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区議会質問
 
「豊島区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」の可決に反対する立場から討論(渡辺くみ子議員)

私は日本共産党豊島区議団を代表し、只今上程されました第62号議案「豊島区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」の可決に反対する立場から討論します。なお後ほど議題とされます21陳情第19号「南池袋二丁目A地区地区計画・市街地再開発事業等の都市計画に対する陳情」の不採択に反対し直ちに採択を求め、合わせて討論いたします。
 
 この条例案は、南池袋二丁目A地区地区計画に伴い、同地区計画区域内の建築物の制限及び他の整備を図るためとして提案されたものです。条例案による建築物の制限内容は、区役所本庁舎、議会関係施設、防災センター、事務所、店舗、共同住宅等以外は建設できないとし、容積率の最高限度を800%、最低限度を300%、建物高さ190m、敷地面積の最低限度を5,000u、建築面積の最低限度を1,000uとするとしたもので、南池袋二丁目A地区に市街地再開発事業で新庁舎を建設するためのものです。
 この陳情は、南池袋二丁目A地区の地権者から、この市街地再開発事業に対し、白紙撤回、あるいは陳情者の土地を計画から外すことを求めるものです。
 
 さて、さる7月31日に都市計画決定された「南池袋二丁目A地区」地区計画・市街地再開発事業とは、南池袋二丁目A地区1,2haの地区計画で、区はこの地区計画の目標を「池袋副都心区域に隣接した立地条件を活かし、地域の拠点となるよう、土地の高度利用を図る」とし、「地区内の大規模低未利用地の活用や敷地の共同化を進め」、建築物等の整備方針では、低層部に豊島区庁舎を、高層部に居住機能の整備をするとしたものです。すなわち市街地再開発事業で新庁舎と410戸の分譲マンションを建設するための再開発事業を具体的に進めるために提案されたものです。
 そもそも市街地再開発事業は、都市再開発法に基づき、それまで低層であった土地建物を再開発ビルに建てかえる事業です。
 わが党は、都市計画審議会でこの決定に反対しました。今回の条例案はこの地区計画を押し進めるものです。
 
 以下反対の理由を4点述べます。
 反対の第一の理由は、住民無視の計画であるということです。
 改めて計画の経過を振り返ってみますと、2004年に、区は南池袋二丁目地域をABCの3地区に分け、「池袋副都心区域に隣接した立地条件を活かし、地域の拠点となるよう」にと都市計画マスタープランの見直しを行い、同時期、東京都のしゃれた街並みづくり推進条例に基づき都の街並み再生地区の指定を受け、都市計画マスタープランと街並み再生方針を上位計画としました。
 そして「低未利用地の活用」と言って、日出小を廃校にし、南池袋児童館を廃止し再開発事業を行うため区自ら未利用地を作ってきたのです。
 区のこのような計画に対し、地域住民からは開発反対の声が続いています。副都心委員会でもとりあげてきましたが、B地区では街並み再生方針の導入前の住民アンケートで「このままでよい」との声が6割を占めていました。しかし区は街並み再生方針の網掛けを行いました。しかし住民は5年経過した現在でも「静かな街並みをのこして」と街並み再生方針に反対を示しています。ところが区は「街づくりが必要と考えている」として住民無視の姿勢を改めていません。
 また、超高層建築物に対しては、「区は『土地利用の転換によりにぎわいのある街を形成する』と謳っているが迷惑」「高層ビルはいらない」等の意見が多く出されています。ところが区は「上位計画」を盾に住民の声には一切応えていません。このような区の姿勢は街づくりに対する根本的な考え方が間違っているといわざるを得ません。
 さらに今回、A地区の地権者から計画の見直し等を求める陳情が出されました。陳情者は区に対し、地権者の意向を無視し地権者の土地を一方的に計画に入れることは「職権の乱用」とまで言い切っています。陳情者は再開発準備組合=(イコール)区の強引なやり方に対し対抗するため敷地を19人に分筆しています。ところが今度は計画の賛成者も分筆し賛成43対反対19となっていることが委員会の審議で明らかになりました。当初19人の地権者が何と62人にもなっているのです。これは再開発組合の設立要件を考えてのことと思いますが、まさに泥仕合です。かつて、ともに地域で生活をしてきた人たちが開発を巡って争うなどとは、本来、街づくりにあってはならないことです。今回の計画がいかに住民不在で無謀かということです。
 
 第二の理由は超高層建築物は環境悪化・居住者追い出しにつながるということです。
 区は今回の計画に対して、「土地の高度利用をはかるとともに、安全で快適なまちの実現を目指す」としています。先ほども述べた通り、近隣住民から高層ビルは「周辺環境に多大な悪影響を及ぼす」「区は『にぎわいのある街を形成する』と謳っているが迷惑」「高層ビルはいらない」など、圧迫感、風害等、今後の日常生活に大きな影響を及ぼすのではと不安を示しています。とくに建物の形状が示されてからは、「建物内は環境は良いかもしれないが直近に住むものにはあまりにも大きすぎる」と訴えています。
 先の一般質問でわが党の河野議員が指摘しましたが、「広場や緑」が少なすぎます。
 都市計画審議会では、専門委員の二名が「ボリュームが大きすぎる」「緑と広場がすくない」などと指摘し、反対しました。緑化に関しては、委員会でも他の委員から質問がありましたが、区は「具体的設計はこれから」「努力する」としているのみです。
 
 第三の理由は市街地再開発事業の主たる目的である新庁舎建設についてです。
 まず資金計画が大きな問題です。
 区は「区財政に負担を与えない庁舎建設」と強調していますが、現庁舎地の借地権の賃料がどのくらいになるのかが大きく影響します。当初区は約10億円のプラスになると言ってきましたが、実際は建設時の不動産市況に大きく影響を受けます。委員会審議で改めて質すと、今年1月1日の路線価は昨年対比ではマイナス13.8%となっています。区は「工事費も下がる。問題なし」と言いますが、計画が始まる前から収入の最大のよりどころとしている現庁舎地の地代が下落しているのです。
 このような不動産市況に左右される資金計画で、区民の庁舎建設はやるべきではありません。
 委員会審議で、民主党の議員から「分譲マンションの価格は下落傾向にある」として「たったっと進めるべき」との発言がありました。資金計画の中心となっている現庁舎地の賃料や分譲マンションの価格、保留床の権利変換など、経済動向、需要と供給の関連、不動産市況に左右され、さらに民間業者、すなわちデベロッパーの儲けを折込済みで行う再開発手法は、区民サービスの拠点である庁舎建設には相応しくありません。現に不透明な資金計画に多くの区民から不安の声が上がっているのです。
 
 新庁舎建設の2つ目の問題は、分譲マンションとの合築計画です。
 都計審でも専門委員らから管理運営、将来の建て替え等に質問や、不安が出され。50年後あるいは、100年後に建て替えが課題となる。「問題なしと進めることはできない」「50年後、100年後の責任はとれない」と反対を示したのです。
 公的な施設である庁舎と民間の分譲マンションの合築は例がなく、建て替えばかりではなく、日常の管理運営でも問題です。区は「今問題となっているマンションの多くは管理規約が無かったり、積立金が脆弱」「分譲する前にきちんとルールを作る」と繰り返していますが、管理運営だけではなく、大規模改修、外壁塗装・基本部分の補修などでは金額も多額になり、何年もたてば、分譲マンション居住者のライフサイクルも変わり必ず足並み揃わなくなります。まして410戸となればなおさらです。それにもかかわらず具体的根拠を示さないまま「大丈夫」などとはあまりにも無責任です。50年後、100年後には決定した区長も、賛成した議員の多くの方々は生きてはいません。どう責任を取るのでしょうか。
 さらに区は、分譲マンションとの合築について「区の財政難がある」といいます。しかし地方自治体の財政悪化の原因は、国・都の補助金削減が大きく、また前回の庁舎建設が挫折したのは、バブル崩壊が原因だったのです。財政がひっ迫しているからと言って再開発事業=(イコール)民間事業に区民の財産を売ってよいというものではありません。
 私たちは、いずれ庁舎建設は必要になると考えています。しかし再開発事業の手法で庁舎建設はすべきではありません。

 第四の問題は情報の公開についてです。
 今回、地権者の陳情の審議で、いかに議会に情報が開示されていなかったかが明らかになりました。区は権利者19名中3権利者が準備組合に参加していない、「計画内の7階建てマンション所有者が計画に入るかどうかが最大の題課」と言い続けてきました。そして組合に参加していない3権利者については、「開発に反対ではない」「(最後は、組合に入る)丁寧に説得する」と言い、こういう事業は賛成・反対があるなどと一般化してきました。
 その結果が今回の陳情です。委員会審議で公明党の議員も、「非常に残念。与党だ」と発言しました。区は議会にもまともに伝えない、資料等を要求しても「準備組合に許可をとらなければ明らかにできない」と繰り返してきましたが、地権者の状況、進捗状況、検討内容、保留床の価格、資金計画の計算根拠など、建設計画を進める上で重要な部分を議会にも区民にも知らせないまま進めているということです。だからこそ再開発事業で庁舎建設は行ってはならないのです。
 
 わが党はいずれ庁舎の建設は必要だと考えています。しかし、第一に区民合意で進めること、第二にコンパクトで合理的な庁舎とすること。そして第三にこれらを進めるためには、資金計画をきちんと立て、区民負担を低く抑えることが必要です。
 現在の庁舎建設は内容も、進め方も、あまりにも問題が多すぎます。

以上、第62号議案「豊島区地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例の一部を改正する条例」の可決に反対します。
 また後ほど議題とされます21陳情第19号「南池袋二丁目A地区地区計画・市街地再開発事業等の都市計画に対する陳情」の不採択に反対し直ちに採択を求め、討論を終わります。