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区議会質問
 

「原発依存のエネルギー政策から自然エネルギーへの転換を求める陳情」についての討論(儀武さとる)

 私は日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題となっています23陳情第11号原発依存のエネルギー政策から自然エネルギーへの転換を求める陳情の継続審査とすることに反対し、ただちに採択すべきとの立場から討論します。
 この陳情は、東日本大震災・福島第一原発事故が、被災地・被災者と国民生活に深刻な影響を与えており、政府と東電が原発事故の早期収束に全力を傾注するとともに、その被害補償と原発依存のエネルギー政策から自然エネルギーへの転換を政府に求めるものです。

 福島第一原発の事故では、放射能汚染が首都圏も含む広範囲の土壌、水、食料に広がっています。放射能汚染は長期間続き、癌などになる危険を高めます。本区でも、放射線測定を求める住民の声が広がっています。原発周辺では深刻な放射能汚染が広がり、地域社会の維持も、今後の生活も困難にさらされています。原発事故は他の事故にはない重大な被害を及ぼします。
 今回の事故で、今の原発技術は本質的に未完成で危険なものであることがはっきりしました。膨大な放射線量を制御できないうえに、危険な使用済み核燃料の処分方法も全く確立されていません。しかも日本は世界有数の地震国・津波国であり、安全と言える場所はどこにもありません。「安全神話」にしがみつき、事故対策を怠ってきた歴代の政府の責任は重大です。海江田経済産業大臣がまともな根拠もなく「安全宣言」を行い、検査中の原発の運転再開を求めましたが、とんでもないことです。福島県知事はもとより、全国の自治体から批判の声が出ているのは当然です。今回の事故で、原発と人間社会が共存できないことが明らかになりました。原発事故発生から、4箇月近くにもなりますが、未だに収束のメドも経っていません。原子炉の冷却ができなくなって、炉心の溶融(メルトダウン)や水素爆発を引き起こした原発を再び冷却できるようにすることは、事故収束の第一歩です。
 ところが、そのための作業が再三にわたって見直しを余儀なくされています。「安全神話」にとらわれて事故への備えを欠いていたことことに加え、事故収束のために、あらゆる事態を想定し対策を準備する上で、甘さがあったのは明らかです。原子炉建屋にたまっている汚染水だけでなく、地下水に汚染が拡大することを防ぐ対策など事故収束には一刻の猶予も許されません。

 福島第一原発事故を機に原子力発電の縮小・廃止をもとめる世論が、国の内外で大きく広がっています。世界ではスイスやドイツに続いて、イタリアが国民投票で原発からの撤退を決めました。6月14に付の「朝日」では、「原子力発電を段階的に減らし、将来はやめる」に「賛成」が74%、「反対」が14%です。原子力発電の利用に「賛成」(37%)の人でも63%が「段階的に減らし将来はやめる」と回答しています。NHKの同日放送でも「減らすべきだ」が47%「すべて廃止すべき」が18%で、「増やすべきだ」は1%だけです。「読売」も調査を行なっていますが、同じ傾向でした。原子力発電の「縮小・廃止」を求める世論は明白です。日本でも原発からの撤退を政府が決断し、それに代わる自然エネルギーの導入に本格的に踏み出すかどうかが問われています。

 委員会審査では、自民党の本橋委員は自然エネルギーへ転換をすると「補助金が増え、財政を圧迫し、電気料金の値上げになる」「被害を受けたすべての国民の生活保証」の「すべての範囲が現時点で確定していない」「原発依存から自然エネルギーへの転換は180度の真逆」になるので、「わだかまりを持っている」などと主張し、原子力発電を延命させる立場をあらわにしました。
 しかし、財界系のシンクタンクである公益財団法人「日本経済研究センター」でさえ、電気料金の値上げや増税の必要なしと提言しているのです。同研究本部がまとめたリポートでは、原発事故の処理には少なくとも6兆円程度は必要」として、原子力予算の見直しで2兆円、東電の引当金や利益剰余金で3.7兆円、青森県の6ケ所村にある再処理工場の操業を凍結するなどで6兆円として、10年間の合計で11兆7千億円の財源を確保することができると試算しています。ですから、「財政の圧迫」や増税、電気料金の値上げを、ことさら強調するのは、原子力発電を今後も継続するための口実以外の何物でもありません。

 公明党の高橋委員は、「自然エネルギーをすすめるべきだ」が、「即刻」「今すぐ」にはできないと言いましたが、この陳情には「即刻」とか「今すぐに」という文言はどこにもないではありませんか。

 自治みらいの大谷委員は「政府も自然エネルギーへの転換、クリーンエネルギーにむけてしっかりと政策を整えるために精力を費やしている」と言いましたが、菅首相が、実際にやっていることは、「安全宣言」をして停止中の全国の原発の再稼働をすすめようとしていることではないですか。結局、原発依存から抜け出していないのであります。
 明治公園で2万人以上が参加した「原発ゼロ」をめざす7・2緊急行動の集会で福島瑞穂社民党党首のメッセージが読み上げられました。自治みらいの会派には、社民党の議員2人が所属していますが、「脱原発」の同党が、原発依存から自然エネルギーへの転換を求める陳情に、なぜ賛成できないか不可解であります。

 みんなの豊島の古堺委員は「脱原発依存」を言いつつも、「現状を考えるとすぐに廃炉や停止を求めるものではない」として、わが党以外の会派は継続を主張し、区民の切実な願いに背を向けることになりました。

 わが党は、5年ないし10年以内の原発からの撤退とともに、自然エネルギー推進への転換を提案しています。日本の自然エネルギーは大きな可能性を持っています。環境省などの調査でも、太陽光、風力、水力、地熱の発電能力は、日本にある54基の原発の40倍あるとされています。日本の自然エネルギーの技術は世界でも先進的であり、原発の発電量を補うことは十分可能です。問題は、政府が原発推進に執着し、自然エネルギーに力をいれていないことです。この5年間を見ても、原子力には2兆円以上の税金を使いましたが、自然エネルギーは6500億円以下です。原発からの撤退を決断し、税金の使い方を変えれば、自然エネルギーの飛躍的普及は可能です。自然エネルギーの導入は、仕事と雇用を増やし。地域振興や経済成長にもつながります。低エネルギー社会の実現は、大量生産、大量廃棄や長時間労働を見直し、ゆとりある生活を実現することです。自然エネルギー、低エネルギー化を進めてこそ、人間らしく暮らせる社会をつくれます。いまこそ、原発依存のエネルギー政策から自然エネルギーへの転換を進めるべきです。
 以上をもって、「原発依存のエネルギー政策から自然エネルギーへの転換を求める陳情」
 を継続とせず、ただちに採択することを重ねて求めて討論を終ります。
 ご清聴ありがとうございました。