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区議会質問
 
21陳情第12号「子ども擁護センター(仮称)」の設置についての陳情及び21陳情第15号「豊島区子どもの権利に関する条例」の具体化についての陳情について採択すべき立場からの賛成討論(儀武ぎぶさとる議員)

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております21陳情第12号「子ども擁護センター(仮称)」の設置についての陳情及び21陳情第15号「豊島区子どもの権利に関する条例」の具体化についての陳情を、子ども文教委員会の報告どおり、採択することに賛成の立場から討論を行います。 
 
 この2つの陳情は、区内で子どもの虐待、いじめなどがひろがり、東部子ども家庭支援センターのマルトリートメント相談・通報の件数が年々増え、08年度の取扱い件数は539件にも上り、解決するまでに相当な時間を要する困難な事例も多くなっていること。子どもの権利侵害からの救済及び回復するために「子ども擁護センター(仮称)」の設置と、「子どもの権利に関する条例」に基づく計画及び施策を検証するための「子どもの権利委員会」の設置等を求めるものであります。
 
 子どもの権利に関する条例が制定されて3年になりますが、条例では、権利擁護委員の設置と権利委員会の設置を規定しているにもかかわらず、この3年間具体化されてきませんでした。また、『基本計画』では子ども擁護センターの設置を事業計画としています。子供をめぐる状況は、複雑かつ深刻になっているにもかかわらず、区民に約束された計画が放置されており、区民のやむにやまれぬ気持から、この陳情が議会に提出されたのであります。
 
 さて、条例の制定の経過を振り返ってみますと、子どもの権利条約が1989年11月に国連総会で採択され、日本では、1994年4月に、国会では全会派一致で批准されました。こうした流れの中、本区は、第23期豊島区青少年問題協議会の答申で、子どもの権利条例の制定が提案されました。そして、区の基本構想に「子どもの権利を保障し、子どもがのびのびと育つ環境づくりをすすめます」と目指すべき方向が示され、豊島区子どもプランには、子どもの権利条例(仮称)の制定が盛り込まれたのであります。2003年12月に、学識経験者、区民代表、教育関係者、関係団体代表、区職員などから成る子どもの権利条例(仮称)検討委員会が発足し、子どもを初め、様々な立場の人の意見を聞く聞き取り調査の実施、中間のまとめの説明会の開催、子どもワークショップ、高校生公開ディベートなど、様々な形での意見聴取や検討を重ね、05年3月、検討委員会報告書で、豊島区子どもの権利に関する条例(素案)が出されたのであります。この策定までの間、延べにして267時間の議論と月日を費やし、苦労してつくり上げられた素案では、子どもの権利保障や健全育成の原則、理念を明文化し、かつ子どもの権利が侵害されたときの救済と回復についての具体策まで規定されたのであります。
 
 条例案は、自民党議員も一緒になって検討された豊島区青少年問題協議会の答申に基づいて作成されており、いわば区議会も全会派一致で進められた経緯を踏まえてつくられたものであります。その内容は全国的にも優れた、国連で採択された権利条約に沿った形での総合条例であります。しかしながら、自民党から突如、「今必要なのは子どもの権利を保障することではなく、善悪の判断や社会の決まり事を伝達すること」「子どもの権利の履き違えがある」「子どものわがままにつながる」といった意見が出され、区は条例化に慎重になってしまいました。紆余曲折はありましたが、区民の要求と運動の高まりの中で、議会では自民党を除くすべての会派が条例案に賛成し、06年3月に条例は可決成立したのであります。
 
  それでは、陳情に賛成する理由について、順次のべてまいります。
 まず、子どもをめぐる現状は待ったなしだからであります。
 東部家庭支援センターでのいじめや虐待の相談件数は、05年までは100件から200件前後で推移していましたが、06年が407件、07年は448件、08年は539件と大幅に増えています。しかも、複雑、困難ケース、長期化する事例が増え、多重債務、家庭崩壊、精神疾患など医師や弁護士などの専門家の協力、連携が必要であります。派遣や非正規雇用などの不安定雇用が広がる中で、格差と貧困がますます拡大し、子どもの貧困も広がっています。東部子ども家庭支援センターのマルトリートメント相談・通報件数はさらに増えることは必至であります。子どもの「助けて」という叫びに区の役割が問われているのです。子どもへの権利侵害を予防・救済をする上で子どもの権利擁護センターの設置は急務であります。

 次に指摘しなければならない事は、区は3年間も条例の具体化をしてこなかった区長の責任についてであります。
 先ほども述べましたが、子どもの権利条例(仮称)検討委員会、青少年問題協議会、育成委員会など区内のあらゆる団体の英知を結集して、策定段階から意見聴取をおこない、全国にも誇れる条例を制定しました。区は『基本計画』でも、子どもの権利擁護センターの設置を謳っていること。この権利条例と権利擁護センターはセットであると繰り返し説明してきました。私が、この点を指摘すると区は「どういう組織で、どういう機能をもたせるか検討している」と答弁しました。検討、検討と言いますが、3年経っても具体化しなかったのです。予算もまともに検討すらしていません。これでは、事実上、放置してきた区の怠慢だと指摘されても止むを得ません。かつて、区長が「見直し、廃案も含めて検討」すると表明したのが大きく影響を与えているのです。議会で可決した条例を具体化しないのは議会制民主主義にもとるものであります。

 さらに、この陳情を採択する意義は、自民党の妨害を撥ね退け、区に子どもの権利を保障する施策を具体化するために、改めて議会としての立場を明確にすることにあるのです。
 今回の委員会審査では、自民党はまたしても「子どもがわがままになる」「『都区のあり方検討会』の中で児童相談所は区に移管されることが固まった。それを念頭において、研究する必要がある」「東部子ども家庭支援センターを拡充すべき」などと主張してこの陳情の採択に反対したのであります。
 「子どもがわがままになる」という議論については、「条例制定はそういう意味ではない」これこそ「権利の履き違えである」と区の理事者も、これまでも明確に答弁しています。既に決着済みの事であります。
 自民党が、異常と思えるほど、なぜ、これほどまでに条例と陳情に反対をするのでしょうか。それは、小泉内閣以来、憲法改悪の策動と教育基本法の改悪に見られるように、国民の権利そのものを狭める方向を示していることを見ても明らかであります。自民党の打ち出した新憲法草案の最大の特徴は、平和原則を投げ捨てることであります。前文を全面的に書き替え、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」という文言を完全に削除しています。憲法9条2項も完全に削除し、代わって「自衛軍を保持する」と明記しております。即ち、侵略戦争への反省を捨て、軍隊保持と海外派兵の道を開き、戦争のできる国に変えようというものであります。そのために、国民権利の拡大はこれに反するものと捉えているのであります。また、自民党が教育基本法の改悪の重点にしたのは、愛国心を謳っていることであります。この目論みの最大の意図は、これも国民の自由や権利保障を代えて、愛国心を子どもから大人まで広く植え付け、まさに戦前のような思想を国是とする統制機構をつくり上げたいということであります。ましてや子どもの権利を尊重する社会の実現ということは、こうした自民党の主張の流れに反するものとして捉えているからであります。

 児童相談所の区への移管が固まったと言っても、いつ移管されるのか見通しもありません。その間、現状のままで放置していいというのでしょうか。また「東部家庭支援センターを拡充すべき」と言いますが、権限のない相談、擁護だけでは問題は解決されません。年々増えている児童虐待等を予防し、早期発見に努め、是正要請などができる権限をもつ 権利擁護センターの設置は急務であります。陳情の要旨にも指摘されていますが、まさに、「条例の真価が問われている」のであります。議会は2つの陳情を可決し、区はただちに条例に基づき、子どもの擁護委員と「子どもの権利委員会」の設置の具体化をすべきであります。
 
 以上述べた理由により、21陳情第12号「子ども擁護センター(仮称)」の設置についての陳情及び21陳情第15号「豊島区子どもの権利に関する条例」の具体化についての陳情をただちに採択すべきです。
 以上で私の討論を終わります。 ご清聴ありがとうございました。