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区議会質問
 

私債権反対討論(渡辺くみ子)

 私は日本共産党豊島区議団を代表しまして、只今議題とされております第30号議案「豊島区の私債権等の管理に関する条例」の可決に反対の立場から討論します。

 現在、豊島区が保有する債権は特別区民税や国民健康保険料など12種類で構成されている強制徴収公債権と老人ホーム入所負担金や生活保護費返納金など19種類で構成されている非強制徴収公債権、そして小口緊急資金損失補償金、生業資金貸付金返還金など25種類の私債権があり、現行の「豊島区の債権の管理に関する条例」に基づき管理されています。
 今回の条例案は、現行の「条例」を廃止し、新たに、非強制徴収公債権と私債権の管理を対象とした「豊島区の私債権等の管理に関する条例」を制定するとしたものです。
 区の説明によると、今条例案の特徴は第一に、強制徴収公債権は地方税法の滞納処分の例により処分することになっているので条例化の必要はないとして管理から外し、非強制徴収公債権と私債権を条例の対象としたこと、第二に私債権管理に関して、現在地方税法、地方自治法施行例、民法等の規定を根拠としているが複雑でわかりにくいため、条例でまとめることによりわかりやすくしたこと。第三に債権放棄の要件の変更について、@債権の消滅時効が完成した時、債務者が行方不明の場合でも債権放棄できること、A債務者が生活保護受給など資力回復が困難であると認められるとき、B強制執行等の手続きが終了した時に債務者が弁済することができないと認められるとき、C徴収停止の措置後、相当の期間が経過しても、弁済見込みがないと認められるとき、など私債権における債権放棄できる条件の変更・追加を行ったとしています。
 このような債権放棄の要件緩和には、反対するものではありません。
 しかしこの条例案には、現行条例にない督促、強制執行等、履行期限の繰り上げ等、7つの条文が加筆されました。これは非強制徴収公債権と私債権に対し、強制徴収公債権と同様に強制的に徴収する仕組みを作るものであり、これは大問題です。

 さて改めて債権の状況を見みますと、2010年度末収入未済額は総額55億7900万円、その内、区民税や国保料金など強制徴収公債権の未済額は50億8900万円、未済額総額の91.2%を占めています。生活保護費返納金などの非強制徴収公債権の未済額は3億6700万円で6.6%、私債権の未済額は1億2300万円、未済総額の2.2%です。
 さらに不納欠損見込額では、2010年度末で8億9500万円、このうち8億5700万円が強制徴収公債権で、今条例案の対象となる非強制徴収公債権、私債権の不納欠損見込額は3746万円、そのうち住宅使用料など私債権は2225万円です。
 私債権の不納欠損見込額を見ますと、一番多いのが不況対策臨時特別資金損失補償金735万円、次に702万円の住宅使用料、次いで女性自立援助資金貸付金返還金及び貸付金利子406万円、生業資金貸付金返還金67万円となっています。
 これらの私債権は、ぎりぎりの生活の中で何とか自立したい、事業を続けたい、でも金融機関では借りられない区民が「藁にもすがる思い」で借りた資金です。
 委員会審議で理事者は私債権の対象制度は区民にとって「セーフティーネット」と発言しました。まさに区民の命綱としての資金であり制度であります。
 このような福祉的要素が強い私債権に対し、強権的な取り立ては絶対にすべきではありません。私債権を管理するというなら、債権の適正管理を定めた地方自治法や、地方自治法施行例での規定で充分可能です。
 委員会審議で、私が「督促」「強制執行等」「履行期限の繰り上げ」等の明記をはずすように求めたところ、担当理事者は「この規定がないと債権放棄だけが目立ってしまう」と答弁、さらに「監査でも(徴収強化を)指摘されている」と言いました。結局、ここに今条例案の目的があるということです。
 改めて2009年度の監査報告書をみますと、特別区民税と国保料の収入未済額が、全体の未済額の85.5%を占めていると指摘がありました。区民税や国保料は強制徴収公債権として、今でも厳しい取り立てが行われていますが、監査では、「若干(収納率は)改善しているがさらに強化を」と書かれています。その上「私法上の債権についても厳しい姿勢が・・求められる」とまでしているのです。
 先ほども言いましたが、私債権の制度はセーフティーネットです。区民への福祉的要素の強い私債権への強制徴収など絶対に行うべきではありません。しかも私債権等の未済額は未済総額の8,8%、債権全体から見てもわずかです。それにも関わらず強制徴収の条例まで作るということは、区民への脅し以外なにものでもありません。
 他の会派の皆さんは、「公平性」「公平性」と発言し条例に賛成しました。何が公平性なのでしょうか。私たちは、借りたものはきちんと返すことは当然のことだと思います。しかし「公平性」を言うのなら、困っているときは助け、自立したら、きちんと払ってもらう、これこそが公平ではないでしょうか。
 長引く厳しい経済状況、さらに震災、福島原発の人災で区民の暮らしや営業はますます苦しくなっています。
 今、区がやるべきことは、厳しい生活でも頑張っている区民を見捨てるのではなく、返済が困っている区民の相談に乗り暮らしを立て直す援助です。
 債権の適切な管理のためというのであれば、台帳の整備、債権の放棄、これのみ条例で規定すればよいのです。

 以上、第30号議案「豊島区の私債権等の管理に関する条例」の可決への反対を改めて表明し討論を終わります。