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区議会質問
 
2008年度一般会計決算、ならびに国民健康保険事業会計、老人保健医療会計、後期高齢者医療事業会計、介護保険事業会計の4特別会計決算の認定に、反対の立場から討論(森とおる議員)

【決算 本会議討論】
 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、
 認定第1号、2008年度一般会計決算、ならびに
 認定第2号、国民健康保険事業会計
 認定第3号、老人保健医療会計
 認定第4号、後期高齢者医療事業会計
 認定第5号、介護保険事業会計の4特別会計決算の認定に、反対の立場から討論を行います。なお、認定第6号、従前居住者対策会計には賛成いたします。
 
 それでは討論に入ります。2008年度は、アメリカ発の金融危機が、世界経済の大混乱を引き起こし、日本経済にも大きな影響を与え、諸物価高騰など深刻な状況を引き起こしました。景気後退を理由に大企業は競い合って、大規模な労働者の解雇、雇い止めを進めました。年末年始には年越し派遣村が、首都東京に出現し、日本の雇用の脆弱さに、世界中の注目が集まりました。また、大銀行は優遇税制によって法人税負担を免れていながら、中小企業への貸し渋りや貸しはがしを行い、倒産に追い込むといった事態が今も進んでいます。さらに小泉構造改革が、これまで大規模に進めた「庶民に増税、大企業・大資産家に減税」で、ぎりぎりの生活費に容赦なく課税して、国民に貧困と格差を拡大してきました。自公政権は、定額給付金をはじめとする内需拡大や雇用対策を行いましたが、いずれも短期的、一時的なものにすぎず、抜本的な対策ではなく、総選挙目あてのばらまきと言われました。このように国民を深刻な状況におとしいれ、切実な要望に応えようとしない自公政権に対する国民の審判が総選挙による政権交代という結果に表れました。

 東京都においては石原都政のもと3月に、八王子、清瀬小児病院、梅が丘病院の廃止条例が強行されましたが、存続を求める都民の世論と運動は、ますます大きく広がっています。また、新型インフルエンザの大流行など新たな事態が生まれている中で、小児病院の必要性はますます高まっています。他にも石原知事は、都議選後の世論調査では「新銀行東京は清算すべきが71%」「築地市場の豊洲移転反対57%」の民意を無視して態度を改めようとはしません。オリンピック招致経費150億円についても知事は、「財政再建の1つの余剰で、これをやることで財政は痛くもかゆくもない」とし、使途の公開責任を果たそうとしません。さらにオリンピック招致の看板とした、1メートル1億円をもかける外環道路事業は、いまだに強行する姿勢を改めようとはしません。まさに都民のくらしの厳しい実情に背を向ける行為です。

 豊島区は、国、東京都のこのような路線と方針に忠実に従い、財政難を口実にリストラ、合理化、住民犠牲の行革を次々と実施してきました。財政健全化計画、新生としま改革プラン、行財政改革プラン等で区民サービスを徹底して削減してきました。この方針は、財政が好転しても変わることなく、区民に我慢を強いて削減した福祉、教育の復元はほとんど実行しませんでした。また区は、小泉構造改革路線どおりに、医療、介護、年金等の相次ぐ社会保障制度改悪を、国と一体で強行してきたのであります。自公政権が受けた審判を区もしっかりと受け止め、区民の声に応える区政に転換しなければならないのです。

 今回、日本共産党区議団は、2008年度決算の審査にあたり、
 第1に、区民生活に根ざした財政運営をおこなったかどうか
 第2に、切実な区民需要にこたえ、区民サービスを向上させたかどうか
 第3に、無駄な開発、浪費を進めようとしていないかどうか
の観点で審査に望みました。

 最初に第1の観点である、区民生活に根ざした財政運営をおこなったかどうかについて述べます。
 一般会計の決算では、実質収支は、1993年以降では3番目に多い29億8千万円となりました。実質単年度収支は、マイナス31億2千万円と5年ぶりに赤字に転じたとされておりますが、これは土地開発公社未収金43億円の繰上償還を行った結果であり、借金返済により赤字になったものです。区自らの評価は「安定した健全な決算収支であり、財政健全化への道を歩んでいる」というものですが、一方、区民のくらしは、いっそう深刻になっています。サブプライムローン問題からリーマンショックへと世界同時不況が日本経済と国民のくらしに多大な影響を及ぼし、いっそう貧困と格差が広がっている中、同じように厳しくなっているのです。この区民がおかれている状況認識や分析、それに対する緊急救済措置といったやるべきことを、ほとんど実行していないのです。私が総括質疑で指摘したように、庁舎に目を向けるだけでも、区民の置かれている状況は、目の当たりにすることができます。国民健康保険、高齢者医療年金、保育園、子育て支援の窓口は混雑し、生活福祉課は時に外まで人があふれています。庁舎の外では自転車置き場に自転車が入りきらないほど庁舎を訪れる人々が増加しているといった、これまでにない状況が現実になっているではありませんか。区民がおかれている状況認識を質すと、ニュースで報道されている上辺だけにとどまるものであり、本当に区民と正面から向き合った答弁ではありませんでした。
 そういう認識であるから、財政難を口実に進めた区民犠牲の行革プラン等で、福祉関係費を削減した年間ベース8億円の復活は、わずか1億2,700万円でしかありません。区民には財政が好転するまで我慢を強いてきたのです。ところが財政が好転し始めると、復活ではなく、財政調整基金の積立に突き進みます。決算剰余金の2分の1を議会の議決を行うことなく自動的に積み増す仕組みまで強行し、やるべき区民需要を抑えに抑え込んで、2008年度は60億円となりました。この財調基金の積立と表裏一体で、2008年度に始めたのが借金返済です。昨年の2008年度予算委員会の席上、区長が突如土地開発公社の未償還分のうち125億円を13年の償還計画だったものを、3年間で前倒しして完済すると発言して始めたものです。この年度における償還額は元金と利息合わせて実に54億円にものぼり行き過ぎたやり方です。これまで必要な区民サービスのために振り向けることのなかった財調基金を取り崩してまで、借金返済に充てたのです。負の遺産の解消は大切なことですが、必要な区民サービス向上をないがしろにしたまま、優先すれば、それこそ区民に多大な影響を及ぼすことになります。後ほど具体的に指摘しますが、特養ホームの待機者と保育園の待機児は増える一方、区有施設は雨漏りとひび割れが放置され、孤独死も増加していますが、これらの救済策よりも、貯金積立と借金返済を優先する財政運営は認められません。


 次に第2の観点である、切実な区民需要にこたえ、区民サービスを向上させたかどうかについて順次、述べてまいります。
【保育園】
 1つ目に、保育園の待機児解消策についてです。
 保育園の待機児は、全国的にも問題となっています。本区の待機児童数は、増加率は23区でも高く、4月の待機児童は昨年、58人だったのが、本年は2.1倍の122人になりました。ぐずぐずしているために、9月現在、168名が待機する状況になっているのです。このままでは、来年度も待機児がさらに増大してしまいます。
 本決算年度、区は西池袋第一保育園と千早第一保育園の二園を民営化することにしました。千早第一保育園は、しいのみ保育園に土地も施設も無償で貸付を行い、統合合併したうえ、移転させて運営させることにしました。つまり、認可保育園を一つ減らしたのです。そのために、定員は大幅に減り、区全体ではマイナス23名ということになりました。待機児が増大しているのに逆行するやり方です。これについて反省もしていないというのですから驚きです。
 区は昨年、待機児童が50名を超えたために児童福祉法に基づき、保育計画の策定を義務付けられました。しかし、計画に盛り込まれた具体的な解消策は、施設の形状の見直しや、施設改修時の拡張で49人の解消策でしかありません。また、解消策は、西側地域の保育園がほとんどで、待機児童の多い、駒込、南大塚、西巣鴨などの東側地域の対策はほとんどないのであります。区は「認可保育園の増設にむけて動いている」「改修工事にも力を入れていく」とはいっていますが、いつ、どこに、どのような計画を立てているのかと質しても、「具体的な計画ができた段階で内容をしめす」と言って具体的解消策は、しばらく待ってくれというのです。全く緊迫感がありません。

【生活保護】
 2つ目は、生活保護についてです。
 生活保護者の急増は深刻です。副都心の池袋をかかえる本区では、派遣切りなどで住まいを失った路上生活者も増えております。生活福祉課に寄せられた、ひと月あたりの相談件数は、昨年4月は、1,652件でしたが、今年1月は2,300件を超え、6月は3,405件にもなりました。受給者は、昨年4月、4,130世帯だったのが、今年8月時点で、5,217世帯と急増しています。この増加に対応するために、今年度4月からケースワーカー3名を増員したといいます。しかしケースワーカー1人あたりの受持ち件数は、昨年4月の時点で91.8件であったものが、職員を増員した本年4月で100.9件、8月現在は108.7件と激増しています。わが党の指摘で、生活福祉課の職員については、増員するとしていますが、区は、あくまでも2,000名体制に職員を削減するといいます。すでに必要な職員数を下回っており、区民サービスに影響が出ているのです。この間、生活保護受給者の孤独死は昨年度23人、今年度10月8日現在、6ヶ月間ですでに19人となっています。現場の職員の方々は努力しがんばっていますが限界なのです。これらの実情を直視し、職員減らしは改めるべきです。
 生活保護に対する国・都への働きかけについては、保護費の国庫負担割合を増やすように求めましたが、国が決めたから仕方ないというのが区長の見解であります。老齢加算、母子加算の復活の要求の働きかけ同様、拒否する態度は認められません。
 また、区独自の法外援護については、見舞金の支給、入浴券30枚を60枚へ復活する考えはないとの答弁でした。隣の板橋区では80枚も支給しているのに、福祉に冷たい区長の姿勢が明らかになりました。ただちに元に戻すよう改めて要求しておきます。

【高齢者】
 3つ目は、高齢者対策についてです。
 一人暮らし高齢者・高齢者世帯対策費について、区は決算成果報告書で「対象等の拡大をおこなった」とし、年間ベースで8億円も削減した福祉費の中で「わずかばかりの復元」と報告しています。しかし前年度と比べると緊急通報システムの設置は67台から60台へと減らされました。福祉電話貸与事業では24台が14台と10台も減り、予算も687万円から308万円と半減され、さらに決算では248万円まで削減されました。これでは復元などとは言えません。直ちに一人暮らしあるいは高齢者世帯の安否確認の施策を拡充すべきです。ところが区長は来年度、実態調査し、対策を検討するといいます。調査をすることは否定しません。しかし並行して具体的な対策を取らないかぎり、高齢者の命を守ることはできません。ハローテレホン事業はわずか年間200万円で実施できるのです。このような決算は認定できません。

【障害者施策】
 4つ目は障害者施策についてです。
 障害者自立支援法のもとで、応益負担1割のために障害の重い方ほど負担増となり、施設に対する補助についても厳しい減額が続き、運営に支障をきたしています。政権が代わり、ようやく応益負担見直しの意見が出始めましたが、この稀代の悪法は一刻も早く廃止しなければなりません。
 心身障害者福祉センターで、これまで実施されてきた障害者入浴サービスが、入浴室の故障を理由に2008年度で廃止されました。それまでの利用者は、訪問入浴へ移行するか、自宅で入浴できない方は雑司が谷サポートセンターで利用することになりました。雑司が谷サポートセンターでは、利用者が増加したために、利用回数を減らさざるを得ない方が出ています。心身障害者福祉センターの入浴室は、放置されたままです。区がきちんと改修し、機械入浴ができるようにすべきです。
 障害者施策のもう1点は、グループホームについてです。区内に現在知的障害者の施設が9か所、精神障害者の施設が10か所、身体障害者の施設は軽度、重度ともにありません。これまでは家族や協力者が、自宅を建て替えるなどしてつくってきました。しかし、昨今の社会状況では、それが限界に来ています。障害者本人や支えてきたご家族の高齢化が進み、グループホーム入居を希望する方がますます増加してきています。今年度、区が東京都と建築費2,400万円を助成していますが、土地や建物の確保ができなければ使うことはできません。区がアパートやマンションを借り上げるなどして場所を確保し提供するなどの積極的な姿勢がありません。

【住宅】
 5つ目は、住宅対策についてです。
 新しいマスタープランにもとづく施策で、高齢者、障害者、一人親家庭などの住み替え家賃助成の拡充、ならびに子育てファミリー世帯への家賃助成といった新規事業は、ほとんど進んでいません。事業の検証を行い、早くも見直しをせざるを得ないとの答弁でした。区民住宅についても、家賃が高いために、空き家も増え、条件を緩和しても応募も少なくなっています。わずかな助成なのに期限を区切ったり、高い家賃設定にしたりするなど区民の実態に見合った施策になっていないからです。
 一方、区営住宅や福祉住宅は、応募する区民が多く、抽選の倍率も大変高く、これこそ必要とされる対策です。区営住宅についていえば、都からの移管のみで、新たに増やす計画はないのです。
 千川つつじ苑の雨漏りについて指摘したところ、住宅課は知っていながら、費用がかかるとして放置していることが明らかになりました。来年度にむけて、予算化するといいますが、雨漏りを放置すること自体、やるべきことをやらない典型です。

【商店街振興策】
 6つ目は商店街支援策についてです。
 全国各地で社会問題となっているシャッター通りが、区内各地の商店街でも深刻になっています。特に住民にとってなくてはならない、お肉屋さん、魚屋さん、八百屋さんといった生鮮三品の小売業の減少が年々進み、1997年から10年間で、282軒から159軒へと半数近くに激減しました。買い物が不便になると同時に街がさびれていくことに拍車がかかります。その影響で、遠方のスーパーや池袋の百貨店まで行かなければ買えない地域が増えており、豊島区が「高齢化社会による都会の限界集落」とならないためにも、商店街支援策は大変重要です。この間、商店街装飾灯補助増額、プレミアム付き区内商品券への助成、中小商工業融資拡充等、支援策を行っておりますが、質、量ともに不十分です。2008年度の全国の倒産件数は15,000件以上でした。国が進める規制緩和によって、お酒がガソリンスタンドでも売られるようになり、24時間営業のコンビニが閉店に追い込まれるなど、熾烈な競争に個人商店が太刀打ちできなくなっています。雇用の7割を担う中小業者が、がけっぷちに立たされている今、経営の存続と安定をはかることは区の責務です。区内商店、中小業者のために、国や東京都に対して規制の強化や助成増額を求めることも区の行政としてのサポートの1つです。それにもかかわらず、区だけでできることではないという後ろ向きの答弁でした。商店街支援策としての特効薬をしっかり示すべきです。

【清掃負担金】
 7つ目は、清掃事業についてです。
 2008年10月から廃プラスチックサーマルリサイクルが全面実施され、プラスチック類が焼却されるようになりました。2008年度のごみ量を見ますと、可燃ごみは前年より3,000トン増え56,900トンに、反対に不燃ごみは約7,000トン減り8,655トンです。燃やすごみが大幅に増えたということです。区民はこれまで、「プラスチックは燃やすとダイオキシンがでる。だから燃やさない。分別する」と説明され取り組んできました。本当に燃やしても安全なのか、燃やしてもいいなら、なんのための分別だったのか、今でも区民から疑問が出されています。ごみ問題解決の基本は、リデュース、リユース、リサイクル、すなわち、出さない、再使用、資源化の3Rが原則であり、3R実現のためには、拡大生産者責任を明確にした発生源抑制を強化し、同時に、住民の参加と協力のもとでごみを分別回収し、リサイクルの軌道に乗せ、ごみの減量を図っていくことです。「燃やすこと先にありき」ではCO2削減も、資源循環型社会も実現できません。廃プラサーマルを中心とした決算は認められません。
 さらに2008年3月14日の区長会総会で、特別区における「清掃負担の公平」として各清掃事務所での可燃ごみの処理基準を設定し“処理基準”より焼却実績が少ない場合負担金を払うことを決定しました。その結果、豊島区では2008年度のごみ焼却実績が処理基準より5,800トン少ないため、来年度300万円支払うことになりました。可燃ごみを少なくしようと区民が努力しているのに、お金を取る仕組みづくりなど言語道断です。

【教育費】
 8つ目は教育についてです。
 毎回指摘している子ども1人当たりの教育費は、数字上一見すると増額したかのように見えますが、大規模改修での投資的経費が上がったためであり、実質的な教育費は削減されたままであることが明確になりました。
 この間、区は財政難を口実に教育関連経費についても年間ベースで1億2,000万円も削減してきました。その結果、学校図書の購入費は年間1校あたり小学校で41万円、中学校で62万円です。23区平均では小学校は87万円、中学校は90万円であり、あまりにも低すぎます。わが党の指摘で来年度は増額することを、区は明らかにしましたが、大幅な増額を改めて求めるものです。
 子どもをめぐる貧困の問題も深刻です。学校給食費の未納状況は2007年度が56人、2008年度が43人、2009年度では半年で44人です。また2008年度の就学援助を受けている世帯は中学校で26%、4世帯に1世帯です。答弁にもあったように、経済危機の深刻さは子どもたちにも影響しています。中学3年生の私費負担は95,000円、給食費を入れると年間15万円を超えています。この中で校外関係経費は64,169円です。修学旅行は子どもにとって一生の思い出となります。しかし削減した中学校の修学旅行交通費助成の復活を求めても、教育委員会は「復活しない」と冷たい一言。子どもたちが安心して義務教育が受けられる環境を整えることは自治体の大きな役割です。子どもにあまりにも冷たい決算です。

 以上、いずれも切実な区民需要に応えていないことがはっきりしました。
 
 続いて第3の観点である、無駄な開発、浪費を進めようとしていないかどうかについてです。
【都市再生】
 都市再生についてです。
 昨年6月に東京メトロ副都心線が開通しました。区の「都市間競争に打ち勝つ」といった都市再生にかける意気込みにいっそう拍車がかかり、今もなお続いています。東池袋再開発、新庁舎建設、池袋駅東西デッキ、LRT(路面電車)を含む、新ルネサンス構想、池袋副都心グランドビジョン、国への環境モデル都市の応募等、時に議会への説明すらないまま、記者会見を行い、広報するなど、やみくもに大型開発に突き進む姿勢は、議会軽視であり区長の独断専行であることをわが党は明らかにしてきました。
 環境モデル都市への応募のために費やした税金は、315万円です。LRTの調査研究に費やした税金は、2003年度から6年間で20,712千円となりました。東西デッキ構想の「池袋駅及び駅周辺整備事業」は主に調査、シンポジウム開催、模型等の資料作成で2008年度までの2年間で53,141千円の税金が既に費やされました。
 将来的にLRTと東西デッキは数十億円、数百億円という莫大な費用がかかる事業です。また、いったん始めたら、後戻りすることはできません。本来は、鉄道事業者や百貨店などの、民間企業が行うべき事業です。厳しい経済状況下、民間企業が投資的経費を大幅に削減している昨今、多額の税負担の危険性をはらんでいます。区は税負担については検討中、協議中と明確にしませんが、区が率先して音頭をとっている以上、事業が本格化すれば、区が多額の負担を押し付けられて、背負いこんでいかなければ成り立つものではありません。各地で大型開発に多額の税投入を行い失敗した事例、破綻した数々の実態が浮き彫りとなっています。このような税金の無駄遣いが社会問題化している現実を直視し、ただちに踏みとどまる決断が必要です。これ以上、区長の「夢とロマン」に、多額の税投入を区民は望んでおりません。東西デッキ、LRTともに区民から「必要ない」という意見は、増すばかりです。限りある資源と税金は、区民が待ち望んでやまない福祉、教育、子育て、中小企業支援にこそ使うべきです。区が率先してやる仕事ではありません。

【庁舎】
 次に新庁舎建設についてです。
 本決算の2008年度、区は、5月に「新庁舎整備方針(案)」を公表、パブリックコメントを実施後、9月には「整備方針」を策定しました。この間2年の月日を費やし、問題となっていた7階建てのマンションを取り込み、敷地が整形化したとして、2棟案から1棟案に計画も規模も変更しました。その際、協議が整ったとして、旧日出小地区案を優先していくと表明したのです。ところが実際は、この計画に納得のいかない地権者が存在し、都市計画審議会と議会に、都市計画変更を求める陳情が出されました。
 決算審議の中で、地権者との関係がこじれたことについて、時系列で説明がありました。地権者が怒るのはもっともな内容です。地権者との協議が整っていないにもかかわらず、区は計画案を区議会に説明し、その後、A地区の再開発を決定するために、2度の住民説明会を行い、都市計画審議会に諮問したのです。再開発組合は、地権者の3分の2の賛成がないと設立できない仕組みのため、反対の地権者3名は、反対が3分の1を超えるように土地を細かく分筆し対抗策をとりました。方や今度は、賛成の地権者が3分の2を超えるように土地の分筆を始めました。再開発をめぐり賛成、反対の泥仕合の様相になってしまいました。庁舎建設をめぐって住民同士の対立をつくった区の責任は重大です。理事者はこのような結果については反省していると答弁がありましたが、反省するというなら計画を見直すべきです。
 わが党は、新庁舎建設は、区民合意で進めること、将来的な財政負担も考慮しコンパクトな庁舎を自前で建てることを主張してきました。この間、議会に対して、必要なことすら報告をしてこなかったこと、住民に知らせない区のやり方は本当にひどいものです。A地区だけでなく、周辺地域にも街づくりの点から批判が上がり、反対者も多くいます。ましてや該当地域で反対者がいるなどの、こうした事実を区民が知ったらどう感じるでしょうか。庁舎建設については、区民合意が最大の前提でなければならないのに、このような進め方はやめるべきです。今なら、まだ引き返すことができます。財政的にも不透明で、民間マンションとの合築といった再開発手法による庁舎建設を進めることは認められません。

 以上、これまで述べてきた理由で、一般会計決算の認定について反対するものであります。次に、4特別会計について順次意見を述べていきます。
 
 まず国民健康保険事業会計について述べます。         
 保険料についてです。この年は後期高齢者医療制度が始まり75歳以上の人が移行し、区の年平均被保険者数は85,741人で前年度より約21,000人、12%減となりました。しかし、医療費に関する賦課総額は5.5%のみの減とし、加入者が減っても、医療費の減り幅が少ないとして保険料が算定されました。さらに後期高齢者支援金と特定健診・特定保険指導の上乗せ分が加算、後期高齢者支援金には病床転換分と最後の老人保健拠出金まで入れて算定しています。その結果、保険料の均等割りを1,800円引き上げ36,900円に、所得割りは基礎分が0.9、高齢者支援金分が0.27で合わせて1.17とし、賦課限度額は6万円上がり、59万円となりました。そのうえ所得割り額に対する住民税のフラット化の激変緩和措置は継続されましたが、住民税の激変緩和措置がなくなりました。その結果、区民1人当たりの平均保険料は91,793円となり、前年度より4,797円も上がりました。
 深刻な経済危機と脆弱な社会保障制度のもとで、稼働年齢層の生活保護受給者は、いまだに後をたちません。国保でも担当理事者の答弁で示された通り、派遣切りで職を失い国保に加入する人が増えています。この年は、被保険者平均所得は117万円。2007年度の125万円より8万円も下がりました。均等割り世帯もこの間の44%からから47%と増えています。
 毎年、取り上げていますが、本決算年度の資格証の発行数は23区で、またも2番目に多く、今期末の2009年3月では資格証3,284、短期証3,241と資格証が短期証を上回りました。さらに超短期証と名付けられた1ヶ月の保険証発行数は137人となっています。一方、失業や休廃業での保険料免除世帯はゼロ。また医療費の自己負担減免の実績もゼロです。これは区民の立場で国保を運営していないというあらわれです。
 わが党は国会でも「国保証の取り上げを直ちにやめ、保険証の交付を」と主張し、本区でも区長申し入れをはじめ、機会あるごとに保険証の交付を求めてきました。その結果、区はやっと今年の9月に34人の無保険の子どもたちに保険証を交付しました。国民健康保険制度は、医療を受けるための社会保障制度です。ところが毎年国保料を上げる、払えなければ資格証を発行し、医療を受けられなくする。片や国庫負担率は大幅に引き下げてきました。国庫支出金の割合は、1984年度の49.8%から2000年度は34.9%と削減され、2008年度は「被保険者が減少」したと前年度64億円、22.6%だったものが57億円と10億円も削減、比率も20.15%まで下がりました。国庫負担を上げるよう強く求めるべきです。
 
 次に後期高齢者医療事業会計についてです。
 当該年度から後期高齢者医療制度が始まりました。医療費抑制を最大の目的としたこの制度は、スタート前から保険料、資格証、医療内容、窓口負担、健診など、あらゆる事がらに対し国民から疑問、不安、不満が出されてきました。その上、始まるやいなや、担当課には、保険料の算定方法を中心に、区民から多くの問い合わせが殺到しました。自公政権はあわてて、開始早々いくつかの負担軽減策を取らざるをえませんでした。また「長寿医療制度」などと名前を変更しましたが、中身が変わらなければ何の意味もなく、国民感情を逆なでする結果となりました。制度の廃止を求める声は日増しに大きくなりました。直ちに廃止することが重要です。廃止が先送りされた場合、新たな保険料が設定されることになります。現在、自公政権時代の仕組みに従って検討されている都広域連合の案では、いずれも現行より大幅に引き上げられることになります。これでは高齢者の生活はますます逼迫します。保険料の値上げは行うべきではありません。
 今期は「高すぎる保険料」に対して多くの不満の声が上がり、自公政権は負担軽減策を、都も独自の軽減策を実施しました。その結果、すべての所得階層で国保より保険料は引き下げられました。それでも9月18日現在で一ヶ月以上の滞納者は587人、そのうち9ヶ月以上の滞納者は137人おり、このまま支払いがなければ資格証の発行対象となります。区は事情を聴き、慎重に対応すると答弁していますが、国保のように機械的に発行する道を開くものです。そもそも高齢者は有病率が高く、すぐ悪化するという特性から老人保健制度では資格証の発行を認めていません。絶対に資格証は発行すべきではありません。
 
 次に介護保険事業会計についてです。
 介護保険制度は、高い保険料、必要な介護が受けられない、認定基準の改悪、低い介護報酬のため介護施設での労働条件の悪化など、多くの問題点がうきぼりになっています。こういう中で、今回は年々待機者が増え、深刻さを増しているにも関わらず対策が取られていない特別養護老人ホームについて述べます。
 介護保険の基盤整備として特養ホーム建設は喫緊の課題です。様々なアンケート調査を見ても、区民の区に求める要望の中で、ひときわ高くなっている施策の1つです。特養ホームの待機者数は、本年7月の統計で1,031人、その中で緊急度の高いAランクの待機者数は308人と、いずれも高止まりしております。区は一刻も早い建設が必要だという認識は示しても、土地の確保が困難であることを理由に一向に具体化しません。過去の決算特別委員会や予算特別委員会で、土地の確保に向けて地権者と交渉中につき、もう少し時間がほしいといった答弁の繰り返しで、期待して待っていても、いずれも交渉は決裂しています。今年、群馬県の無届の施設火災で痛ましい事件が起こりました。特養ホーム建設は最重要課題です。100床が無理であるならば50床でも進めるべきです。また区有地の活用を検討していると答弁がありましたが、それならば、他の区で先進的に始まっている学校跡地の旧校舎活用など、あらゆる可能性を見いだし、区が責任をもって建設すべきです。
 
 なお、高齢者を病院から追い出す老人保健医療会計も認められません。

 以上、4特別会計の決算認定に反対することを述べ、私の討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。