HOME5請願第2号 「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の実施延期を国に要望することを求める請願」採択を求める討論を行いました(清水みちこ)
主な活動
5請願第2号 「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の実施延期を国に要望することを求める請願」採択を求める討論を行いました(清水みちこ)
2023.07.10
録画中継はこちら→録画配信 (kensakusystem.jp)

私は日本共産党豊島区議団を代表して、ただいま議題とされております、5請願第2号 適格請求書等保存方式(インボイス制度)の実施延期を国に要望することを求める請願について、不採択とすることに反対し、ただちに採択することを求めて討論を行います。

本請願は新型コロナと物価高騰の影響により中小企業・小規模事業者の経営困難が続くもとで、今年2023年10月から実施されようとしている適格請求書等保存方式(以下、インボイスと言います)は、売上1,000万円以下の免税業者を取引から排除しかねないこと、事業者間の取引慣行を壊し、免税点制度を実質的に廃止するものであること。また新型コロナを克服し、新しく構築すべき経済・社会においても、地域に根差して活動する事業者が不可欠であることから、豊島区議会として国に消費税のインボイスの実施を延期するよう要望することを求めるものです。

インボイス制度とは、業者間で消費税が課税される商品やサービスの取引をした際に、消費税を受け取った側の業者(品物などを販売した側の業者)が発行する請求書のことで、法律上の名称は「適格請求書」といいます。2019年10月の消費税8%から10%への増税、および食品などの8%の軽減税率制度、つまり複数税率の開始によって導入されるものです。複数税率となり4年間の経過措置を経て、2023年10月から、通常の請求書の記載事項に加えて、「税率別の消費税額」と「インボイスを発行する事業者の登録番号」が記載されていることが必要です。この番号は税務署に登録すると割り当てられるのですが、その登録は消費税を納税する事業者でないとできません。つまり、「免税事業者はインボイスが発行できない」仕組みになっているのです。

日本共産党は、あらゆる分野で起きている物価高騰には、消費税の5%への緊急減税こそ、最も効果的であること。またインボイス制度は小規模事業者やフリーランス、クリエーターなど、多くの人に、経済的にも、事務的にも多大な負担をもたらすことから、消費税の5%への緊急減税とインボイスの中止を求め続けてきました。

今定例会でわが党、森とおる議員が、物価高騰が区民に及ぼしている影響と区民の置かれている状態について高際新区長の認識を質すとともに、高際区長には区民から大きな期待が寄せられていることから、国に対して消費税率の引き下げとインボイスの中止を求めるよう一般質問を行いました。

これに対し高際区長は「生活必需品の高騰は区民の日常生活に直接影響する」「また事業者の経済活動においても(中略)厳しい状況にある」という認識を示しながらも、消費税率の引き下げとインボイス中止については「国に対して求める考えはない」と冷たく背を向けたのです。

請願者の意見陳述でも述べられた通り、インボイスは制度設計上もスケジュール上も破綻しています。豊島区がやるべきことは、インボイスが導入されれば豊島区の地域経済が大混乱することを国に進言することであり、決して「国が決めた制度だから仕方ない」「問題は周知、啓発が足りない」と矮小化しないでほしい。商人のまちであり、SDGs、持続可能な経済社会をつくる先頭に立つ豊島区こそ、中小企業、区民の立場に立った判断をしてほしいというのが、区民の切実な願いです。

私が意見陳述者に「インボイスが実施されたら豊島区の地方経済はどうなると思いますか?」と質問したのに対し、「長引くコロナ禍の下で何とか頑張ってきた中小企業・小規模事業者にインボイスがとどめとなって混乱し、立ち行かなくなる」と答えられたのは衝撃的でした。

それでは改めてインボイスの問題点を3点、述べます。

その第一は、インボイスの実施は売上1,000万円以下の事業者にとっては死活問題となるからです。インボイスの導入によって売上1,000万円以下の事業者はこのまま免税業者でいるか、インボイス発行事業者として登録し課税業者となるかの二つの選択を迫られます。

免税業者で居続ければ、取引先から消費税分の負担を求められるか、または免税業者であることから取引を打ち切られるかというリスクを背負うことになります。課税業者になれば、いままで免除されていた消費税が重くのしかかります。これは新たな増税です。さらに事務負担も増えることになり、区内では「インボイス制度が始まる前に廃業する」と、飲食店を閉めた事例もあったと意見陳述で述べられました。

また豊島区が掲げている「国際アート・カルチャー都市」を支える、マンガ・アニメ関連、声優、文化芸能関係者など、その多くがフリーランスで働く人たちにとっても同様です。

先月6月22日、日本外国特派員協会でアニメーターや声優などアニメ関係者らが会見しインボイスが導入されれば、どのエンタメ業界でも2~3割が廃業を検討しており、その多くが若手であること、「文化のすそ野を削るな」と、導入中止を訴えています。

第二は区民生活にも大きな影響を及ぼすことが懸念されるからです。事業者が課税分を価格に転嫁せざるを得なくなり、価格の上昇を招きます。それでなくても物価高騰が続く中、さらなる物価高騰を招き、インボイスの導入で区民生活がさらに深刻な状況になるのは明白だからです。

第三は、免税業者のインボイス登録が進まないのは、インボイスへの理解や周知が不足しているからではなく、消費税およびインボイス制度自体の構造的な問題だからです。

6/27付、日経新聞で「インボイス登録は課税業者の8割に対して、免税業者は約500万の事業者の1割のみ、混乱招かぬ対策重要」と報道がありました。

そもそも消費税は所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性の高い税制です。能力に応じて税を払う租税原理からも外れています。法人税や所得税と異なり、赤字の事業者でも消費税を払わなければならず、応能負担の原則から外れており、そのため滞納が一番多い税となっています。消費税が中小企業・小規模事業者の経営を圧迫していることは明らかです。

先にも述べた通り、インボイス制度はこれまで免税業者だった方に新たな納税、つまり増税と事務負担を増やすというもので、国が新たな特例措置、「2割特例」を講じても6年間の期間限定であり、根本的な問題は何ら解決していません。

そして委員会審査で採択を主張したのは、日本共産党と立憲・れいわでした。

自民党は「税の公平性から過去二回のインボイスの陳情、請願と態度は変わらない」「8%で仕入れた事業者が10%の消費税を請求したという話も聞く。そういった面から減税でなく脱税」「この制度をとり入れて公平性を担保していくのがわが会派の総意」と不採択を主張。

公明党は「切実な意見陳述」としながらも「消費税10%の引き上げなって8%の軽減税率が導入された。当初は分かりにくいと声があったが今では国民に理解をいただいている」「税の公平性を担保する上で必要」「中止や延期でなく円滑導入に向けて対策強化の提言をする方がいい」として不採択。

都民ファーストの会・国民は「新しい制度は小規模事業者に効果的な政策」「今延期をすると準備をしている事業者の信頼を裏切ることになるので慎重に検討を」と継続を主張するも、継続が否決されると「社会全体がインボイス導入に向け動き始めている。ここで延期は大変な混乱を招く」「制度の実施はやむおえない」と不採択を主張しました。

私は「23区では杉並区議会がインボイスの実施延期を求める意見書を賛成多数で可決、渋谷区議会で延期を含めた慎重な検討を求める意見書を全会一致で可決している」「豊島区は商人のまちと言われている。これまでも地域に根差し、豊島区のために、コロナ禍のなかでも、頑張りぬいてこられた事業者の皆さんの願いを議員として、区議会としてしっかりと受け止め、国に意見を上げていきたい。新しい区議会でぜひ全会一致で採択を」と呼びかけましたが、改めて応える会派はなく、採決の結果、本請願は不採択となりました。

なお最後に一言申し上げます。よく、「免税事業者は、お客から受け取った消費税を自分の懐に入れてしまう」「ピンハネしている」などの主張がされますが、これは間違いです。
実際に裁判も行われ、1990年、東京地裁と大阪地裁で「消費税分は、あくまで商品やサービスの提供に対する対価の一部にすぎない」「預り金」ではないと言う判決が確定しています。
こう主張したのは、ほかでもない国であり、また国会でも「消費税は預り金ではない」ことが明らかになっています。つまり脱税などでは絶対にないということです。

よって5請願第2号 適格請求書等保存方式(インボイス制度)の実施延期を国に要望することを求める請願をただちに採択することを求めて、討論を終わります。ご清聴ありがとうございました。

関連タグ:なし