HOME第64号議案「豊島区乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準に関する条例」反対討論しました  儀武さとる【本会議討論10/24】
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第64号議案「豊島区乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準に関する条例」反対討論しました  儀武さとる【本会議討論10/24】
2025.10.28
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 私は、日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま上程されました第64号議案 豊島区乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準に関する条例について、可決することに反対の立場から討論をおこないます。

 子ども子育て支援法等の一部を改正する法律により、児童福祉法の一部が改正され、同法に乳児等通園支援事業(こども誰でも通園制度)に関する規定が新設されました。この事業は、保育所等に通っていないゼロ歳6ヶ月から満3歳未満の子どもが、月一定時間までの利用可能枠の中で、保育所や幼稚園等を利用することできる制度です。本議案は、乳児等通園支援事業の新設に伴い、国から「乳児等通園支援事業の設備及び運営に関する基準」が示されたことから、区においても、内閣府令を踏まえ、条例を新たに制定するものです。

 本事業の実施方法は2通りあります。一般型乳児等通園支援事業と余裕活用型乳児等支援事業所です。一般型は、保育所、認定こども園、地域型保育事業、幼稚園及び子育て支援拠点等で、専用室を設けるなど、新たに利用定員を設定して実施する事業です。余裕活用型とは、保育所、認定こども園、地域型保育事業所において、利用定員の空き枠を活用し実施する事業であり、各施設事業所について定める条例の職員配置基準と同等の人数配置が必要となります。現在、一般型での事業所を検討している事業所が5施設、区立7施設を合わせて12施設で、余裕活用型での事業を検討している事業所は21施設と説明がありました。

 この事業については、現場の保育士、事業主などから様々な懸念や問題が指摘されています。以下、条例に反対理由を3点述べます。
 第1は、受け入れる側の保育現場にとって、低すぎる条件設定での実施が求められる問題です。
 条例案では、乳児室の面積基準については、内閣府令の基準である「1.65平方メートル以上」を「3.3平方メートル以上」としています。区は、国基準より上乗せをしたとしていますが、まだまだ不十分です。私が、「預けられるお子さんが泣きっぱなしの場合には、現状はどうしていますか」と質問したら、区は、「区立保育園では保育士とお子さんは廊下のほうに出て、気分転換をして対応している」と答弁しました。
 現場の保育士からは、「泣きっぱなしのお子さんは、慣れるまでには相当な時間がかかり大変だ」と話を伺います。生後6か月から3歳未満を受け入れることを、あまりに簡単に考えていないでしょうか。人見知りが始まり、親の後追いが激しい時期に、慣れない場所で見知らぬ保育者に預けられる子どもの負担は計り知れません。また、通常保育を受けている子どもたちの集団に、短時間の子どもが不定期で入ってくることは、保育所で毎日過ごしている子どもを不安にされる恐れもあります。
 条例案では、職員の配置は、乳児おおむね3人につき1人以上、満1歳以上3歳未満の幼児おおむね6人につき1人以上とし、そのうち半数以上は保育士でなければなりませんとしていますが、職員の配置基準が低すぎます。
 私が「2人以上の職員配置が必要になっているが、正規職員を充てるんですか」と質問すると、区は、「一般型では、正規職員も充てるんですが、それに代わる職員も充てて構わないこと」、余裕活用型では、「常時2人というところは、1人でもよい、保育士か保育士に準じる経験、資格を持っているもの」と答弁しました。初めての子どもを日々受け入れるには、十分な体制と保育のスキル、経験が必要です。通常保育でも保育士不足や低すぎる処遇で疲弊している保育現場に新たな負担を強いることになりかねません。

 第2に、アンケートの利用者の声、実施園の声が反映されていないからです。
本区は、誰でも通園制度の本格実施に向け、都補助事業の「多様な他者とのかかわりの機会の創出事業」を活用し、2023年度下半期より施行的事業として「豊島つながる定期預かり事業」を実施しています。今年度、こどもつながる定期事業についてのアンケートを、上半期4~9月は利用者と実施園へ、行いました。事業を利用して改善してほしい点では、8割の利用者が、「現在の2回から預かり回数を増やしてほしい」「実施園をふやしてほしい」と回答がありました。実施園からの声では、「保護者支援という側面から事業の意義がある」と肯定的な意見があった一方、多くの園からは「保育従事者の負担が大きい」「補助金が不足している」との声がありました。私が、これらの声が反映されていますか、と質問したら、区は「施行の段階でおこなっている月16時間以内で実施している」「いま施行で行っている単価をベースにした事業の推進ということを考えています」と答弁しました。アンケートの利用者の声、実施園の声が反映されていません。何のために、アンケートを実施したのでしょうか、と言わざるを得ません。

第3に、「総合支援システム」を使うことの運用の問題についてです。
 2025年度までは事業の実施主体は市町村ですが、2026年度の本格実施からは利用者と事業者の直接契約になり、市町村の責任があいまいになります。利用者は、国が提供する「総合支援システム」を使って、施設の空き状況を調べ、情報を入力し、予約することになっています。
 私が「このシステムの運用は、順調に軌道にのっていますか」という質問に対して、区は「現時点では、本システムを導入していないが、来年度にむけて、この事業を実施するすべての事業所に、システム利用の説明をすることになるので、とてもタイトな時間になっている」と答弁しました。これで来年度の本格実施に間に合うでしょうか。各施設の職員は、通常業務をこなしながら、日々の空き状況の確認や面接などの対応、システムを運用など、新たな業務も発生し、この点でも新たな負担になりかねません。
 少子化で子育ての孤立化がすすむなか、家庭で育つ3歳未満児への支援を求める声は多く、子どもだけでなく親も含めた支援の仕組みづくりが必要であることは確かです。前にも述べましたが、今の条件のままでは十分な対応ができないため、現場の保育士、事業者、保護者からの懸念や切実な要望が出されています。これらの声に応えることこそ、どの子も安全で安心してあずけることができます。国や自治体は、これらの声に応えるべきです。

 よって、第64号議案、豊島区乳児等通園支援事業の設備及び運営の基準に関する条例について、可決することに反対します。

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