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区議会質問
 

国民健康保険の保険料値上と窓口業務の民間委託に関する陳情の反対討論(小林ひろみ議員)

 私は日本共産党豊島区議団を代表し、ただいま議題とされております22陳情第7号「国民健康保険の保険料値上と窓口業務の民間委託に関する陳情」について、不採択に反対の立場から討論します。

 この陳情は、国民健康保険料が2010年度大幅に値上げされ、また2011年度には、賦課方式を「旧ただし書き方式」に変更されると、家族の多い世帯の保険料の値上になり、ますます保険料をはらえなくなることから、値上しないでほしい、また、プライバシー保護の点から国民健康保険事業の窓口の民間委託をやめて欲しい、というものです。
 
 まず、保険料の値上についてです。
 毎年のように保険料が値上げされています。1980年医療費対応方式を導入し、費用の主な部分を保険料と国庫負担でまかなうことになりましたが、1984年国庫補助を45%から38.5%に引き下げ、その後も国や都の負担分を減らしてきたからです。
 
 さて、さきほどわが党わたなべ議員が予算の反対討論のなかでのべたように2010年度の保険料の大幅値上げの主たる原因は、前期高齢者交付金の精算があるからです。後期高齢者医療保険制度にともない導入された前期高齢者交付金が、08年度の概算額が23区全体で確定額より200億円も多かったと推計され、2010年度の交付金からその分減額されることになった、ついては、精算額の2分の1を区が一般財源を出すことをきめ、残りは保険料として区民に負担をおわせることとしたのです。2011年度も150億円の精算が必要とされています。
 委員会審議のなかで、交付額の「見積もりを間違えた」のは保険者、つまり区であることが明らかになりました。理事者は、見積もり間違いのようなことは保険のリスクであり、リスクは国や保険者つまり区が負担するのが常であるといいました。それを今回は、保険料に上乗せしたのですから、区民にはとうてい納得できる話ではありません。
 区長会の議論では、「法令どおり精算金の全額を保険料に反映させるべき」との意見や「一般財源で全額対応すべき」という意見があつたとのことです。審議のなかで、部長は、区長が、大幅の値上は避けたい、しかし、これまでもすでに一般財源を投入しているので、それと勘案しながら、あわせて考えたいという態度で臨んだときいていると答弁しました。こんな中途半端な態度だからいけないのです。区の見積もり違いを保険料値上で解消すべきではないのです。
 
 賦課方式の変更による値上げについて述べます。
 区長会は1月15日、賦課方式を2011年度から「旧ただし書き方式」に変更することにしています。基礎控除のみとなるため負担が増える低所得者への影響などを考慮して2年間の保険料軽減の経過措置を行う、つまり激変緩和をするとしています。しかし、激変緩和をしても2011年度保険料は上がり、2年たてばさらに上がることになるのです。
 理事者は、「旧ただし書き方式」は、全国で98%の自治体が採用している方式であり、今後の医療制度変更など総合的に考えて、賦課方式を変更したといいます。これは、医療保険の広域化、一元化のながれです。国民健康保険が広域化されれば、後期高齢者医療制度のように、区民の意見が反映せず、保険料が値上され、滞納者がふえる、ということにつながります。このままいけば、国民皆保険制度を形骸化することになります。こんな大事なことを区民や議会に意見もきかずきめてしまうのは大問題です。
 
 以上のように、国民健康保険料は、前期高齢者交付金の精算により2010年度、2011年度の値上がされ、賦課方式の変更により2011年度値上げ、その後2年間の軽減措置が廃止され2013年度の値上げがきまっています。
 
 次に窓口業務の委託について述べます。
 窓口業務は国民健康保険事業から切り離すことなどできないものです。それを無理やり分けて「委託」をするのは間違っています。窓口は、区民との接点として大切な場所であり、さらに豊島区職員のスキルアップ、経験の蓄積ということからいっても、委託すべきではないのです。
 委員会の中で「お金がなくて保険料を払えない人は、医療費の自己負担分も払えない人がいる」ことについて事例をあげ、対応が不十分であると指摘しました。今、必要なのは、困っている区民が医療を受けられないで健康や命を失うことのないようにすることなのです。同じ区の職員だからこそ連携をとり、その知識と経験を生かして問題を解決できるのではありませんか。さらに区民にとっては、たらいまわしされることなく、問題が解決されることが重要です。窓口で事業者に相談したら、区の職員がきて同じ相談内容を話し、さらに別の職員がきてまた同じ内容を話す、など、同じことを何度も説明しなければならないのなら、それはサービスの低下です。
 
 さらに、民間事業者に対し、仕事のやり方や情報管理など、細かいことをマニュアルで決めれば決めるほど、「定型的で、事業者だけで完結できる」という仕事ではなくなります。「偽装請負」になるのではないか、という心配も払拭されたわけではありません。
 
 とくに個人情報に関しては、国民健康保険課の窓口でとりあつかう情報のなかには、住所や氏名だけでなく、保険料滞納や病気のこと、体のことといった人に知られたくない情報がたくさんあります。HIV感染症などの方の特定疾病療養受療証申請や、高額療養費、特別療養費の支給申請に添付する医師の同意書や診断書の中身など、まさにセンシティブな情報が含まれているのです。この手続きに民間事業者をいれれば、これまでよりも個人情報が漏洩する機会がふえることになります。課長は、情報は「民間事業者のところは通過するだけ」などといいますが、そのような区民の個人情報を軽く見る態度は許せません。
 
 受託事業者の選定も問題です。今回受託するテンプスタッフ鰍ヘ、もともと人材派遣の会社です。そして、豊島区ではこれまで育休代替や人員不足の部署に派遣職員を導入していますが、これを派遣しているのはテンプスタッフ鰍ナす。また、08年度から国保の窓口委託を実施している各務原市で受託をしている会社も、もとはテンプスタッフだということです。選定については、公募型ではなく、指名型プロポーザル、つまり、指名したものから提案をうけ、その提案を評価して、業者選定をおこなったとのことです。評価に明確な基準があるわけではなく、このようなやり方は、事業者との癒着になりかねないのです。
 
 国民健康保険課の窓口業務委託は、これまでの定員管理計画にそって職員を削減することを最大の目的としています。区民サービス向上は二の次、三の次です。
 
 審議のなかで、民主党は、保険料の値上げの仕組みは区民には分かりにくい、情報を区民に開示してほしいというだけ、自民党は「保険制度を維持するには仕方がない部分がある」「低所得者にはそれなりの減免もある」などとして保険料の値上を認めてしまいました。
 
 さらには、窓口委託については、自民党は、「区の職員と受託業者の間の雰囲気が悪くなるようではならない」などといいました。しかし、現行法を遵守するなら、請負業者は自分だけで仕事を完結しなければならず、それができずに区の職員と交流しながら仕事をすすめれば、「偽装請負」という違法行為になってしまうのです。
 副区長は、「請負は1年契約であり、今後検証していく」「どの業務まで委託できるのかは、これから検討していく」としましたが、問題点があるのにもかかわらず、「導入してから検証する、検討する」とは、あまりにも無責任です。
 
 結局、自民党、民主党とも、保険料値上については「減免制度がある」として、窓口委託については、自民・公明・民主とも、問題点を指摘し、「指摘した点を守っていただく」などとして、陳情を不採択にしてしまいました。
 
 この間、不況や失業などで区民の収入はへり、生活は大変困難になっています。この間の構造改革路線、社会保障の切り捨てで、保険料は上がり、払えなければ保険証は取り上げられる、全国では医者にかかれずなくなる方も増えています。こんな政治を変えてほしい、と言うのが、昨年の政権交代につながったのであります。これからの、保険料の連続値上はやめるべきです。また、豊島区の構造改革路線、定員管理計画にともなう職員削減、民間委託は、区政の本質を変えるものであり、許せません。

 以上、22陳情第7号「国民健康保険の保険料値上と窓口業務の民間委託に関する陳情」について、採択すべきことを表明し、討論を終わります。ご清聴ありがとうございます。