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区議会質問
 
後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書の賛成討論(儀武ぎぶさとる議員)

 私は、ただいま議題とされております議員提出議案第12号、後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書について、民主・区民豊島区議団、日本共産党豊島区議団の2会派を代表して、賛成の立場から討論を行います。 
 
 福田・自公政権が4月実施を強行した後期高齢者医療制度に、日本列島を揺るがす怒りがわき起こっています。本区でも「保険料はどうしてこの金額になるのか」「収入が変わらないのに国保料より高くなった」など、窓口に苦情・相談が殺到しました。
 国民の大きな批判の前に、政府・与党は、「説明不足だった」などと言いわけしたり、「見直し」などと言い出しています。しかし、政府が説明すればするほど、国民の不安や怒りはひろがるばかりです。現代版「うば捨て山」とも言われる血も涙もないこの制度の害悪を、制度の一部「見直し」で解決できるものではありません。憲法25条の生存権、憲法14条の「法の下の平等」を踏みにじる希代の高齢者差別法は、撤廃するしか解決の道はありません。
 

 廃止しかない第一の理由は、医療費削減を目的にして、75歳以上の高齢者を差別することは、どんな理由があっても許されないからです。
 どうして75歳以上だけ、国保や健保から追いだし、別枠の制度に囲い込む必要があるのでしょうか。 政府のねらいは、高齢者を別枠の医療保険に囲い込み、高い負担を押しつけ、診療報酬も別建てにすることで、差別医療を押しつけることです。実際、厚労省の試算では、2015年度には、医療費全体の削減額3兆円のうち2兆円を、2025年度では、8兆円削減のうち5兆円を、75歳以上の医療費削減で「捻出」するとしています。高齢者の医療費を「いの一番」に削減するため、後期高齢者医療制度はつくられたのです。
 この間、自公政権は、老年者控除の廃止など増税を押しつけ、介護保険も改悪し、年金も減らしてきました。そのうえに高齢者差別の医療制度です。「高齢者をどこまでいじめるのか」「戦火をくぐりぬけ、戦後の大変な時代に苦労してきた人たちにひどい仕打ちをする、いつから日本は、こんな冷たい社会になったのか」こんな政治に不安と怒りの声がわき起こるのは当然です。どんな理由があれ、医療という人間の命にかかわる問題で、高齢者を差別する制度は、一刻もつづけさせるわけにはゆきません。

 
 第二の理由は、この制度は、存続すればするだけ、ますます過酷な痛みを、高齢者と国民に押しつけるということです。
 4月、6月に「天引き」された保険料額を見て、憤りが高齢者のあいだにひろがりました。しかしこれで終わりではありません。この保険料は、これから連続的に値上げしていくのです。
 後期高齢者医療保険料は、2年ごとに見直され、75歳以上の人口が増えれば自動的に値上がりする制度になっています。長寿の人が増えるだけで、保険料が値上げになるのです。そのうえに医療技術の進歩などで一人当たりの医療給付費が増えれば、もっと値上がりする仕掛けになっています。
 東京都は、平均保険料が2年後には2万円、4年後には3万円の値上がりになると試算しています。75歳以上の一人当たり医療給付費や人口が政府の予測通り増えつづければ、「団塊の世代」が「後期高齢者」となる2025年度には16万円と、2倍以上に高騰します。保険料を「年金天引き」にしたのも、どんどん値上げしても、「取りはぐれない」ようにするためです。「年金を減らしながら、保険料だけは有無を言わさず取り立てる」こんな強引な「取り立て」に高齢者の怒りと不信がひろがるのは当然です。 
 政府・与党が6月12日に合意した後期高齢者医療制度の「見直し」方針は、広がる一方の国民の怒りを前に、あわててとりまとめたものです。今回の「見直し」は、年金収入80万円以下の世帯の保険料を9割軽減することなどを「売り物」にしています。しかし、対象人数は約360万人で、75歳以上全体(約1300万人)の3割以下にすぎません。本区も同様です。政府試算でも、今回の軽減策で、負担が増える世帯の割合は、全国平均で31%から25%に、わずか6ポイント変わるだけです。
 後期高齢者医療の保険料を一部軽減する政府・与党の「見直し」策によって、保険料が負担増から負担減に変わる人は、約65万人にとどまりました。制度の「円滑な運営のため」「将来にわたり維持するため」と言って、高齢者を年齢で差別する制度の根幹には一切手をつけていません。保険料の一部軽減など「微修正」で、批判をかわそうとするものであります。
 

 第三の理由は、「標的」にされているのは高齢者だけでなく、すべての世代に重い負担を押しつける制度だということです。
 政府や与党は、「世代間の負担の公平」などといって、あたかも、この制度が現役世代の負担軽減になるかのように言っています。しかし、この制度の最大の「標的」とされているのは現役世代、とくに「団塊の世代」です。この世代が「後期高齢者」になったときに、負担増と医療切り捨てをいっそうすすめることがねらいなのです。政府は、高齢化のピーク時である2025年度には、75歳以上の医療費を5兆円も削減するという「見通し」をしめしていますが、2025年とは「団塊の世代」が「後期高齢者」になる時期にほかなりません。
 将来だけではありません。現役世代の組合健保や政管健保からの「後期高齢者支援金」は、これまでの老人保健制度への拠出金より増額され、健康保険組合連合会では「5000億円の負担増になる」としています。市町村国保を含めて現役世代の保険料の値上げの動きも出ています。これまで扶養家族だった高齢者からも新しく保険料が徴収されますが、これも実際には、現役世代の新たな負担増になります。
 
 また、65〜74歳の高齢者にも、国保料の「年金天引き」が導入されます。65歳以上の障害者も、後期高齢者医療制度に事実上「強制的」に加入させられる人が多く、負担増や差別医療が押しつけられます。あらゆる世代に、負担増と医療切り捨てが押しつけられるのです。それにもかかわらず、「世代間の公平」などと、高齢者と現役世代、親と子や孫の世代の間に、意図的に「対立」を持ち込み、この制度を無理やり押しつけるのは、許せるものではありません。
 このように、この制度のもたらす害悪は、はかりしれないものがあります。高齢者差別という制度の根本が間違っている以上、小手先の「見直し」ではなく、制度を撤廃するしか解決の道はありません。
 今、後期高齢者医療制度を廃止すべきだという声は大きくひろがっています。新聞各紙の世論調査で、「評価しない」と答えた人は7割を超えるなど、世代を超えて国民の圧倒的多数が批判を高めています。全国の都道府県医師会のうち6割以上が反対や批判の態度を表明するなど、医療関係者からも反対や中止を求める声がひろがっています。
 
 自公政権は、国民的議論もせず、法案は強行採決で成立させ、大きな怒りと不安にも耳を貸さずに実施を強行したという、後期高齢者医療制度強行の大失政をきびしく反省すべきです。そして、小手先の「見直し」で、この希代の高齢者差別制度を「延命」させるのではなく、きっぱり廃止すべきです。
 
 政府は、「財源がない」と言いますが、廃止しても3月までの制度に戻すだけですから、新たに大きな財源が必要になることはありません。だいたい「財源」を理由に、高齢者を差別する医療制度をつくってよいのでしょうか。高齢者差別はどんな理由であれ許されません。
 日本の医療費は、GDP比8%と先進国でも最低水準であり、本来なら増やして当然なのです。医療を支える財源についていえば、自公政権は、大企業や高額所得者に7兆円もの減税をし、年間5兆円もの税金を軍事費に流し込み、在日米軍再編に3兆円もの税金をポンと出そうとしており、これらの歳入・歳出のゆがみに根本からメスを入れるべきです。政治の姿勢さえ変えれば、安心できる医療、年金、介護など社会保障制度と、それを支える財源をつくることはできます。
 
 以上述べた理由により、議員提出議案第12号、後期高齢者医療制度の廃止を求める意見書を直ちに可決すべきです。これで、私の討論を終わります。 ご清聴ありがとうございました。