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区議会質問
 
豊島区一般会計補正予算に反対する討論(森とおる議員)

 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、第57号議案「豊島区一般会計補正予算(第一号)」について、可決に反対の立場から討論をおこないます。

 本補正予算には、妊婦健康診査経費や小中学校庁内LAN端末増設経費等、区民にとって必要な施策が含まれています。特に妊婦健診については、他のほとんどの区同様に4月にさかのぼり14回公費補助を行うことになったことは賛成です。しかし、少子化対策の一環としてこの拡充は以前から強く求められており、本来ならば当初予算案の段階で提案されるべきものでした。今後さらに妊婦健診事業の拡充を求めるものです。
 問題は本補正予算には、土地開発公社分割償還金の繰上償還経費が5項目計上されていることです。その合計は29億5千万円です。現在、土地開発公社分割償還金残高は170億6千万円。この内、今回提案されたのは、1987年度から1998年度の借入金残高125億7千万円を3年間で完済するため、今年度分29億5千万円を繰上償還として上乗せするもので、当初予定されていた償還額と合わせると、38億5千万円を償還することになります。この繰上償還計画は、区長が、本年第一回定例会予算特別委員会において突如発表し、具体化されたものです。
 これまでの計画では、この残高は2021年度まで、今後14年間をかけて償還するとされており、今年度からの3年間で比較してみると、22億3千万円を分割して償還するという中身でした。この計画変更により、2009年度は20億1千万円、2010年度は53億6千万円が繰上償還として、それぞれ上乗せされる予定となっています。この計画によって今年度は、実際の負債償還総額が、実に100億円を超えることになります。
 わが党は、借金返済について、けっして悪いことではないが、必要な他施策とのバランスを重視しながら、慎重に対応すべきものであるということを、これまで繰返し主張してきました。今回の補正予算に示されている土地開発公社分割償還金の繰上償還は、区民需要に応えた上で実行される償還計画とは言えません。バランスを欠いた、あまりにもゆきすぎた手法であり認めることはできません。以下、反対の理由を述べます。

 第一の理由は、福祉、教育等、今こそ区民から求められている必要な施策にこそ、力を注ぐべきだからです。
 区はこれまで、財政難を口実に徹底してリストラ、合理化、住民犠牲を区民に押しつけてきました。区民の財産である施設や土地を売り払い、保育園民営化や指定管理者制度導入等と一体で進める職員削減・給与カット、福祉電話や生活保護世帯風呂券、各種団体への助成費カット、児童館・ことぶきの家を廃止する目的の区民ひろば実施、修学旅行や移動教室の補助金カット、子どもたちの居場所を限定しレベル低下を招いた子どもスキップの導入等など、高野区政は福祉関係経費年間8億円、教育関係経費年間1億2千万円を削減しました。本補正予算が審査された総務委員会において、現時点の区財政の状況を質したところ「物価高騰などによる先行き不透明感はある」としながらも「財政状況が良くなり収支バランスがとれるようになってきた」と答弁がありました。今年度の予算特別委員会でも事業費が28億円の増加となる2年連続の積極型予算と評価しています。今こそ徹底して削減してきた数々の福祉や教育等施策の復活充実を、区民は期待しているのです。ところが復活した事業は、ほんの微々たる程度であり区民の切実な要求に応えていません。繰上償還する財源を、わずかでも振り向けることで、多くの事業を復活し充実することができるのです。

 第二の理由は、福祉、教育等、必要な施策を実施する今後の計画すら、具体的に示されていないからです。
 切実な区民要求である公営住宅増設や、千人を超える待機者がいる特養ホーム建設等、区がやらなければならない事業も同じように一向に進んでいません。土地開発公社分割償還金125億7千万円を3年間で完済するという具体的な計画が示されている中で、福祉、教育等の復活、拡充といった今後の計画も示されて当然です。委員会でこの点を質すと「研究調査中である」と答弁され、この分野について区のやる気のなさは、これまで同様変わりありません。
 今年度予算特別委員会の中で、保健福祉部長が「豊島区の福祉のレベルは中の下である」と答弁しました。今回の総務委員会でこのことを事例にあげると、区長は「改めて調べ直したら中の上だった」と、保健福祉部長の発言を撤回しました。その根拠となる資料を見てみると、2004年度から2006年度普通会計決算の民生費の23区比較表でした。この場で全て解説することはいたしませんが、これは各区の予算に占める民生費の構成比を高い順に並べたものであり、福祉の度合いを比較できるものではありません。国民健康保険事業会計拠出金や生活保護費等が含まれており、生活保護費が多いのは、そこの区民の生活が、どれだけ大変であるかということです。この資料を根拠に「中の上だ」と言うのであれば、それこそ区民の厳しい生活実態を見てもいないに等しいものです。福祉、教育等の充実が一向に具体化されない理由が、まさにここにありと、改めて実感できました。
 燃料や食料等、生活必需品の物価高騰により区民生活は、ますます厳しくなっています。その中で豊島区においては、小中学校の給食費値上げ等が次々と実行されています。区は足元を見失っていると言わざるを得ません。

 第三の理由は、大型開発計画と表裏一体となった償還計画だからです。
 区は、福祉、教育等の復活、充実を実施しないどころか、計画すら示さない一方で、今年度予算委員会で明らかにした新ルネサンス構想には、区民不在のやり方ともいえる大型開発が多数盛り込まれております。その後も矢継ぎ早に「環境モデル都市の提案」「池袋副都心・グランドビジョン2008」と議会への説明さえ十分に行うことなく、立て続けに公表しました。民間マンションと合築による新庁舎建設、LRTや東西デッキといった、区民からの批判が大変多い大型開発が目白押しで並んでおり、すさまじい勢いでその形を変えながら進行しています。これらを、まさに区長を先頭に全庁一体で強行しようとしていることは間違っています。大型開発を実現するために将来、新たな資金を調達しやすくするために負債償還を進め、福祉、教育等という真に区民が待ち望んでいる施策を抑制するやり方は認められません。なりふり構わず独断専行に進める区長の政治姿勢に、今までにないほどの多くの区民が、不満を持っていることは当然のことです。

 以上、反対理由を述べてきましたとおり、第57号議案「豊島区一般会計補正予算(第一号)」について可決に反対します。
 討論を終わります。