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区議会質問
 
「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例」について、賛成の立場から討論(森とおる議員)

【賛成討論 子どもの権利擁護委員】
 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、第76号議案「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例」について、賛成の立場から討論を行います。

 本議案は、子どもの権利擁護委員を設置するにあたり、擁護委員の報酬を定めるため提出されたものです。
 子どもの権利擁護委員は、2006年3月に成立した「子どもの権利に関する条例」に、区長の付属機関として設けるとされており、その職務は、「子どもの権利侵害について相談に応じ、その子どもの権利の救済及び回復のために、助言や支援をすること」等とされています。ところが、子どもの権利に関する条例が成立したにもかかわらず、3年以上もの間、具体化されてきませんでした。

 本区の子どもの権利に関する条例の経過を振り返ってみます。子どもの権利条約が1989年11月に国連総会で採択され、日本では、1994年4月に、国会で全会一致のもと批准されました。こうした流れの中、本区は、第23期豊島区青少年問題協議会の答申で、子どもの権利条例の制定が提案されました。そして、区の基本構想に「子どもの権利を保障し、子どもがのびのびと育つ環境づくりをすすめます」と目指すべき方向が示され、豊島区子どもプランには、子どもの権利条例(仮称)の制定が盛り込まれたのです。そして、2003年12月に、学識経験者、区民代表、教育関係者、関係団体代表、区職員などから成る子どもの権利条例(仮称)検討委員会が発足し、子どもを初め、様々な立場の人の意見を聞く聞き取り調査の実施、中間のまとめの説明会の開催、子どもワークショップ、高校生公開ディベートなど、様々な形で意見聴取や検討を重ねました。その中身は、子どもの権利保障や健全育成の原則、理念を明文化し、かつ子どもの権利が侵害されたときの救済と回復についての具体策まで規定されたのです。子どもの権利に関する条例は、豊島区青少年問題協議会の答申に基づいて作成されました。答申は、自民党も異論なく賛成したものであり、その内容は、国連で採択された権利条約に沿った、全国的にも優れた内容です。

 ところが、2006年第1回区議会定例会の条例審査において、自民党は可決に反対の態度をとったのです。その理由は、子どもの権利の定義や内容が曖昧で、ありとあらゆる権利行使が、ある子どもの恣意に基づいて行われる危険があるとか、高齢者虐待を例に挙げて、子どもを権利の主体ととらえることによって児童虐待問題を解決しようとする取り組みは、見るべき視点を誤っているなど、子どもの権利のはき違えがある、子どものわがままにつながるといった、本来の子どもの権利の解釈を捻じ曲げる異常とも言えるものでした。
 この間、子どもの虐待等がさらに増加してきており、この事態を憂慮した区民から本年第二回区議会定例会に「子どもの権利に関する条例の具体化について」の陳情が出され、子どもの権利擁護委員の配置、子ども権利委員会の設置等が求められました。陳情は採択されましたが、またもや自民党は不採択の態度をとり、区民の願いに背を向けたのです。
 子どもの権利条約を日本が批准したときも、自民党政府は、条約上の多くは「国内法制で既に十分に保証されている」から、新たな実施体制や予算措置、法的措置は必要ないという態度でした。また、条約の精神や内容にたって、子ども施策を見直し、検討することも拒んでいたのです。そうした政府の実施状況に対して、国連子どもの権利委員会の審査の時に、何項目にもわたる改善の提案と勧告が出されたのです。発達した経済大国に、こうした厳しい警告は異例でした。
 
 国内の児童虐待相談件数は、昨年度は40,000件を超えました。2002年と比較すると40倍に増加しています。景気後退や、貧困と格差の広がりといった、いわば政治によってつくり出された現実が、子どもたちに対しても、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、心理的虐待という形となって現れているのです。
 今回の議案が審査された総務委員会において、理事者から改めて、「児童虐待等の対応件数が、近年一貫して増加傾向にある。事案の内容の複雑化により、解決困難ケースが増加し、解決に至るまでの期間が長期化する傾向にある。対応方針の決定や関係機関との調整など専門家の関与が不可欠な事例が増加している」といった権利擁護委員の必要性の説明がありました。全国的に社会問題となっている児童虐待増加の解決は、本区においてもまさに待ったなしとなっているのです。
 子どもの権利に関する条例に基づいて、子どもの権利擁護委員が早期に設置されていれば、これまでに多くの児童虐待が解決されたはずです。これほどまでに設置を遅らせた区に、責任があるのは当然ながら、その原因となった自民党のこれまでの執ような態度も看過できません。
 
 区民に、そして子どもたちに必要な、子どもの権利擁護委員が、ようやく機能し始めるところです。本格的に機能させるためには、区がこれまでの遅れを取り戻し、本気になって取り組んでいかなければなりません。今後は、子どもの権利に関する条例と子どもプランに基づき、「子どもの権利委員会」と「子どもの権利擁護センター(仮称)」を早期設置し、子どもの虐待等を無くしていくために、あらゆる知恵を出し、可能性を見いだして進めていくことが重要です。
 
 以上、第76号議案「特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例」について、可決に賛成します。
 討論を終わります。