するように、地域防災計画を見直し、救援センターや避難ひろばを拡大し、災害時の区民の安全を守るべきです。

【特養ホーム】
 2つめは、特別養護老人ホームについてです。特養ホームの待機者は1242人、そのうち区が緊急に入所の必要性があるとしているAランク待機者は438人と増え続けています。このように待機者を増大させたのは、この6年もの間、特養ホームを建設してこなかったからであり、区長の責任は重大です。区は、手をこまねいてきたわけではないなどと言い訳ばかりですが、やってきたことは民間の誘致であり、その誘致にことごとく失敗してきたのです。失敗の理由も明確です。この間、国や東京都による補助制度が廃止・大幅削減されているため、民間が建設し、運営するには負担が大きすぎるからです。にもかかわらず、いまだに民間誘致に固執しているため、2か所の土地を確保しながら、完成の時期さえ示すことはできないのです。特養ホーム建設は待ったなしです。特養ホーム整備は区の責務であり、区が自ら建設しなければ計画は進まないのです。また、2015年度までに200床整備の計画では、Aランク待機者すら解消できません。直ちに400床以上の計画に見直し、区民の願いに応えるべきです。

【保育園】
 3つめは、保育園についてです。わが党区議団は、日ごとに増す保育園の待機児童対策を重視し、この間、一般質問でも毎回取り上げるなど、認可保育園の増設を基本に直ちに解消するよう区長に強く求めてきました。同時に国や東京都が、新しいシステムを打ち出し、保育に対する公的責任を投げ捨て、財政支援を削減し、詰め込みや民営化を進めるやり方に反対してきました。
 区は、保育計画を策定し、5年間で300名の定員増を図るとしていますが、実態は、それに逆行し、待機児は、昨年4月の161名から、今年度は171名に、また増えてしまっています。待機児童を増大させた区長の責任は重大であります。わが党の質問に対し、所管の課長は、「増大させた責任に対し、申し訳ない」と初めて公式の席上で反省の答弁をしました。「申し訳ない」という認識なら直ちに対策を講じるべきです。十分な対策をとってこなかったために、いま保育園の中には、両親ともフルタイムの共働きで、入所指数が20点満点を満たしているのに入所できない子どもがいます。この子どもをいったい誰が保育するというのでしょうか。
 区は、これまで「努力している」「手をこまねいているわけではない」と主張しますが、これは言い訳に過ぎません。需要が増えているのに対し、これに対応する十分な対策を講じることこそが区政の果たすべき役割ではありませんか。待機児童を増大させている決算は認められません。

【生活保護】
 4つめは、生活保護についてです。
 全国の生活保護の受給世帯数は今年10月の速報値で204万1592人と過去最高となっています。豊島区でも2010年は5743世帯と前年より901世帯増加、今年は9月現在で6113世帯とさらに増加しております。わが党はこの間、正規職員の増員とスペースの拡大を求めてきました。その結果、当該決算年度は、西部生活福祉課が開設され、相談員1名、ケースワーカー8名が増員され、今年度も相談員1名、ケースワーカー3名が増員されました。しかし、現在でもケースワーカー1人当たりの平均担当数は100.4世帯、担当者によっては120世帯と、国が定めている標準数80世帯より、はるかに多い状態が続いています。このような中で被保護者への対応も不十分となり様々な問題が起きています。
 70代のAさんは、年金の収入認定が遅れたため過払い金が発生し、基準額から毎月5千円が天引きされ、さらに3千円の納付書が送られています。Aさんは「月8千円の返金で生活が大変。年金の書類も見せた」と訴えています。そもそも区も認めているように基準額は最低生活費を定めたものです。一日千円、一か月3万円の食事代から8千円もの返金を求めること自体も問題です。
 ケースワーカーとは、社会的弱者に対し、人としてきちんと生活が送れるように様々な支援をすることが仕事であり、専門的力量も問われるものです。区は来年度も、正規職員を増員すると答弁していますが、最低でも標準数80世帯となるよう大幅に増員すべきです。
 今、民主党政権は、「社会保障と税の一体改革」と称して社会保障の全面改悪を進めています。生活保護行政に対しても「有期制の導入」など生活保護制度の根幹である「生存権」を揺るがす改悪を進めようとしています。わが党は、一般質問等でも区長に改悪反対の意思表示を求めましたが拒否しています。区民のいのちを守る立場の自治体の長として改悪に反対すべきことを改めて求めるものです。

【高齢者福祉】
 5つめは、高齢者福祉についてです。高齢者緊急通報システムは、一人暮らし高齢者等の見守り事業として需要の高い施策です。ところが昨年度までは、身体上急を要する慢性疾患がある方という極めて高い基準が設定されていたため、受けたいという区民が受けられませんでした。わが党は再三にわたり、この基準を無くすように求めてきました。ようやく今年度から、慢性疾患の基準が無くなり、多くの高齢者が使えるようになったと思いきや、今度は毎月2315円の自己負担が条件になりました。その為に8月までの申請件数は、わずか12件にとどまっています。ただちに改善すべきです。
 わが党の、削減したサービスを復活せよという質問に対し、この間、区長は、区民福祉の水準は、形、姿は変わっているが、改革当時とは格段に充実しているとして、この緊急通報システムも、その事例にあげていましたが、拡充どころか後退ではありませんか。

【障がい者施策】
 6つめは、障がい者施策についてです。2006年に施行された障がい者自立支援法は、障がい者の実態や意見を踏まえずに制定、施行され、応益負担を導入するなど障がいが重い人ほど負担も重くなる悪法です。これに対し障がい者を中心に廃止への取りくみが大きくなっています。
 さて、心身障害者福祉センターは2009年に水道の配管が劣化し機械入浴が使用不可能となり、区は当座の対応として2009年4月から地活U型「雑司谷」に入浴サービスを委託しています。2010年度の利用実績は、のべ人数で介助入浴57人、機械入浴163人、訪問入浴355人となっています。訪問入浴をうけているAさんの家族は、「月3回無料だったが4回になりよかった。でも週1回では少なすぎる。せめて週2回入浴させたい」と月4回の訪問入浴を自費で頼んでいます。しかし1回14,070円、4回では5万円を超えています。週1回の入浴とは、あまりにも非人間的です。身障センターの改修は喫緊の課題です。ところが3年経過しても、いまだに改修計画すらなされておらず大きな問題です。区は2011年度実施の耐震診断結果を踏まえ改修計画を検討する、大規模改修には代替施設が必要、など理由を言いますが早急に改修すべきです。そのためにも担当者任せではなく、区長が先頭に立って取り組むべきです。
 次に区の独自施策である「さくらんぼ」についてです。長期・短期自立援護指導のほか緊急一時保護にも取り組んでいます。しかし利用者が増加する中で、「なかなか利用できない」と保護者から切実な声が上がり続けています。担当課では、障がい者の人権を守りながら、一日の利用者数を増やすなど検討する」としていますが、これでは必要な対応はできません。今後、親なきあと対策は待ったなしです。増設すべきです。

【中小企業対策】
 7つめは、中小企業対策についてです。長引く不況、経済危機に加えて大震災の影響もあり、区内中小業者は深刻な状況になっています。これはものづくりや商店などに限らず深刻な状況であります。代々続いてきた店を閉鎖せざるを得ないという声も聞きます。こうした状況から区民を守るというのも、区政の大きな柱の一つでありますが、区がすすめている施策といえば、融資とイベント、そして相談活動が主であります。高野区長が12年前に就任して以来、これまで予算のなかで、もっとも減らしたのが商工予算です。新規にメニューを並べても、本当にその効果が上がっているとはとてもいえません。本決算の当該年度では三越が撤退、さくらや、キンカ堂も閉鎖しました。予算を大幅に増やし、安心して借りられる無担保、無保証人、無利子の融資の創設をはじめ、区内の商店を守るために、区独自の営業時間や販売品目など大型店規制等の抜本的対策が必要であり、なによりも区民の懐を温める施策が必要です。
 
【住宅】
 8つめは、住宅についてです。「高すぎる家賃さえ何とかなれば、豊島区に住み続けられる」。このような声が、日増しに増えています。現在の区営住宅と福祉住宅戸数は、たいへん少ないために、空きはほとんどありません。数少ない空きに対し応募が殺到しています。このような状況を打開し、学校跡地などの区有地を活用し、建設すべきであるにもかかわらず、区は実行しようとはしません。それどころか、東京都に対し都営住宅の誘致を求めても、それすら行おうとはしません。区民のための住宅施策向上に背を向けていることが明らかです。
 また、ようやく重い腰を上げて始めた子育てファミリー世帯への家賃助成は、新規が年間で12件しかありませんでした。条件となる所得額が低すぎることや、助成期間が短すぎることなどが問題であることが、はっきりしています。高齢者世帯等住み替え家賃助成にいたっては、今年度は3件だけです。助成期間設定を廃止し、立ち退き要件の緩和をしなければ件数は増えません。これらの家賃助成に関しては、助成金額を引き上げると同時に、直ちに実態に即した条件に見直すべきです。

【自転車対策】
 9つめは、自転車対策についてです。駐輪場整備が進み、放置自転車が減少したことは評価できます。しかし、駐輪場整備に伴い放置自転車禁止区域が拡大されたことによって、支障をきたしている区民がいることも事実です。サンシャイン60内のハローワークに雇用保険の申請に行った際に、駐輪場がいっぱいだったため、他の駐輪場の場所がわからず仕方なく路上に停めたところ、撤去され5000円を支払ったという事例を紹介しました。特に新しく禁止区域を設定した場所については、区民への案内は万全を期すべきです。しかも、撤去料金の5000円は23区で最も高く、雇用保険受給者や低収入、無収入の方にとっては本当に痛手です。大幅に引き下げるべきです。
 また、駐輪場が設置されている場所、収容台数については不十分です。区の寝たきり高齢者理美容事業を担っている理美容師さんや、介護ヘルパーさんの訪問活動に、訪問先の近くに自転車を停めるところがないといった支障が生じています。このように区民のために活動している事業者等に対しては、駐輪許可のステッカーを交付するなど、特別の手だてを講じる必要があります。

【教育】
 10番目は、教育についてです。
 その第1は、私費負担と就学援助です。子どもの貧困問題はますます深刻で、就学援助制度の利用者も増えています。決算年度である2010年度から生活保護の母子加算が復活し、基礎算定額がわずかに上がりましたが、教育委員会も認めているように就学援助の増加は経済不況が大きく影響しているのです。ところが私費負担は中学3年生で151,403円、小学6年生では108,056円と高額となっています。特に私費負担で大きく占めるのは、6年生の日光林間学校と中学3年生の修学旅行で、2009年度から、日光については宿泊費の一部補助から交通費全額補助に切り替え、若干ですが私費負担が軽減されました。しかし修学旅行助成の復活は、「23区では行っていない」と拒否しました。
 義務教育は憲法26条で定められているように無償が大原則です。ところが、政経部長も教育長も、義務教育の無償化は授業料関係が基本などとの認識を示しましたが、これは義務教育の在り方そのものを否定するもので看過できない発言です。区の教育に対するこのような姿勢は重大問題です。
 
 教育の第2は、学校施設の問題です。この間、わが党は特にトイレの改修問題を取り上げてきました。区は18校のトイレ改修の必要性を上げていますが、2010年度のトイレ改修は、大規模改修をした朝日小のみです。校長会の要望では、小学校が10校、中学校では4校が洋式化や男女別、乾式化、改修予定の明示などがだされており、仰高小学校では児童数に比べトイレの数が少ないなど深刻です。震災の影響で改修計画はたてられなかったと言いますが、トイレ改修の問題は何十年も前から提起しているにもかかわらず、やる気がない姿勢は大問題です。早急に計画策定に取り組むべきです。
 
 教育の第3は、図書についてです。学校図書の専任司書が2011年度からモデル校4校に配置されました。今後は1人の司書が2校を担当し、全校配置を検討するとしていますが、教育上の観点から言えば、本来は1校に1人の司書が必要です。
 また図書館の区民一人当たりの図書購入費は23区中17位です。その後、微増していると言いますが、増やすべきです。
 
 教育の第4は、池袋本町地区校舎一体型小中連携校についてです。池袋第二小学校地に防災ひろば用地を加えた土地に、池袋第二小学校と文成小学校を統合し、合わせて池袋中学校の校舎を建てる。隣接する池袋中学校の土地に、中学校の校庭を整備するという計画が進められています。元々は、それぞれの土地に、統合した小学校と中学校を別々に建設する計画だったものです。
 この計画は、工事期間の短縮と工事費用の削減、ならびに施設面の効率化が利点とされています。ところが地域説明会では、たいへん多くの疑問の声が投げかけられました。「長い目で見たときに使いやすい施設なのか」「小中学生が同じ敷地になるのが不安。児童生徒が実験台にならないか」など様々であり、中には、隣接する池袋第一小学校に及ぶ影響を心配するものもあり、反対の意見があることも教育委員会は認識しているのです。児童生徒にどのような影響が及ぶのか。どこでも公平にきちんと学習できる公立校としてふさわしいのか。この学校を選びたい、選びたくないといった、地域の分裂が起こらないのか。このように問題が山積しており、十分な議論が尽くされていない中で、元々の別々に建設する計画は捨て去り、来年度には設計に入り、いっきに建設に突き進むというやり方は見直すべきです。

 続いて、第2の審査の観点である、区民サービス拡充のための財政運営に努めてきたかどうかについて述べます。
 1つめは、過剰な借金返済についてです。区長は、2008年度予算特別委員会で突如、土地開発公社分割償還金125億円を3年間で完済すると公言しました。本決算年度途中に、土地開発公社の長期債務の残高、33億5千万円を繰上償還し、3年間で125億円も前倒し返済したのです。これまでも述べてきたように、わが党は、借金返済すべてを否定しているわけではありません。しかし、やるべきことをやらず、区民サービスに支障をきたす、行き過ぎた返済は容認できないのであります。特養ホームの待機者、保育園の待機児数は、先ほど指摘した通りです。
 2つめは、財源確保をしてこなかったことについてです。わが党区議団は、本決算の2010年予算審査の際、安定した財政基盤の確立が、区民サービスを向上させる上でたいへん重要だとしました。当時の自公政権は、2004年度から2006年度の3年間、三位一体改革で4兆円を超える国庫負担金を削減しました。一方、税源移譲は3兆円でした。その税源移譲では、三位一体改革で削減した国庫補助金の8割を移譲したのみで、残り2割は地方自治体の努力で賄うとしました。本区の影響額は、国と東京都の補助負担金削減で14億円、税源移譲での削減は2億円と、合計16億円もの削減となったのです。そこで、これらがどう区民サービスに影響するのか、影響を及ぼさないように財政確保するために、どう対抗策を取ってきたのか、2010年度に向けて、どのような対策を講じようとしているのかという観点で予算審査しました。
 その立場から本決算を見てみると、わが党の指摘を受けて、生活保護費については、全額国庫補助を求め、特養ホーム、保育所についても、一定の要望を国に求めていることは一歩前進です。ところが、高齢者福祉、教育分野の就学援助などは、いっさい要望しようとはしません。かつては、福祉や教育の分野が8割を占めていた国庫補助負担金を、自公政権は、地方にできることは地方に、民間にできることは民間にという、小さな政府の具体化の一つとして、三位一体改革で大幅削減・廃止をしてきたのです。自治体に対する財源圧迫を、本区はそのまま受け入れ、国と東京都の言いなりになってきたのです。
 就学援助では、三位一体改革で2005年に国の補助を全廃しています。しかし、教育委員会は国に復活を全く要求せず、「財調算定されている」「23区で検討している」を繰り返すのみです。さらに、文科省は2009年に就学援助について検討する「修学支援に関する検討会議」を設置し、区教育委員会は「検討の推移を注視する」としています。ところが検討会議は2009年に2回開催されたのみで、現在、検討会議自体が事実上無いことが明らかになりました。間違った資料の提出は問題であり、そもそも国の補助廃止を容認し、「私費負担は当然」とする姿勢が問題です。

 次に、第3の審査の観点である、不要不急な開発を進め、区民にしわ寄せをしなかったかどうかについてです。
【新庁舎】
 新庁舎建設についてです。決算年度である2010年11月に区は「新庁舎推進整備計画」を発表しました。2008年の整備方針、2009年の基本計画と比較すると資金計画が大幅に変更され、現庁舎地の25年一括の賃借料見込みが176億円から143億円と2年間で33億円も減りました。また保留床購入費は112億円から124億円と12億円も跳ね上がりました。さらに「推進整備計画」の事業収支では、公会堂や区民センター跡地等の整備費がはずされています。公会堂は区民にとって大事な施設です。区長は公会堂整備は行うとし、跡地整備を含めれば180億円が必要であり、そのためには定期借地料35年一括が必要としました。現庁舎地は行政財産であり公共に使用中であれば当然売却はできません。庁舎そのものが完全に移転してから初めて契約が成立するもので、具体的な賃料はその時点でなければわかりません。これは大変大きなリスクです。専門家の話では民間では土地等を先行取得して、具体的な資金計画の下で建設に取り組みます。たった2年間で計画を大幅に変更せざるを得ないような資金計画に基づく建設計画は無謀であり、計画が失敗すれば、倒産してしまうとのことです。区長は「責任は自分にある」と言いますが、実際にどう責任を取れるというのでしょうか。また庁舎機能や建物の管理運営は「管理規約」で担保するとし、2011年度中に明示するとしていたものを、2012年度に変更しました。建設は2011年度から着手予定です。民間マンション合築に問題があっても中止・変更できません。またもや区民を無視するものであり認められません。
 
【大型開発】
 LRT路面電車についてです。LRT関連に要した費用は、累計5千万円を超えました。想定している事業費は70億円、そのうち国の負担が28億円、区の負担は37億円、事業者などの負担が残りの5億円とされています。しかも毎年1億5千万円の赤字であり、いかに環境に優しい乗り物とはいえど、莫大な財政負担です。しかもルートは、建物がひしめき合っている狭い道路を無理やり通す計画であり、まったく現実的ではありません。これまで区は来年度には設計に入るとしていましたが、今回の決算委員会では、環状5号線が整備された後の平成31年以降に検討すると、スケジュールが大幅に後退したのであります。費用面においても、ルートにおいても、現実性がなく、区民から批判の多いLRT計画は、きっぱり撤回すべきです。
 池袋駅東西デッキについてです。東西デッキ関連に要した費用は、累計1億円を超えました。想定している事業費は、幅100メートルの場合150億円、そのうち3分の1の50億円が国の負担、3分の2の100億円が区の負担とされています。百貨店など民間事業者の負担があることもほのめかしますが、三越が撤退するなど厳しい状況の中で、負担をする事業者が果たしてあるでしょうか。区長は、LRTと東西デッキについて、区民のものだけでなく、都市としての魅力をつくっていく。副都心としてイメージアップをはかるというような答弁をしました。これほど、区民をないがしろにした話はありません。この間、全国各地で、国から補助が出るからといって、大型開発に突き進み、にっちもさっちも行かなくなり頓挫した計画の処理が、住民負担となっていることが社会問題になっています。区長が突き進もうとしているこれらの大型開発は、同じ道を進もうというものです。まさにくらし、福祉よりも区民不在、開発優先の政治姿勢が露骨に現れています。区民の深刻な実態には目を向けずに突き進む、区民無視の大型開発計画は、ただちに白紙撤回すべきです。
 以上の理由で、一般会計決算の認定に反対します。

 次に、4特別会計についてです。
【国民健康保険】
 国民健康保険事業会計についてです。この年は、1世帯当たりの平均保険料は148,841円と値上げされました。毎年のように値上げされる保険料に区民からは悲鳴が上がっています。景気悪化の影響等で、収入が上がらないのに保険料が値上げされるために、高額な保険料が払えずに収納率も70%台に落ち込んでいます。国民健康保険は、自営業者や退職者、最近では、雇用悪化による失業者や、ワーキングプアとよばれる若い世代の不安定雇用者の加入が多くなっています。国の補助金増額が、ますます重要になっています。にもかかわらず、国庫負担金は、大きく落ち込んでいます。その分が保険料にはね返っているのです。保険料を引き下げるためにも、制度を維持するためにも国に負担を求めることが重要であり、増額が強く求められます。本決算年度に保険料の計算方法が旧ただし書き方式に変更すると決められました。そのため、住民税非課税世帯であるにもかかわらず、所得割が賦課された世帯が1,766世帯にのぼります。2300万円を投入すれば救済できるのに、それを拒否することは到底認められません。
 また、保険料を滞納すると保険証が取り上げられてしまいます。本年3月末時点、短期証は3,634世帯、資格証は3,121世帯に発行されています。特に本区の資格証の発行数は、23区の中でも高く看過できない問題です。資格証は病院の窓口で全額医療費を支払わなければなりません。そのために、医者にかかることをためらい、症状が悪化したり、最悪のケースでは命にかかわる問題になりかねません。これでは区民が安心して医療を受けられません。保険料滞納者には、きめ細かい相談に応じ、資格証発行は大幅に減らすべきです。

【介護】
 介護保険事業会計についてです。特養ホームが増設されないために区は、ショートステイを充実させると言ってきましたが、実際は不足しており利用者に支障を来しています。今決算年度では、のべ3531件の利用件数がありました。そのうちアトリエ村では、のべ163件の利用者がありましたが、満床のために緊急ショートで11件が断られています。菊かおる園でも同様に5件が断られました。直近の予約でも毎月100件がキャンセル待ちになっている状態です。利用者がいつでも利用できるようにするためには、ベッド数を増やすしかありません。これについても放置している責任は重大です。
 介護保険の保険外自己負担は、介護者の大きな負担になっています。例えば社会福祉法人「フロンティア」のデイサービスの食費は昼食代で650円。事業団では550円となっています。もちろん自己負担のために生活保護受給者も支払わなくてはなりません。一日あたり1000円を目安の食費の生保受給者の一食650円の負担は重過ぎます。週6日デイサービスを利用している区民が毎月4万円以上の支払いをしているケースを例に取り上げました。保険料を取り、利用料を取り、その上に保険外負担を取るというのは、まさに欠陥だらけの制度です。

【後期高齢者医療制度】
 後期高齢者医療事業会計についてです。後期高齢者医療制度廃止を求める国民の声が高まり民主党政権に変わりました。しかし民主党政権は高齢者差別の根幹を残す「新制度」を示し、さらに2013年度実施も先送りにし、国民の期待を裏切り続けています。
 本決算年度保険料は、一人当たり平均4,165円も引き上げました。その影響もあり556人が保険料を払えず未納となり、区は短期証53件を発行し、現在でも25件が短期証となっています。担当課では高齢者は無保険にしてはならないと、督促や訪問等で相談し対応しているとして、「無保険者はいない」としていますが、短期証を発行していない自治体があるのです。そもそも高齢者に対し短期証は発行すべきではありません。また2012年度保険料は、現在の均等割り37,800円を50,000円に上げる方向が検討されていますが、値上げされればますます未納者を増やすことになります。区は「広域連合で検討中」「詳細はわからない」としていますが、これが広域化の根本問題です。直接関係する区民は何もわからないまま値上げをおしつけられることになります。

 老人保健医療会計については、これまでの精算ですが、差別医療などを進めてきたことをふまえ反対します。

 以上、4特別会計の決算認定に反対することを述べ、私の討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。